死因贈与契約と仮登記 | 愛知の司法書士八木事務所

死因贈与と仮登記 | 名古屋の司法書士八木事務所

不動産の死因贈与契約

死因贈与の法務

死因贈与とは
贈与者の死亡によりその効力が生じる始期付贈与契約であり、贈与者と受贈者との合意により成立します。

 

不動産を死因贈与契約の目的とした場合、受贈者は、贈与者が死亡したときに当該不動産の所有権を贈与により取得することになります。

 

遺贈に関する規定の準用
死因贈与はその性質に反しない限り遺贈に関する規定が準用されます。(民法554条)

 

遺贈とは、遺言により自己の財産の全部又は一部を無償で他人に与える単独行為であるのに対し、死因贈与は贈与者と受贈者との合意により成立する契約であるといった違いがあります。

 

しかしながら、いずれも所有者の死亡時に効力が生じる財産の無償譲渡である点は同じであることから、その性質に反しない限り遺贈に関する規定を死因贈与に準用するとされています。

 

死因贈与の撤回

死因贈与は、民法1022条の規定(遺言の撤回)が準用されると解されていますので、贈与者はいつでも死因贈与を撤回することができます。

死因贈与の取消(撤回)については、民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきである。(最判昭和47年5月25日)

なお、撤回の方式に関しては遺贈に関する規定は準用されないことから、口頭による撤回でもその効力を生じます。

 

死因贈与の撤回権の相続
この撤回権は贈与者本人のみが行使することができる一身専属権であり、相続人には承継されないと解されています。

 

死因贈与の撤回が認められなかったケース

負担付の死因贈与契約であり、贈与者の生前にその負担の全部もしくはそれに類する程度の履行を受贈者が行っていた場合には、贈与者による死因贈与の撤回が認められないことがあります。

負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合には、右契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし右契約の全部又は一部を取り消すことがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、民法1022条、1023条の各規定は準用されない。(最判昭和57年4月30日)

 

夫婦間の死因贈与契約の撤回

夫婦間で締結した契約は婚姻中はいつでも取り消すことができる(民法754条)ので、夫婦間の死因贈与契約も婚姻中はいつでも取り消すことが可能です。

 

また、離婚もしくは婚姻関係の実質的破綻により夫婦間契約の取消権を行使できない場合でも、遺言の規定の準用による死因贈与契約の撤回権による夫婦間契約を撤回することは可能です。

贈与者のかかる死因贈与の取消権と贈与が配偶者に対してなされた場合における贈与者の有する夫婦間の契約取消権とは、別個独立の権利であるから、これらのうち一つの取消権行使の効力が否定される場合であつても、他の取消権行使の効力は認められる(前掲最判昭和47年5月25日)

 

書面によらない死因贈与契約

書面によらない贈与契約は、各当事者が撤回することができます。(民法550条)
この民法550条の規定は、死因贈与契約についても適用されると解されており、この撤回権は贈与者の一身に属する権利ではなく、相続人に承継されうる権利であり、相続人から書面によらない死因贈与契約を撤回することができるとされています。

 

死因贈与による始期付所有権移転仮登記を申請している場合

死因贈与による始期付所有権移転仮登記を申請する場合には、申請人は、登記原因証明情報を提供しなければならないとされています。(不動産登記法61条)

 

この登記原因証明情報には、当事者、死因贈与契約を締結した旨及びその契約日、目的不動産、死因贈与による仮登記を申請する意思等が記載されており、これが書面による贈与に該当するのかどうか問題になります。

 

判例においては、書面による贈与を緩やかに解しており、「書面に贈与がなされたことを確実に看取しうる程度の記載があれば足りる(最判昭60年11月29日)」とされていることから、仮登記の申請の際に提供した登記原因証明情報は、民法550条の書面に該当すると解されます。

 

死因贈与による始期付仮登記を申請している場合は、書面によらない死因贈与契約には当たらず、撤回することはできないと解されます。

 

死因贈与の税務

・受贈者には相続税、不動産取得税が課税されることがあります。
・不動産の受贈者に対して毎年固定資産税・都市計画税が課税されます。
・登記名義を変更する場合に登録免許税が課税されます。

 

相続税

税法上、死因贈与は遺贈と同様に取り扱われますので、個人が死因贈与により不動産を取得した場合は、当該不動産は相続税の課税対象とされ、贈与税は課税されないことになっています。

 

また、受贈者が贈与者の一親等の血族(その代襲相続人となった直系卑属を含む)及び配偶者以外の者である場合は、相続税が2割加算されます。

 

不動産取得税

死因贈与により不動産を取得した場合、不動産取得税が課税されます。

 

地方税法により、相続(包括遺贈および被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得については不動産取得税を課さないとされていますが、死因贈与については、非課税と規定がなく、また相続に含まれていないことから死因贈与により不動産を取得した場合は、生前贈与と同様に不動産取得税か課税されます。

道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得(地方税法73条の7@)

 

登録免許税

仮登記の登録免許税
不動産を目的とする死因贈与契約を締結したときは、本登記の順位を保全するために始期付所有権移転仮登記を申請することができます。
この仮登記の申請時に登録免許税を納付する必要があります。

 

登録免許税の額は、死因贈与に係る不動産の固定資産税評価額に1000分の10を乗じて得た額です。

 

本登記の登録免許税
死因贈与による本登記は、贈与者の死亡によりその効力が生じた後に申請することができます。
本登記の登録免許税の額は、死因贈与に係る不動産の固定資産税評価額に1000分の20を乗じて得た額です。

