不動産の負担付贈与契約

負担付贈与の法務

負担付贈与契約とは
贈与契約の内容の一部として、受贈者に一定の給付義務等を負担させる贈与契約のことをいいます。

 

・抵当権が設定されている不動産の贈与を受けるとともに抵当債務を引き受ける贈与契約
・不動産を贈与する代わりに老後の世話をしてもらう贈与契約など

 

受贈者が負担を履行しなかった場合の贈与契約の解除
負担付贈与はその性質に反しない限り双務契約の規定が準用されますので、受贈者が贈与契約で定められた負担を履行しないときは、贈与者は、相当の期間を定めたうえでその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、贈与契約を解除することができます。

養子が養親の生活に困窮をきたさないように面倒を見ることを条件として養親がその所有する財産のほとんどを養子に贈与したケースです。(最判昭53年2月17日)

 

最高最は本事案に関して、負担付贈与契約と認定し、その負担を怠った場合は債務不履行による契約解除ができる旨を判示しました。

 

本来親子間には法律上の扶養義務があります。
このような扶養義務を負担とする贈与契約が負担付贈与契約と認定されるか、またどの程度の不履行があれば、契約解除が認められるかは個々の案件によって違ってくると思われます。

 

負担付贈与の税務

・不動産を負担付で贈与した場合、受贈者に対して贈与税、不動産取得税が課税されます。贈与を受けた年の翌年以降、固定資産税・都市計画税が毎年課税されます。

 

・贈与者に対して譲渡所得税が課税されることがあります。

 

・登記名義を変更する(所有権移転登記)場合、登録免許税が課税されます。

贈与税

一般の贈与と同様に、受贈者に贈与税が課税されます。
ただし、贈与財産の価額から負担額を控除した額が贈与税の課税対象になります。

 

不動産の負担付贈与における贈与税の課税価格
一般の不動産贈与の場合、不動産の価額は国税庁が定めた「財産評価基本通達」に基づき評価します。(相続税評価)

 

しかしながら、不動産を負担付で贈与した場合の不動産の価額は、通常の取引価額により評価するとされています(時価評価)。

 

一般的には、相続税評価額より通常の取引価額のほうが高額になることが多く、負担の額によっては一般の贈与より贈与税が高額になることがあります。

 

贈与財産の額から負担額を控除できる場合
贈与を受けた時において、経済的な負担が確定していること、またはその確定が推認しうる状態にあることが必要であるとされています。

 

不動産の贈与とともに贈与者の金銭債務を受贈者が引き受ける内容の贈与契約であれば、経済的な負担が確定しているといえるので、不動産の価額から金銭債務の価額を控除した額をもって贈与税の課税価格とすることができますが、不動産を贈与する代わりに老後の世話をすることを負担とする贈与契約の場合、この負担を経済的に評価することは極めて困難であることから負担額を控除することができないとされています。

 

負担内容が老後の世話を行うなど、経済的な負担が確定しているとはいえない場合の不動産の負担付贈与は、負担額を控除せずに、当該不動産を通常の相続税評価(路線価評価または倍率評価)により評価して贈与税を課税します。

 

抵当権付不動産の贈与
抵当権付不動産の受贈者は、贈与を受けた抵当不動産をもって被担保債務を担保することとなるが、これを税務上の負担付贈与として贈与不動産の額から被担保債権額を控除することができるか問題となるが、仮に抵当権が実行されても受贈者は債務者に対して求償権を取得するので何ら負担を負うものではないと解されているので、抵当債務相当額を控除することはできず、贈与税の課税価格は贈与不動産の相続税評価額であるとされています。

 

 

賃貸不動産の贈与
賃貸建物の贈与があった場合、旧賃貸人が負担する敷金返還債務は、新賃貸人に承継されることから、敷金返還債務の承継を伴う賃貸不動産の贈与は一種の負担付贈与と解することができます。(この場合の不動産の価額は通常の取引価額で評価します。)

賃貸中の建物の所有権の移転に伴い、賃貸人足る地位が新所有者に承継された場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、未払賃料債務があればこれに当然充当され、残額の権利関係が新賃貸人に承継される。
(最判昭44年7月17日)

