財産分与請求手続

離婚時の財産分与

財産分与は離婚を前提としますので、夫婦で離婚するかどうかを協議する必要があります。

 

夫婦間での話し合いにより離婚及び財産分与の協議が成立した場合には、合意内容を記載した離婚協議書等を作成します。また、協議離婚は市町村役場への届出によりその効力を生じますので、離婚届を提出します。

 

財産分与は当事者の合意のみによりその効力を生じますので、離婚協議書等の書面を作成しなかったとしても成立した財産分与の効力が否定されることはないのですが、その内容を明確にし後日の紛争を予防するためには離婚協議書等の書面を作成すべきでしょう。

 

また、金銭の給付を内容とする場合は、一括払いが望ましいですが、分割払いを定めたときなどは、不履行のリスクがありますので、履行を確保するために離婚協議書を執行認諾条項付公正証書で作成しておくべきでしょう。

 

離婚すること自体については合意できたが、財産分与については合意できない場合
財産分与請求の申し立てを付随する形で離婚調停を申立てるか、協議離婚をした後に財産分与調停(財産の分与に関する処分調停)を申立てます。

 

離婚調停(夫婦関係調整調停)

離婚及び財産分与の協議がまとまらないときは、離婚調停(夫婦関係調整調停)を申立てます。
財産分与は離婚調停の申立てに付随する形で財産分与請求を申立てることができます。

 

相手方に法定の離婚原因がある場合には、離婚訴訟を提起することができますが、離婚訴訟を提起するためにはまずは離婚調停を申立てなければならないとされています。(調停前置主義)

 

離婚調停では、財産分与の他に慰謝料請求、離婚時年金分割、親権者の指定、子の監護に関する処分(監護権者の指定、面会交流、養育費等)などについても離婚調停に付随して申立てることができます。

 

離婚調停の管轄
離婚調停は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てをします。

 

電話・テレビ会議システム
当事者が遠方に住んでいて調停を行う家庭裁判所まで出向くことが困難であるなど、家庭裁判所が相当と認めるときは、当事者の意見を聴いた上で、テレビ会議システムを利用して、期日における手続を行うことができます。

 

ただし、離婚調停において離婚を成立させる期日には、当事者が管轄の家庭裁判所に出頭しなければならず、テレビ会議システムを利用して調停を成立させることはできません。

 

やむを得ない理由がなければ調停期日には当事者本人が出席しなければならず、離婚事件について弁護士に依頼していたとしても本人も出席しなければなりません。

 

離婚調停の成立
当事者に合意が成立し、それが調停調書に記載されることにより調停が成立します。
裁判官、家事調停委員、当事者双方の立ち会いのもと、裁判官が調停条項を読み上げてその内容を確認します。
その内容に納得できなければ拒否することができます。

 

財産分与に関する調停調書の記載は、確定した審判と同一の効力を有します。
また、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有しますので、執行文の付与を受けることなく強制執行が可能です。

 

財産分与により不動産を不動産を取得した場合で調書に登記義務の履行に関する条項が記載されていれば、分与を受けた者が単独で登記をすることができます。

 

離婚調停の不成立
当事者間で合意にいたらなかった場合や当事者が調停期日に出席しない場合などは調停が不成立になります。
離婚調停が不成立になったとしても当然に離婚訴訟に移行するわけではないので、調停不成立後も離婚を争う場合には、離婚訴訟を提起する必要があります。

 

離婚訴訟のなかで財産分与についても判断をしてもらいたいときは、離婚訴訟の提起時に附帯処分として財産分与を申立てる必要があります。

 

離婚についてのみ調停が成立し、財産分与に関しては合意に至らなかったときは、あらためて財産分与調停又は審判を申立てることができます。

 

離婚訴訟の附帯処分としての財産分与
離婚訴訟において財産分与についても判断を示してもらいたいときは、離婚訴訟の提起時に附帯処分として財産分与の申し立てを行います。

