配偶者への居住用不動産の贈与
配偶者への居住用不動産の贈与契約
配偶者への贈与(夫婦間贈与契約)
一般の贈与契約と同様に、配偶者の一方が自己の財産を無償で他方配偶者に与える意思を表示し、他方配偶者が受諾することによって効力を生じる諾成契約です。
夫婦間の契約取消権
夫婦間でおこなった贈与契約は、婚姻中はいつでも、その理由の如何を問わず、夫婦の一方からこれを取り消すことができます。
夫婦でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。(民法754条)
なお、裁判例では、本条の婚姻中を狭く解釈しており、「婚姻中とは、単に形式的に婚姻が継続しているだけではなく、実質的にもそれが継続していることをいうものと解すべきである。(最判昭42年2月2日)」とされており、婚姻関係が実質的に破綻している場合には、本条の婚姻中にはあたらず、夫婦間の(贈与)契約であっても夫婦の一方からこれを取り消すことができないとされています。
民法754条但書き
第三者の権利を害する場合は、夫婦間契約の取消権を行使することができません。
例えば、受贈者が贈与された不動産を第三者に譲渡した場合や、第三者のために抵当権を設定した場合などは、夫婦間契約の取消権を行使することができません。
配偶者に対する居住用不動産贈与の税務
居住用不動産の贈与を受けた配偶者に贈与税・不動産取得税が課税されます。
居住用不動産の贈与を受けた配偶者は、翌年から固定資産税が課税されます。
(当該不動産が都市計画区内にある場合は、都市計画税も課税されます。)
登記名義を変更する場合に登録免許税が課税されます。
贈与税
贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上経過している夫婦間で居住用不動産の贈与があった場合の贈与税については、基礎控除110万円の他に2000万円の配偶者控除を受けることができる制度があります。
これにより最大2110万円の控除を受けることができます。
配偶者控除の要件
@夫婦の婚姻期間が20年以上である夫婦間で行われた贈与であること。
A贈与された財産が居住用不動産であるか又は、居住用不動産を取得するための金銭であること。
B贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与を受けた居住用不動産(または贈与された金銭で取得した居住用不動産)に贈与を受けた者が居住し、且つその後も引き続き居住する見込みであること
居住用不動産とは
贈与を受けた配偶者が専ら居住の用に供する土地又は土地の上に存する権利(借地権等)もしくは建物で、国内にあるものをいいます
店舗兼住宅の場合
居住用部分とその他の部分がある場合でも、居住用部分についてのみ配偶者控除が適用されます。
居住用の土地のみを贈与した場合
土地のみの贈与であっても、その土地の上に存する家屋の所有者が贈与を受けた者の配偶者または同居の親族である場合には、配偶者控除が適用されます。
贈与税の申告
配偶者控除の適用を受けるためには、以下の書類を添付して、その適用を受ける旨の贈与税の確定申告を行う必要があります。
添付書類
・贈与を受けた日から10日経過した日以後に作成された戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)または戸籍抄本
・贈与を受けた日から10日経過した日以後に作成された戸籍の附票
・贈与された居住用不動産の登記事項証明書
・贈与された居住用不動産に居住した日以後に作成された住民票の写し
相続税の課税価格への算入
相続開始前3年以内になされた贈与の価格は相続税の課税価格に算入されるのを原則としますが、配偶者控除が適用された居住用不動産の贈与については、相続開始前3年以内になされた贈与であっても相続税の課税価格に算入されません。
不動産取得税
配偶者が居住用不動産の贈与を受けたときは、不動産取得税が課税されます。
なお、配偶者が居住用不動産を相続又は遺贈により取得した場合には、不動産取得税は課税されません。
登録免許税
居住用不動産の登記名義を夫(又は妻)から妻(又は夫)名義に変更する場合、登録免許税が課税されます。
贈与による所有権移転登記(名義変更)の登録免許税の額は、贈与された不動産の固定資産税評価額に1000分の20を乗じて得た額となります。
夫婦間契約の取消権を行使した場合の課税関係
