代位による登記名義人住所変更登記がなされている不動産登記簿を読む
甲区
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1
付記1号 |
所有権保存 |
平成○年○月○日 |
原因 平成10年10月1日売買 |
1番登記名義人表示変更 |
平成○年○月○日 |
原因 平成20年3月25日住所移転 |
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2 | 所有権移転 |
平成○年○月○日 |
原因 平成21年4月3日財産分与 |
登記簿を読み解く
離婚の際に、夫甲野太郎名義になっている本件不動産を財産分与として妻乙野花子が取得することになったので、夫名義から妻名義への財産分与を原因とする所有権移転登記がなされています。
また、所有権移転登記をおこなう前提として、夫甲野太郎が住所移転をおこなったので、登記簿上の住所を現在の住所に一致させるために登記名義人表示変更登記がなされています。
財産分与とは、夫婦が婚姻中に取得した財産をその名義に関わらず、実質的に夫婦の共有財産とみなし、離婚時に清算分配することをいいます。
夫婦が婚姻中に取得した財産でも親からの贈与であったり、相続であったりした場合はそれは夫又は妻の特有財産とされ、財産分与の対象財産にはなりません。
財産分与は離婚が成立する以前でも協議し、成立させることができますが、財産分与は離婚成立の効果として生じるものなので、離婚成立前に財産分与について合意した場合は、その登記原因の日付は合意した日ではなく離婚成立日になります。
甲区1番付記1号の登記について
この登記は、登記名義人表示変更登記といって、所有権の登記(甲区1番)後に登記名義人の氏名・住所が変わったときに、登記簿上の氏名・住所を現在の氏名・住所に一致させる登記です。
登記名義人の登記簿上の住所と現住所が一致していないと所有権移転登記をすることができないので、所有権移転登記をする場合、あらかじめもしくは所有権移転登記と連件で登記名義人表示変更登記を申請します。
甲野太郎が平成20年3月25日に名古屋市中村区○町1番2号から名古屋市東区○町二丁目10番地に住所を移転していることがわかります。
正式に離婚する前に夫婦が別居するケースは多いので、財産分与を原因とする所有権移転登記をおこなう前提として登記名義人の住所変更登記がなされることが多く見られます。
本登記で特殊なのは、代位により登記名義人表示変更登記がなされていることです。
通常、登記名義人表示変更登記は登記名義人が単独で申請しますが、本件では登記名義人である甲野太郎ではなく乙野花子が代位者として登記名義人表示変更登記を申請していることがわかります。
乙野花子は甲野太郎に対して財産分与による所有権移転登記の申請手続を行うように請求することができます。この登記請求権を保全するために乙野花子は本来甲野太郎が申請すべき登記名義人住所変更登記を甲野太郎に代って申請することができます。これを代位による登記と呼んでいます。