 

離婚訴訟は、原告又は被告が普通裁判籍を有する地等を管轄する家庭裁判所に訴えの提起します。

 

協議離婚や調停離婚の場合、夫婦が離婚の合意をすればその理由は問われません。性格の不一致、何となく離婚したといった理由でも離婚することができるのに対し、離婚訴訟は相手方に法定の離婚原因(民法770条1項)がなければ認められません。

 

離婚原因は民法770条第1項で次のように定められています。
@配偶者に不貞行為があったとき
A配偶者から悪意で遺棄されたとき
B配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
C配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
Dその他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

 

 

離婚成立後の財産分与請求

離婚後の財産分与は、離婚の日から2年以内に請求しなければなりません。

 

この2年の期間は除斥期間と解されており、時効の中断や催告による期間の延長に関する規定は適用されないとされています。

 

当事者による財産分与の協議

財産分与の協議が成立したときは、合意内容を記載した財産分与協議書を作成します。

 

財産分与協議書は公正証書により作成することもできます。

 

公正証書で作成した財産分与協議書に執行認諾条項を設けることにより、相手方が金銭の支払いを怠った場合、この公正証書を債務名義として強制執行することが可能になります。

 

財産分与調停・審判

当事者で協議ができない又は協議が整わない時は、家庭裁判所に調停又は審判を申立てることができます。

 

家事調停とは家族・親族間の争いについて、調停委員会の関与のもと、当事者間の合意による解決を目指す手続であるのに対し、家事審判は、家族・親族間の争いにつき、裁判官が当事者の意思や、主張に拘束されることなく法律にもとづき一定の判断を下す手続です。

 

財産分与は、調停を申立てずにいきなり審判を申立てることも可能です。
ただし、審判の申し立てがあった場合、家庭裁判所は職権により調停に付すことができます。
なるべき家族・親族間の紛争はなるべくなら当事者の合意により解決することが望ましいといった観点から、審判が申立てられた場合であっても、家庭裁判所は職権で調停に付すことが多いといわれています。

 

財産分与調停(財産の分与に関する処分調停)

財産分与調停は相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定めた家庭裁判所に申立てます。
当事者の合意で定めた家庭裁判所に申立てる場合には、合意書を作成する必要があります。

 

調停の申し立てには処分調停申立書(及びその写し)とともに離婚時の夫婦の戸籍謄本、夫婦の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、固定資産税評価証明書、預金通帳の写し等)を提出します。

 

調停の成立
当事者が財産分与について合意にいたり、それを調書に記載することにより調停が成立します。
離婚調停の場合と異なり、財産分与に関する調停は、電話会議システムの利用によっても成立させることができます。

 

財産分与に関する調停調書の記載は、確定した審判と同一の効力を有します。
また、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有しますので、執行文の付与を受けることなく強制執行が可能です。

 

財産分与により不動産を不動産を取得した場合で調書に登記義務の履行に関する条項が記載されていれば、分与を受けた者が単独で登記をすることができます。

 

調停の不成立
当事者で合意に至らず調停が不成立になったときは、当然に審判に移行します。

 

財産分与審判

調停の不成立で審判に移行した場合、調停申立て時に審判の申し立てがあったものとみなされますので、改めて審判の申し立てをする必要はありません。

 

審判を申立てたが調停に付された場合には調停不成立により審判手続が再開されます。

 

家庭裁判所は、審判事件が裁判をするのに熟したときは、審判をします。
審判は、審判書が作成され当事者に告知されます。
審判に不服がある当事者は、審判の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告することができます。

 

確定した審判は執行力のある債務名義と同一の効力を有します。
登記義務の履行を命ずる審判書正本及び確定証明書を提供することにより、財産分与により不動産を取得した者が単独で登記を申請することができます。

 

 

お問い合わせ

司法書士八木隆事務所は愛知県名古屋市で登記業務を中心に行っている司法書士事務所です。

 

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