贈与税の申告納付前
贈与税の申告期限前に夫婦間契約の取消権に基づき贈与契約を取り消した場合、当該贈与に係る財産の名義を贈与者の名義に変更したことその他により課税庁に確認された場合に限り、その贈与はなかったものとして取り扱われます。
(昭和39年5月23日直審(資)22・直資68)
課税庁に確認された場合とは
取消権を行使した者およびその配偶者の経済力その他の状況からみて取消権の行使が贈与税の回避のみを目的として行われたとは認められないこと
(昭和39年7月4日直審(資)34・直資103)
上記の要件を満たせば、受贈者に対しても、贈与者に対しても贈与税は課税されないことになります。
贈与税の申告納付後
贈与税の申告納付後に夫婦間契約の取消権に基づいて贈与契約を取り消した場合に、納付した贈与税の還付を受けるためには、更正の請求手続を行う必要があります。
更正の請求事由
解除権の行使によって解除され、若しくは当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され、又は取り消されたこと
なお、課税実務上、贈与税の申告納付後に贈与の取り消しが認められ、贈与税の還付請求を受けることは容易ではないとされています。
配偶者に対する居住用不動産贈与の登記
配偶者に対して居住用不動産を贈与した場合の登記手続については、一般の贈与による所有権移転登記と何ら異なるところはありません。
贈与者と受贈者が、当該贈与に係る不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に共同して登記申請を行います。
登記は、以下の添付書類とともに登記申請書を管轄法務局の窓口に持参するもしくは郵送する方法(書面申請)により行います。
また、電子証明を行うことができる環境にあれば、オンラインで申請することも可能です。
添付書類
・登記原因証明情報(不動産贈与契約書等)
・贈与者の登記識別情報通知書(その写しも可)または登記済権利証
・贈与者の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内以内のものに限る。)
・受贈者の住民票の写し
・固定資産税評価証明書又は固定資産税評価通知書(申請年度のものに限る。)
・委任状(代理人により申請する場合に必要)
居住用不動産の評価額が控除額(2110万円)を超える場合
贈与税を課税されないためには所有権の一部(持分)贈与をおこないます。
夫が所有する居住用家屋(評価額1000万円)およびその敷地(評価額4000万円)を妻に贈与
本事例では100分の42の持分贈与をおこなえば控除額(2110万円)の範囲内におさまりますので贈与税は課税されません。
5000万円×100分の42<2110万円
所有権一部移転登記の登記申請書
登記申請書
登記の目的 所有権一部移転
原 因 平成○年○月○日贈与
権 利 者 住所省略
持分100分の42 A
義 務 者 住所省略
B
(以下省略)
持分贈与による登記の登録免許税
固定資産課税台帳に登録された不動産の価額×贈与する持分の割合×1000分の20
固定資産税評価額5000万円の不動産の100分の42の持分を贈与する場合
5000万円×100分の42×1000分の20=42万円
不動産贈与の登記手続のご依頼・ご相談
司法書士八木隆事務所は愛知県名古屋市で登記業務を中心に行っている司法書士事務所です。
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贈与登記の費用(司法書士報酬及び登録免許税等)
司法書士への報酬(税別) | 登録免許税 | 備考 | |
贈与による名義変更の手続 |
35,000円 | 贈与不動産の固定資産税評価額の2% | |
住所変更登記 | 8,000円 | 贈与不動産の個数×1000円 | 贈与者の登記簿上の住所と現住所が異なるときに必要な手続です。 |
不動産の所有権を移転する登記(名義変更)の登録免許税は、固定資産税評価額を基に算出します。
登録免許税を含めた見積もりのご依頼は、対象不動産の固定資産税評価額が分かる資料をご用意ください。
固定資産税評価証明書(市町村役場で取得できます。)又は固定資産の課税明細書(市町村から4月頃に送られてきます。)等により、固定資産税評価額が分かります。
お見積りのご依頼はお電話又はメールでお願いします。