休眠担保権の抹消登記

休眠担保権とその抹消登記の手続き

休眠担保権とは

いわゆる休眠担保権とは、被担保債権の弁済期から長期間経過したにもかかわらず、担保権(抵当権)が実行されることなく放置されている担保権(抵当権)のことを言います。

 

休眠担保権の問題点

担保権(抵当権)設定から長期間経過していることにより、担保権者(抵当権者)もしくはその相続人を特定し,その者に対して、抵当権抹消登記の手続きに協力してもらうことが極めて困難な状況になっていることです。

 

登記簿に古い担保権(抵当権)が残されていても、日常生活において特別な支障があるわけではございませんが、いわゆる休眠担保権は登記簿上から消すこと(抵当権抹消登記を申請すること)が容易ではありませんので休眠担保権が残された不動産を売却、担保に差し入れることが、事実上不可能となってしまいます。(不動産取引の実務では、担保権(抵当権)が設定されている不動産を処分するにはその前提として登記簿から担保権(抵当権)を消さなければなりません。)

 

共同申請の原則とは

登記は原則として、登記権利者と登記義務所が共同して申請しなければなりません。
これを共同申請の原則といいます。

 

抵当権抹消登記の場合、抵当権が設定されている不動産の所有者(登記権利者)および抵当権者(登記義務者)が共同して申請しなければなりませ。抵当権者の行方がわからないからといって、所有者のみで抵当権抹消登記を申請しても受理されることはありません。

 

抵当権者の協力が得られない場合どうしたらよいか?
古い抵当権(明治時代や大正時代に設定された抵当権)がそのまま残っている不動産について抵当権抹消登記を申請しようとする場合、抵当権者と面識がない、その行方がわからない、抵当権が設定された時期から抵当権者が死亡しているのは、ほぼ確実だがその相続人の存否がわからないなどの理由で、抵当権者の協力を求めたくても求めることが事実上できない場合はどうしたらよいのでしょうか。

 

抵当権抹消登記について抵当権者の協力が得られないときは、以下の方法により所有者(抵当権設定者)による単独申請が可能かどうか検討することになります。

抵当権設定者の単独申請による抵当権抹消登記手続

1 除権決定による抹消
2 弁済証書による抹消
3 判決による抹消
4 弁済供託による休眠担保権の抹消

以下、制度について説明します。

1 除権決定による抹消

登記義務者(抵当権者)が所在が知れないため、共同申請ができない場合は、登記権利者(所有者)は裁判所に公示催告の申し立てをし除権決定を得たうえで、単独で当該登記の抹消を申請できる制度です。

 

この制度は公示催告の申立を受けた裁判所が抵当権者に対して「抵当権が消滅していなければ権利の申し出をしてくださいよ」と権利が消滅していないことの申出を促します。

 

一定の期間内に抵当権者の申し出がなかった場合に、裁判所が当該抵当権の失権を内容とする除権決定を行います。

 

公示催告の申し立てをするためには抵当権者の所在不明および抵当権の消滅を裁判所に証明する必要があります。
これはあらゆる調査を尽くしたが所在が判明しなかった場合でなければ所在不明とは認めてもらえず抵当権の消滅を証明するためには弁済証書など証拠書類が必要となります。

 

以上のように公示催告の申し立てはハードルが高く、決して使い勝手のよい制度とはいえません。

2 弁済証書による抹消

登記義務者が行方不明のため、共同申請ができない場合は、登記権利者は抵当権の被担保債権の
消滅したことを証する情報(弁済証書など)を提供することによって、単独で抵当権抹消登記を申請できる制度

 

債務を返済し抵当権が消滅していることを証明できる弁済証書などの書類を所持している場合は利用できる制度です。

3 判決による抹消

登記義務者を被告として、訴えを提起し、登記の抹消手続きを命じる判決を得ることで、登記権利者が単独で登記申請できます。

 

なお、相手方が行方不明なので訴状などの書類を送達することができないので公示送達の手続きをとる必要があります。

公示送達とは
送達しなければならない書類をいつでも交付する旨を、一定期間、裁判所の掲示板に掲示することによって、送達があったものとみなす手続き

4 弁済供託による休眠担保権の抹消

弁済供託による休眠担保権の抹消登記
登記義務者が行方不明のため、共同申請ができない場合は、被担保債権の弁済期から20年が経過し、且つ20年経過後に被担保債権の元本、利息、損害金の全額の金銭を供託することによって、登記権利者が単独で抵当権抹消登記を申請できる制度です。

 

弁済供託による休眠担保権抹消の要件

 1・登記義務者(抵当権者)が所在が知れないこと
〜抵当権者が個人の場合〜
「所在が知れない」とは、抵当権者の住所や居所を知らなくても、勤務先に勤務していることなどを知っている場合には、「所在が知れない」には該当しないとされています。
また、「所在が知れない」といえるためには、住民票や戸籍簿の調査、官公署や近隣住民からの聞き込みなど、相当の手段を尽くしてもなお、不明である場合とされています。

 

