養子縁組と相続
CONTENTS
養子縁組の要件と効果
養子縁組の要件
代諾縁組
養子縁組の効果
相続人の中に養子がいる場合の取扱
二重資格の相続人の地位
相続税の節税を目的とする養子縁組の有効性
養子縁組の要件と効果
養子縁組の要件
@当事者の養子縁組の合意および役所への養子縁組届の提出
養子縁組の届出
届出期間 | 期限なし(養子縁組は届出により効力を生じます) |
届出をする人 | 養親及び養子(養子が15歳未満の場合は代諾権者[法定代理人]) |
必要な書類 |
・養親及び養子の印鑑(養子が15歳未満の場合は代諾権者の印鑑) |
届出の場所 | 養親もしくは養子の本籍地または所在地の市役所(区役所) |
A養親となる者は成年者でなければなりません。
※未成年者でも婚姻すれば成年者とみなされますので、婚姻している未成年者は養親になることができます。
B配偶者がある者が未成年者を養子とするときは、その配偶者とともに養子縁組をしなければなりません。
ただし、配偶者の嫡出子を養子とするとき、配偶者がその意思を表示することができないときは、単独で未成年者と養子縁組することができます。
C未成年者を養子とする場合は、その者が自己又は配偶者の直系卑属である場合の除き、家庭裁判所の許可が必要となります。
家庭裁判所の許可が必要な場合
内縁関係にある者の未成年者である子、甥・姪などを養子とするとき
家庭裁判所の許可が不要な場合
後妻の未成年者である子(連れ子)、未成年者である孫などを養子にするとき
D配偶者のある者が養子縁組をする時はその配偶者の同意を得ることが必要となります。
ただし、配偶者とともに養子縁組をする時、又は配偶者がその意思を表示できないときは、配偶者の同意がなくても養子縁組をすることができます。
E成年後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可が必要となります。
代諾縁組
15歳未満の者を養子とする養子縁組は、その者の法定代理人がこれに代わって、養子縁組の承諾をします。
法定代理人のほかに、養子となるべき者の監護をしている者(親権を有しないが同居し、養育をしている者)がいるときは、その者の同意が必要となります。
養子縁組の効果
・養子は養子縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得します。
養親が死亡し、相続が開始した場合、養子は当該相続に関して相続人となります。
また、実親との親族関係は養子縁組後も変わりませんので、実親が死亡した場合、実親を相続することもできます。(ただし特別養子縁組により養子となった場合は実親を相続することはできません。)
・養子は、養親の血族との間でも、血族と同一の親族関係が発生します。
・養子は婚姻によって氏を改めた者である場合を除き、養親の氏を称することになります。
相続人の中に養子がいる場合の取扱
相続税の計算において、法定相続人の数が考慮される項目があります。
@相続税の基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)
A生命保険金の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)
B死亡退職金の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)
C相続税の総額の計算
つまり、法定相続人が多ければ多いほど、相続税の負担額が減少することになります。
かつて、相続開始の直前に、相続税の節税目的で多くのものと養子縁組を締結する事例が散見されたことから、現在では、養子のうち相続税法上の法定相続人の数にカウントできる数を制限されています。
相続税法上法定相続人にカウントされる養子の数
被相続人に実子がいない場合 2名まで
被相続人に実子がいる場合 1名まで
ただし、以下の養子は相続税法上の実子と同様に扱われます。
@特別養子縁組により、被相続人の養子となった者
A被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者
B被相続人とその配偶者の婚姻前に、その配偶者の特別養子縁組により養子となった者で、婚姻後に被相続人の養子となった者
C被相続人の養子となった者で、代襲相続人の地位を兼ねる者
二重資格の相続人の地位
孫養子の場合
代襲相続人の地位を有する孫が被相続人の養子になっていると、被相続人が死亡すると、養子(子)としての地位と代襲相続人としての地位の二重の資格により相続することになります。
代襲相続人の地位を兼ねる孫養子
@相続税法上の法定相続人の数の計算においては、実子と同様に扱われます。
A相続税の2割加算の対象とはなりません。
相続税の2割加算
配偶者および一親等の血族以外のものが相続・遺贈により相続財産を取得した場合の相続税は通常の相続税額の2割を加算して課税するとされています。
配偶者兼兄弟姉妹の相続人の場合
被相続人Aが配偶者Bの直系卑属(親)と養子縁組していた場合にBは配偶者相続人および血族(兄弟姉妹)相続人の二重の資格で相続できるかが問題となりますが、実務では配偶者の地位のみで相続すると取扱われています。
相続税の節税を目的とする養子縁組の有効性
相続税の節税のみを目的とする養子縁組が養親子間において実質的な親子関係を形成しようとする縁組意思の存在が認められるかどうかが問題となります。
他の相続人の相続分を排することを目的としてなされた養子縁組の有効性に関して争いとなった事案で、最高裁は「他の相続人の相続分を排することを主たる目的としてなされた養子縁組であつても、親子としての精神的つながりをつくる意思が認められるかぎり無効ではない。」と判示しました。(最高裁昭和38・12・20判決)
下級審で「相続税軽減を目的としたからといってその養子縁組が無効となるものではない」とした判決はありましたが、相続税の節税を目的とする養子縁組の有効性に関して、平成29年に最高裁判所が判断を示しました。
「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」(最高裁平成29131判決)
多少なりとも養親子間に親子としての精神的なつながりが認められるならば、主たる目的が相続税の節税であったとしても、養子縁組は有効に成立すると考えられます。
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written by名古屋の司法書士八木隆事務所