ただし、敷金相当額の現金が贈与者から受贈与者に贈与されている場合は、当該贈与は税務上負担付贈与とは取り扱わないとされています。(この場合は、敷金相当額を控除せずに、不動産を相続税評価額で評価します。)

 

 

受贈者が贈与者以外の第三者の債務を引き受けることを内容とする負担付贈与
第三者は、無償で自ら負担する債務を免れることから、この債務額が第三者に対する贈与に該当します。

 

譲渡所得税

不動産の贈与とともに贈与者の金銭債務を受贈者が引き受ける内容の贈与契約の場合、受贈者の負担において、贈与者が金銭債務を免れていることから、この免れた金額が贈与者の収入金額にあたり、これに対して譲渡所得税が課税されます。

 

登録免許税

贈与による登記を申請するには、登記申請時に登録免許税を納付する必要があります。
登記申請を書面により行う場合には、登記申請書に収入印紙を貼付することにより登録免許税を納付します。

 

贈与による所有権移転登記の登録免許税の額は、贈与に係る不動産の固定資産税評価額に1000分の20を乗じて得た額になります。

 

贈与する不動産の固定資産税評価額が2,000万円の場合の登録免許税の額は、40万円になります。

 

 

負担付贈与の登記

登記名義を変更することにより受贈者は贈与により不動産を取得したことを第三者に対して主張することができるようになります。(登記の対抗力)

 

不動産の帰属について第三者と紛争になった場合、登記を行っていないと自分が当該不動産の所有者であることを主張することができませんので、不動産を取得した場合には、速やかに登記を行う必要があります。

登記手続

不動産を負担付で贈与した場合の登記手続は、一般の贈与による登記手続と何ら変わるところはありません。

 

贈与者と受贈者が共同して、不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に贈与による所有権移転登記を申請します。

 

贈与による所有権移転登記の申請は、下記の添付書面とともに管轄法務局に登記申請書を提出することにより行います。

添付書面
・登記原因証明情報
・贈与者の登記識別情報又は登記済権利証
・贈与者の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のものに限る)
・受贈者の住民票の写し
・固定資産税評価証明書又は固定資産税評価通知書
・委任状(代理人により登記申請を行う場合に必要)

 

贈与者の登記記録上の住所又は氏名が、現在の住所又は氏名と一致しない場合には、贈与による所有権移転登記の前又は同時に登記名義人表示変更登記を申請する必要があります。

 

不動産贈与の登記手続のご依頼・ご相談

司法書士八木隆事務所は愛知県名古屋市で登記業務を中心に行っている司法書士事務所です。

 

登記手続に関するご相談、ご依頼は、下記の電話番号におかけいただくか、メールフォームによりお問い合わせください。

 

登記のご相談、登記費用のお見積りを無料でおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

お電話によるお問い合わせはこちらの電話番号へおかけください

お電話による受付は、平日の10時から22時頃まで受け付けております。
土日祝日はお休みを頂いておりますが、電話に出ることができる時は対応いたします。

 

 

メールフォームからお問い合わせはこちらをクリックしてください

24時間以内に返信することを心がけております。

 

贈与登記の費用(司法書士報酬及び登録免許税等)

司法書士への報酬(税別) 登録免許税 備考

贈与による名義変更の手続
(贈与による所有権移転登記)

35,000円 贈与不動産の固定資産税評価額の2%
住所変更登記 8,000円 贈与不動産の個数×1000円 贈与者の登記簿上の住所と現住所が異なるときに必要な手続です。

不動産の所有権を移転する登記(名義変更)の登録免許税は、固定資産税評価額を基に算出します。

 

登録免許税を含めた見積もりのご依頼は、対象不動産の固定資産税評価額が分かる資料をご用意ください。
固定資産税評価証明書(市町村役場で取得できます。)又は固定資産の課税明細書(市町村から4月頃に送られてきます。)等により、固定資産税評価額が分かります。

 

お見積りのご依頼はお電話又はメールでお願いします。

 

 

お問い合わせ

司法書士八木隆事務所は愛知県名古屋市で登記業務を中心に行っている司法書士事務所です。
登記相談を無料でおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

トップへ戻る