〜抵当権者が法人の場合〜
法人の「所在が知れない」といえるためには、法人登記簿が閉鎖されており、且つ廃棄されている場合です。

 

登記申請の添付書類として「所在が知れないことを証する書面」が必要となりますが、その前提としての所在不明調査は、前記、除権決定を得るための所在不明調査ほど厳格な調査は要求されていないので、所在が不明であることは比較的容易に証明すること可能です。

 

所在が知れないことを証する書面
・市町村長の証明書
(抵当権者が登記簿上の住所に居住していないことの証明)
※ただし、市町村は登記簿上の住所に住民票がないことを証明してくれても、現に居住していないことまでは証明してくれないといわれています。

 

・警察官または民生委員の証明書
(抵当権者が登記簿上の住所に居住していないこと証明)

 

・被担保債権の受領催告書が不到達であったことを証する書面

 

・法人調査書(印鑑証明書付)
(管轄法務局で法人登記簿および閉鎖登記簿の取得ができなかったことを内容とするもの)

 

上記書面のうち、いずれかひとつが必要となります。

 

2・抹消すべき登記が、先取り特権、質権又は抵当権であること
・抵当権は元本確定後の根抵当権も含みます。
・担保権でも譲渡担保、仮登記担保権は対象とはなりません。

 

3・被担保債権の弁済期から20年が経過していること
弁済期の証明することが必要となりますが、抵当権の登記が昭和39年法改正以前にされている場合は、弁済期が登記事項であったので、登記記録によって弁済期を証明することができますが、昭和39年法改正以後に設定された抵当権の登記の場合、弁済期が登記事項でないので、登記記録によっては弁済期を証明することができないので「被担保債権の弁済期を証する書面」が必要となります。

 

4・20年経過後に被担保債権の元本、利息、損害金の全額に相当する金銭が供託されたこと
債権の全額又は一部を既に弁済していたとしても、この制度を利用するには元本と供託時までの利息、損害金の全額を供託しなければなりませんが、かなり古い時代に設定された抵当権は債権額が少額(現在の貨幣価値に換算するのではない。)なことが多いので経済的負担はそれほど大きくはないのではないでしょうか。

 

以上、4つの要件をすべて満たすと 単独で抵当権の抹消登記を申請することができます。

休眠担保権抹消登記の手続きの検討

・すべての要件を満たしていれば、弁済供託による休眠担保権の抹消手続きが、時間、費用および労力すべてにおいて、効果的であると思います。

 

・休眠担保権の抹消をお考えの場合、まずは、弁済供託による休眠担保権の抹消手続きが利用できるどうかを検討してみましょう。

 

・ただし、すべての法律上の要件を満たしても、事実上利用するのが難しいこともあります。債権額が比較的高額な場合です。

 

・弁済期から20年以上経過していることが要件の一つですが、平成の初め頃に設定されている抵当権も対象になってくることが十分に考えられます。この場合供託金が高額になることが予想されます。
弁済していないならともかく、弁済済みだと供託金の支払いは二重払いになってしまいます。
この場合は、抹消登記手続きを求める訴えを裁判所に提起することも選択肢となってきます。

 

休眠担保権抹消登記のご依頼をお考えの方

休眠担保権の抹消手続きはテクニカルの部分がありますので、登記手続き、供託手続きに不慣れな一般の方だとご自身でなさるには少し大変かもしれません。

 

しかし専門家に依頼すると報酬を支払わなければならないので「昔の古い抵当権を消すためだけに高額な報酬を支払うのは・・・」と躊躇なさるのも当然だと思います。

 

しかしながら、最近では休眠担保権が残された不動産を処分する予定はないが、きれいな不動産を相続させたいという理由で休眠担保権の抹消登記を検討される方が増えてきています。

 

当事務所ではお客様のご負担を少しでも軽減できるよう、報酬額を設定しています。

 

当事務所は名古屋市ですが、市外、県外でも対応いたします。
(登記申請も供託申請も全国どこでもオンライン申請が可能となっています。)
休眠担保権の抹消をお考えの方は、お気軽にお問合せください。

 

休眠担保権の抹消登記のご相談・ご依頼のお問い合わせ

愛知県名古屋市を中心に業務を行っていますが、愛知県以外にお住まいの方もご相談・ご依頼承りますので、お気軽にお問合せください。

 

抵当権抹消登記のご相談、お見積りは無料です。

 

休眠担保権の抹消登記のことなら、愛知県名古屋市の司法書士八木隆事務所まで

 

 

 

弁済供託による休眠担保権抹消登記の費用(司法書士報酬)

司法書士報酬
60,000円〜(税別)
(※抵当権者およびその相続人調査、抵当権抹消登記手続、供託手続きが含まれます。)
特殊で複雑な案件は報酬額は要相談となります。

 

実費
・登録免許税(抵当権抹消登記)
 抵当権が設定されている不動産の個数×1,000円

 

・供託金
 元本、弁済期限から供託申請時までの利息、損害金の全額

 

・その他実費
 住民票の写し、戸籍謄本等手数料
 登記事項証明書手数料
 郵送料金等

 

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