離婚時の慰謝料請求

離婚による慰謝料

離婚による慰謝料
浮気、暴力行為等による相手方の有責行為により被った精神的苦痛及び離婚そのものに対する精神的苦痛を慰謝するために支払われる金銭等を慰謝料といいます。

 

慰謝料の額
慰謝料の額については、客観的な基準により一律に判断することは非常に難しいのですが、裁判では、次の事項を考慮して総合的にその額を定めているとされています。

@離婚原因の有責性の程度
A背信性の程度
B精神的苦痛の程度
C当事者の社会的地位
D婚姻期間
E支払能力
F離婚後の要扶養状態の程度

裁判実務では、100万円から300万円程度の額を定めることが多いといわれています。

 

慰謝料の支払いに関する話し合い

慰謝料の支払いに関しては、離婚を前提として話し合うことも、離婚後に話し合うこともできます。

 

ただし、離婚による慰謝料請求権は、不法行為による損害賠償請求権に当たりますので、損害及び加害者を知った時から3年間行使しないと時効により消滅してしまいますので注意が必要です。

 

公正証書の作成

話し合いがまとまったときは、合意した内容を書面化する、できれば公正証書にすることをお勧めします。

 

「債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されている公正証書を執行認諾条項付の公正証書といいます。

 

この強制執行認諾条項が記載された公正証書を作成しておけば、相手方が慰謝料の支払いを怠った場合、裁判を経ることなく、公正証書を債務名義として強制執行をすることができます。

 

合意と同時に一括して慰謝料の支払いを受け取る場合なら、公正証書まで作成する必要はありませんが、その支払いを一定期間猶予する場合や分割払いで支払うことにした場合は、執行認諾条項の付した公正証書を作成し、相手方の不払いのリスクに備えておくべきです。

 

公正証書作成の手順

@公正証書に記載したい合意内容を整理しておきます。

 

A最寄りの公証役場に来所日等を事前に電話で連絡した方がいいでしょう。
また、当日持参すべき書類等を聞いておきましょう。

 

B第1回目
当事者が最寄りの公証人役場に出向きます。
公証人に公正証書に記載してほしい事項を伝えます。

 

C第2回目
最初に出向いた日から数週間後の日が設定されます。
この日は公証人が作成した公正証書の内容を確認し、その内容でよければ当事者が署名捺印します。

 

公正証書作成費用

@公証人手数料
公正証書を作成するには公証人に所定の手数料を支払う必要があります。

 

慰謝料の請求額が100万円以下の場合 5,000円
100万円を超え200万円以下の場合 7,000円
200万円を超え500万円以下の場合 11,000円
500万円を超え1,000万円以下の場合 17,000円

 

A正本・謄本代
用紙1枚あたり、250円の費用がかかります。

 

公正証書作成手数料の詳細はこちらから⇒日本公証人連合会ホームページ

 

 

家庭裁判所の調停手続を利用する

慰謝料の支払いについて当事者で話し合いができない又は話し合いがまとまらないときは、離婚前なら家庭裁判所の夫婦関係調整調停(いわゆる離婚調停)を利用して慰謝料についても話し合うことができます。

 

既に離婚が成立している場合には家庭裁判所の調停手続を利用するか、不法行為による損害賠償請求として訴えを提起する(民事訴訟手続)ことができます。

 

調停はあくまで当事者の合意を促す裁判所の手続であるのに対し、民事訴訟は裁判官が証拠に基づき慰謝料支払いの有無及びその額を決定して相手方(被告)に支払いを命ずる手続です。

 

家庭裁判所の慰謝料請求調停

家庭裁判所の調停とは
調停手続は、調停委員が当事者双方から、離婚に至った経緯や離婚の原因がどこにあったかなどの事情を聞いたり、必要に応じて資料を提出してもらうなどして事情をよく把握して、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をすることにより、話し合いによる円満な解決を促す家庭裁判所の手続です。

 

調停手続の流れ

相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所に『慰謝料請求調停申立書』を提出します。

 

申立て手数料として、1200円分の収入印紙を申立書に貼付します。その他に連絡用の郵便切手(額面及び枚数は各家庭裁判所に確認)が必要になります。

 

なお、調停を申立てると原則相手方に申立書の写しが送付されます。
よって、申立書に記載した内容は相手方にも読まれることを前提として申立書を作成する必要があります。
(相手方を一方的に非難、罵倒するような内容は極力避けた方がよいでしょう)

 

調停は、1〜2ヶ月に1回のペースで開かれます。
指定された期日に家庭裁判所に赴くことになります。弁護士に手続を依頼していても原則本人が出席しなければなりません。

 

調停の期日当日は、調停委員2名が当事者双方のお話を個別かつ交互に伺う形で進められます。
お互いが同じ部屋で直接顔を合わせて話合いを行うことはありません。また、家庭裁判所内で鉢合わせにならないように配慮してもらえます。

 

期日当日は、緊張などにより自分が伝えたいことをうまく話すことができないことがありまりので、事前に自分が伝えたい内容を整理・準備してから臨みましょう。(メモ書き等を持参するといいでしょう。)

 

調停は、問題が解決するまで調停期日を重ねます。
当事者で合意することができれば調停が成立し、合意に至らなかったときは、調停不成立となり、調停手続が終了となります。

 

調停が成立すると、合意内容が記載された調停調書が作成されます。

 

調停調書に記載された内容は、確定判決と同一の効力を有しますので、相手方が調停で合意した慰謝料の支払いを怠ったときは、裁判所に訴えを提起することなく直ちに相手方の財産を差押えることができます。

 

家庭裁判所の調停のメリット・デメリット

メリット
・安価で裁判所の手続を利用することができる。
・離婚実務に精通した調停委員が間に入ることから、当事者だけで話し合うよりも合意に至りやすい。
・調停が成立した場合、作成された調停調書は債務名義となる。

 

デメリット
・裁判所は平日日中しか開庁していないので、利用しにくい。
・一方的に調停を申立てると、むしろ相手方の気分を害し態度を硬化させてしまうことがある。

 

慰謝料請求権を担保するための抵当権設定

相手方が不動産を所有する場合には、その不動産に慰謝料請求権を被担保債権とする抵当権を設定することができます。

 

当事者以外の第三者に対して抵当権の設定を主張するためには登記をする必要があります。

抵当権設定登記

抵当権の設定登記は債権者(慰謝料請求権を有する人)と不動産の所有者が共同して、当該不動産の所在地を管轄する法務局に申請書を提出することにより行います。

 

また、慰謝料の支払いについて調停手続を利用して解決した場合、その調書に相手方が抵当権の設定登記に協力する旨の条項の記載があれば、その調停調書を添付すれば債権者(抵当権者)が単独で抵当権設定登記を申請することができます。

 

抵当権設定登記の登録免許税
債権額×0.4%

 

抵当権設定の仮登記

抵当権の仮登記を申請することもできます。
仮登記自体には、第三者に対して抵当権の設定を主張することができる効力(対抗力といいます)は有しませんが、本登記の順位を保全する効力ががあります。
将来、抵当権の本登記をするとその順位は仮登記の際の順位によることになります。

 

抵当権の仮登記の登録免許税
不動産1個につき1,000円です。

 

お問い合わせ

司法書士八木隆事務所は愛知県名古屋市で登記業務を中心に行っている司法書士事務所です。

 

登記手続に関するご相談、ご依頼は、下記の電話番号におかけいただくか、メールフォームによりお問い合わせください。

 

登記のご相談、登記費用のお見積りを無料でおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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