相続開始日により法定相続分が異なることはあるの?

相続開始日により法定相続分が異なることはあるの?

相続開始日(被相続人の死亡日)により法定相続分が異なることはあるの?

相談事例
この度、相続開始当時には発見されなかった、亡父Xが所有していた不動産(甲土地)が存在することがわかりました。相続人は先妻の子である私Aと弟B(いずれも被相続人の嫡出子)及び後妻Cです。

 

父(被相続人X)が死亡したのは昭和53年8月10日です。
後妻Dは平成18年12月3日に死亡しました。
後妻Dの相続人は前夫との間に生まれた子Cのみです。

 

亡父Xの遺産を分割した際、作成した遺産分割協議書を確認したところ、分割協議後に発見された遺産についてどうするのかに関する条項はありませんでした。

 

そこで、当該不動産を未分割のまま売却して、その売却代金を法定相続分の割合により相続人で分配しようと考えています。

 

不動産を売却する前提として共同相続登記を行う必要があるそうですが、相続登記を申請するにあたり何か注意すべき点はありますか?

 

回答
@適用される相続法令は相続開始時(被相続人死亡時)に効力を有していた相続法令が適用されること
A法定相続分による相続登記をおこなうには2件の申請が必要であること

 

@の解説
相続人の範囲及び相続分の割合は相続開始の時期によっては異なることがあります。
それは相続は、相続開始時の効力を有していた法律が適用されるからです。

 

戦後、相続法(民法)は何度かの改正がなされていますが、特に大きな改正が昭和55年5月17日法律第51号による改正です。

 

昭和55年改正以前は共同相続人が配偶者及び子であった場合、法定相続分は配偶者3分の1、子3分の2であったものを、昭和55年改正法により配偶者2分の1、子2分の1に配偶者の法定相続分の割合が引き上げられました。

 

昭和55年改正法は昭和56年1月1日から施行されています。

 

つまり、昭和55年12月31日以前に開始した相続については、旧法(昭和37年3月29日法律40号・同年7月1日施行)が適用されるということです。

 

相談事例では、被相続人が昭和53年8月10日に死亡していますので、被相続人Xに係る相続に適用される法律は旧相続法(昭和37年改正法)になります。

 

旧相続法によると、共同相続人が子であるA、B及び配偶者である後妻Cの場合、法定相続分の割合は、子であるA及びBは全体で3分の2(各3分の1)、配偶者Cは3分の1になります。

 

法定相続分の詳細についてはこちらをご覧ください。
法定相続分

 

Aの解説
相談事例では、遺産の一部が未分割の間に、相続人Cに相続が開始しているケースです。(いわゆる数次相続)
Cの唯一の相続人Dは遺産分割未了の不動産の法定相続分(甲土地のC持分3分の1)を具体的な相続財産として相続することができます。

 

相談事例では、未分割のまま売却して売買代金を分配する換価分割を行いたいことですので、法定相続分の割合に応じて相続登記を行います。

 

1件目は、昭和53年8月10日相続を原因とする所有権移転登記を申請します。
各自の相続分は旧法が適用されるのでABC各自3分の1の相続分で登記します。

 

申請時にはCは既に死亡しているので、死者名義の登記が可能かどうか疑義のあるところですが、登記実務では、死者名義による相続登記の申請を認めています。

 

2件目は、亡C名義の持分3分の1をその相続人D名義にするために、平成18年12月3日相続を原因とするC持分全部移転登記を申請します。

 

1件の申請で直接ABD名義の相続登記は可能か?
登記先例では、相続開始後に更に相続人に相続が開始した場合の相続登記について、中間の相続が単独相続の場合に限って直接現在の所有者(又は共有者)名義の相続登記を認めています。

 

ここでいう中間の相続が単独相続とは、もともと相続人が1人である場合だけでなく、遺産分割の結果、共同相続人の1人が単独で相続した場合も含まれます。

 

相談事例では、中間の相続が単独相続ではなくABCの共同相続ですので、1件の申請で直接ABD名義の相続登記を申請することはできません。

 

仮に、ABD間による遺産分割協議によりDが単独で相続することに決した場合は、1件の申請でD名義の相続登記をすることができます。

 

これは、ABD間で、亡Cが甲土地を単独で相続する旨の遺産分割を成立させ、亡Cが相続した甲土地をDが相続により取得したものと考えることができるからです。

 

ブログ執筆者

○司法書士 八木 隆
○名古屋市瑞穂区白砂町二丁目9番地 瑞穂ハイツ403
○TEL 052-848-8033

 

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