 

なお、始期付仮登記がなされている場合の本登記の登録免許税は、死因贈与に係る不動産の固定資産税評価額に1000分の10を乗じて得た額です。

 

死因贈与の登記

不動産を目的とする死因贈与契約を締結時は、いまだ当該不動産の所有権は受贈者に移転していないので贈与による所有権移転登記(本登記)を申請することはできませんが、将来行われるであろう本登記の順位を保全するために仮登記の申請をすることができます。

 

贈与者の死亡により受贈者が不動産の所有権を取得したときに、仮登記の本登記を申請することができます。
もちろん、仮登記を経由せずに贈与者の死亡により受贈者が不動産の所有権を取得した後に、直接贈与による所有権移転登記(本登記)を申請することもできます。

 

いずれにしても、本登記をしないと第三者に対して贈与により当該不動産を取得したことを主張することはできません。

仮登記の申請手続

不動産を目的とする死因贈与契約を締結したときは、本登記の順位を保全するために始期付所有権移転仮登記を申請することができます。

 

仮登記は、不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に贈与者と受贈者が共同して申請することにより行うのを原則としますが、贈与者の承諾書(印鑑証明書付)を提出したときは、受贈者が単独で申請することができます。

 

この承諾書に添付する印鑑証明書には作成後3ヶ月以内といった有効期限はありません。
承諾書が公正証書により作成されている場合は、印鑑証明書を添付する必要はありません。

 

仮登記の申請は、以下の添付書類とともに登記申請書を管轄の法務局に提出します。

添付書類
・登記原因証明情報
・贈与者の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のものに限る。)
・固定資産税評価証明書又は固定資産税評価通知
・委任状(仮登記の申請を代理人に委任する場合に必要)

 

仮登記の本登記の申請手続

死因贈与は贈与者の死亡によりその効力を生じ、受贈者は贈与者の死亡時に死因贈与に係る不動産の所有権を取得します。仮登記の本登記は、贈与者の死亡時(所有権取得した日)以降、申請することができます。

 

仮登記の本登記の申請は、受贈者と死因贈与執行者(執行者の指定がないときは、贈与者の相続人全員)が共同しておこないます。

 

死因贈与執行者の指定

死因贈与は、遺贈の規定が準用されることから、遺言執行者に関する規定も準用され、死因贈与執行者を指定することが可能とされています。

 

死因贈与執行者は、死因贈与契約の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有していますので、受贈者のために登記申請を行う権限を有すると同時に登記申請義務を負うことになります。

 

死因贈与執行者の権限を証する書面
死因贈与執行者が登記義務者として登記申請する場合、その権限を証する書面を提供する必要があります。

 

@公正証書により指定されている場合
当該公正証書が、死因贈与執行者の権限を証する書面となります。

 

A私署証書により指定されている場合
当該私署証書に贈与者の実印による押印があり、且つ印鑑証明書(有効期限はありません。)が添付されている場合に当該証書が死因贈与執行者の権限を証する書面になります。

 

なお、贈与者の押印に係る印鑑証明書の添付ができないときは、贈与者の相続人全員の承諾者(印鑑証明書付)を添付する必要があります。

 

本登記の添付書類

受贈者と死因贈与執行者の共同申請 受贈者と相続人全員による共同申請

登記原因証明情報
贈与者の登記識別情報又は登記済権利証
死因贈与執行者の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)
死因贈与執行者の権限を証する書面
受贈者の住民票の写し
固定資産税評価証明書または固定資産税評価通知書

登記原因証明情報
贈与者の登記識別情報又は登記済権利証
相続人全員の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)
相続証明情報(贈与者の戸籍謄本等)
受贈者の住民票の写し
固定資産税評価証明書または固定資産税評価通知書

 

不動産贈与の登記手続のご依頼・ご相談

司法書士八木隆事務所は愛知県名古屋市で登記業務を中心に行っている司法書士事務所です。

 

登記手続に関するご相談、ご依頼は、下記の電話番号におかけいただくか、メールフォームによりお問い合わせください。

 

登記のご相談、登記費用のお見積りを無料でおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

お電話によるお問い合わせはこちらの電話番号へおかけください

お電話による受付は、平日の10時から22時頃まで受け付けております。
土日祝日はお休みを頂いておりますが、電話に出ることができる時は対応いたします。

 

 

メールフォームからお問い合わせはこちらをクリックしてください

24時間以内に返信することを心がけております。

 

贈与登記の費用(司法書士報酬及び登録免許税等)

司法書士への報酬(税別) 登録免許税 備考

贈与による名義変更の手続
(贈与による所有権移転登記)

35,000円 贈与不動産の固定資産税評価額の2%(仮登記は1%)
住所変更登記 8,000円 贈与不動産の個数×1000円 贈与者の登記簿上の住所と現住所が異なるときに必要な手続です。

不動産の所有権を移転する登記(名義変更)の登録免許税は、固定資産税評価額を基に算出します。

 

登録免許税を含めた見積もりのご依頼は、対象不動産の固定資産税評価額が分かる資料をご用意ください。
固定資産税評価証明書(市町村役場で取得できます。)又は固定資産の課税明細書(市町村から4月頃に送られてきます。)等により、固定資産税評価額が分かります。

 

お見積りのご依頼はお電話又はメールでお願いします。

 

トップへ戻る