株主の整理(株主名簿の作成と名義株の解消)

株主を正確に把握することは事業承継等を行う大前提になります。

 

また、いわゆる名義株の存在は、事業承継や相続時において名義株に潜在するリスクが顕在化することがあり、名義株を解消しておくことも事業承継等を円滑に行うために必要になります。

 

株主名簿の整備

株式会社はその規模の大小に関係なく、株主名簿を作成し備え置く義務があります。

 

株主名簿記載事項
株主名簿には次の事項を記載又は記録しなければなりません。

@株主の氏名又は名称及び住所
A株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
B株式を取得した日
C株券の番号(株券発行会社である場合)

 

株式への質権設定
株式の質権設定者から請求があったときは、次の事項を株主名簿に記載又は記録しなければなりません。

@質権者の氏名又は名称及び住所
A質権の目的である株式

 

株式の信託
株券不発行会社の株式を信託したときは、当該株式が信託財産に属する旨を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、当該株式が信託財産に属することを株式会社その他の第三者に対抗することができません。

 

株主は、当該株式が信託財産に属する旨を株主名簿に記載又は記録することを株式会社に請求することができます。

 

名義株とは

他人名義を借用することにより引受け及び払込みのなされた株式で、実際の出資者と株式名義人が異なる株式のことを言います。

 

現在では、発起人一人で株式会社を設立することが可能ですが、株式会社を設立するには発起人が7人以上必要とされた時代がありました。

 

この時代に設立された中小零細の株式会社は、発起人の頭数をそろえるために親族や従業員などの名義を借りて設立された会社が多く名義株を抱えているといわれています。

 

この他人名義の株式、名義株の存在は、事業承継や相続時において様々な問題を引き起こします。

 

真の株主は名義人か、それとも出資者か?

これに関しては、最高裁の判例で確定されています。
他人の承諾を得てその名義を用いて株式の引受がされた場合においては、名義貸与者ではなく、実質上の引受人が株主となるものと解すべきである。(最判昭和42年11月17日)

 

つまり、真の株主は、出資した人であり、単に名義を貸したにすぎない人は、株主ではありません。
しかしながら、当該株式が名義株であることを立証するの容易ではありません。

 

名義株主が名義株であることを認めてくれなければ、名義株を解消するために当該名義株主から当該株式を買い取ること等を検討しなければならないでしょう。

 

名義株式の解消方法

売買による株式譲渡

名義株主から真の株主から当該名義株を買い取る方法により名義株を解消します。
名義株が譲渡制限株式である場合、株式の譲渡につき取締役会の承認が必要になります。

 

売買による株式譲渡の注意点は、株式の適正価格を算定する必要があること、株式の売主に譲渡所得課税がなされるリスクがあることです。

 

当然のことですが、買主に買取り資金が必要になり、買取り資金を調達できなければ実現できない方法です。

 

会社と名義株主の合意による自己株式の取得

特定の株主から会社が自己株式を有償で取得するには、株主総会の決議が必要になります。

株主総会の決定事項
@取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
A株式を取得するのと引き換えに交付する金銭等の内容及びその総額
B株式を取得できる期間
C自己株式の取得を特定の株主に対して行う旨

他の株主の売主追加請求
他の株主は、自己株式の取得の対象に自己も加えるように会社に請求することができます。
つまり、他の株主が自分の自己株式も買い取ってもらいたい旨の請求があれば、これも含めた会社は自己株式を買取りしなければなりません。

 

相続人等からの取得の特例
相続その他一般承継により取得した株式を相続人等から買い取る場合には、他の株主の売主追加請求権は認められません。ただし、公開会社の場合、又は当該相続人等が株主総会において議決権を行使した場合は、原則通り、他の株主に対しても会社に自己株式を売り渡す機会を与える必要があります。

 

取締役会の取得決定
会社が株主総会の決定に従い株式を取得するときは、その都度次の事項を取締役会で決定しなければなりません。
取締役会を置かない会社は、取締役の過半数で決定します。

@取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び数)
A株式1株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
B株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額
C株式の譲渡しの申込みの期日

 

自己株式の取得には財源規制あり
自己株式の取得は、分配可能額の範囲内で所得しなければならず、分配可能額を超えて自己株式を取得すると違法取得となり取締役の責任となるので、注意を要します。

 

分配可能額の一応の目安は、その他資本剰余金+その他利益剰余金−自己株式の帳簿額です。
(詳細は会社法、会社計算規則に規定されています。)

 

つまり、買取価額が会社の分配可能額を超える場合は、この方法では、名義株を解消することができません。

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