仮登記がなされている不動産を取得するときの注意点

仮登記がなされている不動産を取得するときの注意点

仮登記がなされている不動産を取得するときの注意点

このページでは、仮登記がなされている不動産を取得する場合の注意点を、司法書士が解説いたします。

 

仮登記の効力
仮登記には登記が本来有する対抗力(不動産に関する権利変動を第三者に主張できる力)は有しませんが、将来本登記をしたとき、仮登記の順位で登記がなされたことになります。

 

この仮登記の効力を順位保全効力と呼んだりします。(不動産に関する権利変動の優劣は登記の順位で決定されます。仮登記により先順位を確保しておくために行われる登記といえます。)

 

仮登記には2種類あります
仮登記には1号仮登記と2号仮登記があります。
1号仮登記は不動産登記法105条1項に2号仮登記は同条2項に規定されていることからこのように呼ばれています。

 

1号仮登記
実体上権利変動が生じているが、登記手続きに必要な書類を提供できない場合に行う仮の登記

 

【甲不動産】

順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
2番 所有権移転

平成○年○月○日
第○号

原因 平成○年○月○日売買
所有者 A

3番 所有権移転仮登記

平成○年○月○日
第○号

原因 平成○年○月○日売買
権利者 B

余白 余白 余白

上記登記記録例の3番で登記された仮登記は1号仮登記です。

 

実体上、甲不動産の所有権はAからBへ移転しており、本来であれば本登記が可能ですが、何らかの理由で仮登記にとどめています。

 

2番所有権登記名義人Aからの取得の注意点

法律上、Aからの甲不動産を取得し、所有権移転登記をすることは可能です。
この登記は、4番で所有権移転登記がなされます。(いわゆるAからの二重譲渡になります。)

 

ただし、3番仮登記の本登記がなされると、4番でなされた所有権移転登記は抹消されてしまいます。
(登記手続き上は、3番仮登記を本登記にするには4番登記名義人の承諾書が必要)

 

上記登記記録例のように登記されている不動産をAから取得しても、将来仮登記の本登記がなされると結局所有権を失ってしまうことになるので、3番仮登記を抹消した上でなければ事実上、Aから取得することはできません。

 

3番所有権仮登記名義人Bからの取得の注意点

実体上、Bは所有権者であるので、甲不動産を有効にBから取得することができます。

 

登記手続き
まずは、3番仮登記を本登記にする必要があります。
3番仮登記を本登記にしたのち、甲不動産の取得者名義の所有権移転登記を申請します。

 

3番仮登記のまま所有権移転登記はできるか
本登記に移行せず仮登記のまま甲不動産の取得者へ所有権移転登記する場合、取得者名義の所有権移転登記(本登記)はすることができず、所有権移転仮登記しかできません。
この登記は、4番で所有権移転仮登記がなされます。

 

AからBへの仮登記の本登記が確実にできるのであれば、上記登記記録例のように登記されている不動産を仮登記名義人Bから取得することができます。

 

2号仮登記
将来権利変動を生じさせる請求権が発生している場合、不動産の権利変動が条件又は始期に係っている場合、登記の優先順位を確保するために行う仮の登記

 

【乙不動産】

順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
2番 所有権移転

平成○年○月○日
第○号

原因 平成○年○月○日売買
所有者 A

3番 所有権移転請求権仮登記

平成○年○月○日
第○号

原因 平成○年○月○日売買予約
権利者 B

余白 余白 余白

上記3番で登記された仮登記は、2号仮登記です。

 

乙不動産についてAB間で売買予約がなされています。

 

売買予約の段階では所有権はAからBへ移転していないので、AからBへの所有権移転登記はできません。
ただし、Bは予約完結権を行使することにより売買契約を成立させ、AからBへ乙不動産の所有権を移転するように求めることできる請求権を有しています。

 

将来、この請求権を行使して権利変動が生じた場合に備えて、仮登記により登記の優先順位を保全しています。
(仮にAが別の者に所有権移転登記を備えさせても、Bは仮登記を本登記にすることによりその者よりも先順位で登記したことになり、その者より優先することになります。)

 

2番所有権登記名義人Aからの取得の注意点

Aは乙不動産の所有者であり、(Bは予約権者であり、Aに対して債権(予約完結権)を有しているにすぎない)Aから甲不動産を取得し、所有権移転登記をすることは可能です。
登記は、4番で所有権移転登記がなされます。

 

ただし、BがAに対して予約完結権を行使し乙不動産の所有権がBへ移転し、3番仮登記の本登記がなされると、4番でなされた所有権移転登記は抹消されてしまいます。
(登記手続き上は、3番仮登記を本登記にするには4番登記名義人の承諾書が必要)

 

上記登記記録例のように登記されている乙不動産をAから取得しても、将来3番仮登記の本登記がなされると結局所有権を失ってしまうことになるので、3番仮登記を抹消した上でなければ事実上、Aから乙不動産を取得することはできません

 

3番所有権仮登記名義人Bからの取得の注意点

@Bが予約完結権を行使した場合
BがAに対して予約完結権を行使したことにより 売買契約が成立し所有権がAからBへ移転しているのであれば、Bから乙不動産を取得することができます。
この場合、3番仮登記の本登記を経由した後、取得者名義の所有権移転登記を申請します。

 

ABが予約完結権を行使していない場合
この場合、Bは予約権者にすぎないので、Bから乙不動産を取得することができません。
ただし、予約完結権も売買の対象になるので、Bから予約完結権を取得することはできます。
予約完結権を取得した者は、Aに対して予約完結権を行使し、乙不動産を取得することができます。

 

予約完結権を売買したときの登記は、3番所有権移転請求権の移転の登記を申請します。
この登記は3番仮登記に付記する形で登記(仮登記でなく本登記)されます。

 

【予約完結権を売買したときの登記】

順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
2番 所有権移転

平成○年○月○日
第○号

原因 平成○年○月○日売買
所有者 A

3番

 

 

 

 

付記1号

所有権移転請求権仮登記

平成○年○月○日
第○号

原因 平成○年○月○日売買予約
権利者 B

余白 余白 余白
3番所有権移転請求権の移転

平成○年○月○日
第○号

原因 平成○年○月○日売買
権利者 C

BがAに対して有する予約完結権をCに譲渡したときの登記記録です。

 

 

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