自己株式を消却しないメリット
自己株式を消却しないメリットについて解説します。
自己株式を消却する手続
会社は株主から取得した自社株式(自己株式)を消却することができます。
自己株式の消却とは、特定の株式を消滅させる会社の行為と解されています。
自己株式を消却するためには、取締役会の決議で消却する株式の種類及び数を決議します。
取締役会を設置していない会社は取締役の過半数で決定することができます。(なお、株主総会の決議が必要であるという見解もあります。)
旧商法では、消却により発行済株式総数が減少した場合、発行可能株式総数も同じ数だけ当然に減少するとされていましたが、会社法の下では、自己株式を消却しても当然には発行可能株式総数は減少しないとされています。
自己株式の消却の効力が生じるのは、株券の廃棄、株主名簿の記載の抹消等の失効手続が終了したときとされています。
自己株式を消却した場合の会計処理は、消却した自己株式の帳簿価額の分だけ、その他資本剰余金を減少させます。
自己株式を消却しないメリットとは
会社が自己株式を取得した場合、消却することなく保有し続けることもできます。
自己株式を消却すると、登記事項である発行済株式総数が減少するので、変更登記が必要なります。
自己株式を消却すると登記コストが発生します。
自己株式消却による発行済株式総数の変更登記の登録免許税は、3万円です。
また、自己株式を保有していれば募集株式の発行等の際、自己株式を交付することもできます。
新株を発行せずに自己株式のみを交付した場合、資本金の額及び発行済株式数は増加しないので、登記の必要がありません。
新株発行による増資の場合、払い込まれた金額の2分の1以上を資本金として計上しなければならず、発行済株式数も増加するので、変更登記の申請が必要になります。
新株発行による変更登記の登録免許税は、増加した資本金の額に1000分の7を乗じた額(この額が3万円に満たない場合は3万円)です。
(自己株式の交付のみにより募集株式の発行等を行えば、登記コストが発生しない。)
上場企業の場合、株式の消却は株価上昇の要因になるといわれていますが、非公開会社の場合は、消却のメリットよりも保有し続けるメリットのが大きいのではないでしょうか。
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ブログ執筆者
○司法書士 八木 隆
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