外国人の不動産売買と登記手続

当事者双方又は一方が外国人である日本国内の不動産の売買契約及び登記手続については、不動産売買契約の成立及び効力、物権変動、行為能力の有無に関してどの国の法が適用されるのか(準拠法の問題)、外国人が登記申請人になる場合に特有な添付書面について理解する必要があります。

不動産売買契約の準拠法の特定

契約当事者に外国人が含まれる場合、日本法又は当事者の本国法のいずれの国の法を適用するのかが問題となる
これについては、「法の適用に関する通則法(以下、通則法)」に規定されている

 

法律行為の成立及び効力に関する準拠法

当事者による準拠法の選択

通則法第7条
第7条 法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。

⇒契約当事者は準拠法を選択することができ、準拠法として日本法を選択すれば法律行為の成立及び効力について日本法が適用される。

 

準拠法の選択がない場合

通則法第8条
第8条 前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
3 第一項の場合において、不動産を目的物とする法律行為については、前項の規定にかかわらず、その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

日本国内の不動産売買契約において当事者が準拠法の選択をしない場合、法律行為の成立及び効力は、不動産所在地の法である日本法が適用される。

 

物権の内容及び得喪に関する準拠法

通則法第13条
第13条 動産又は不動産に関する物権及びその他の登記をすべき権利は、その目的物の所在地法による。
2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する権利の得喪は、その原因となる事実が完成した当時におけるその目的物の所在地法による。

売買契約の目的物が日本所在の不動産であれば通則法第13条の規定により、物権の内容および得喪に関する準拠法は日本法になる。

 

行為能力に関する準拠法

行為能力とは、契約等の法律行為を単独で確定的に有効に行うことができる能力のことをいう。

 

日本の民法では未成年者、成年被後見人、被保佐人、同意権付与審判を受けた被補助人を制限行為能力者とし、それ以外の者は行為能力者としている。

 

制限行為能力者である未成年者が売買契約を締結するには親権者の同意が必要となる。

通則法第4条
第4条 人の行為能力は、その本国法によって定める。
2 法律行為をした者がその本国法によれば行為能力の制限を受けた者となるときであっても行為地法によれば行為能力者となるべきときは、当該法律行為の当時そのすべての当事者が法を同じくする地に在った場合に限り、当該法律行為をした者は、前項の規定にかかわらず、行為能力者とみなす。

 

行為能力は原則当事者の本国法が準拠法になる。

 

ただし、行為地が日本で有り、日本法によれば行為能力が認められ、行為の当時すべての当事者が日本にいた場合は行為能力に関する準拠法は日本法を適用する。

 

不動産売買契約の当事者が20歳以上であり、成年被後見人等でなく、不動産売買契約締結の当時、当事者双方が日本国内にあった場合は、いずれも行為能力者とみなされる。

 

 

外国人不動産売買の登記手続(添付書類)について

不動産売買契約の当事者に外国人がいたとしても日本国内の不動産の登記手続は日本の不動産登記法が適用される。
【関連記事】不動産売買による登記手続(名義変更)

 

なお、登記申請に必要な書類については、登記申請人が日本人の場合とは異なる扱いがなされている。

 

売主が外国人の場合の印鑑証明書

売主(登記義務者)は、申請書又は委任状に押印した印鑑に係る印鑑証明書を提供することが求められている。

 

@日本に住所を有する外国人の場合
中長期在留者、特別永住者は住民登録がなされている市町村において印鑑登録することができ、当該印鑑に係る印鑑証明書の交付を受けることができる。
この印鑑証明書をもって登記義務者の印鑑証明書として用いることができる。

 

外国人が印鑑証明書を添付した場合、別途、署名証明書の添付は不要。

印鑑を使用している外国人が、申請書又は委任状等に署名捺印の上、日本における居住地市町村発行の印鑑証明書を添付して登記の申請があった場合、署名証明書の提出がなくても受理するのが相当である。
(昭和35・4・2民甲787号民事局長回答)

 

A日本に住所を有しない外国人の場合
諸外国において印鑑登録制度がある国はほとんどない。

 

外国人が印鑑証明書を添付できないときは、印鑑証明書に代えて、申請書又は委任状の署名が本人のものであることを証する、当該外国官公署の署名証明書又は当該外国の公証人による署名証明書を添付する。

 

なお、印鑑証明書と違い、署名証明書には作成後3か月以内の有効期限の制限は受けない。

所有権登記名義人たる外国人が登記義務者として登記申請する場合においては、その者の印鑑証明書に代えて、申請書又は委任状における署名が本人のものであることの当該外国官憲の証明書を提出するのが相当である。
(昭和34・11・24民甲2542民事局長通達)

 

B帰化した元日本人の場合
元日本人である外国人が登記義務者として登記を申請する場合において本人の自署であることについて所属国駐在の日本大使館又は領事館において証明した場合は、その証明書を印鑑証明書に代えることができる。

 

買主が外国人の場合の住所証明情報

買主(登記権利者)は登記申請の添付書類として市町村等の作成に係る住所を証する情報(住所証明情報)を提供する必要がある。

 

@日本に住所を有する外国人の場合
長期在留者、特別永住者は住民登録がなされている市町村において、外国人住民票の発行を受けることができ、当該書面が住所を証する情報になる。

 

A日本に住所を有しない外国人の場合
当該所属国の公証人、在日領事館の認証がある住所に関する宣誓供述書

 

・韓国籍の場合
韓国住民登録証明書が住所証明情報になる。

 

・台湾籍の場合
台湾戸籍の謄本が住所証明情報になる。

 

所有権登記名義人住所変更登記を要する場合

所有権登記名義人(売主)の現住所が登記簿上の住所と異なるときは、所有権移転登記の前提として所有権登記名義人住所変更登記を行う必要がある。

 

売主が日本人であれば住民票、除の住民票、又は戸籍の附票を取得することにより登記簿上の住所から現住所へ移転したことが証明できるので、これらの書類が住所変更登記の添付書類となる。

 

しかしながら、日本に居住する在日外国人の場合、平成24年7月9日より外国人住民登録制度が実施され、外国人登録制度が廃止されたことにより今までとは異なった対応が必要となる。

 

従前は、所有権登記名義人である在日外国人が住所変更した場合、市町村で発行された外国人登録原票の写しを添付することにより住所変更登記を行っていた。

 

外国人登録制度廃止後は、それまで市町村で保管されていた外国人登録原票を法務省で保管することになった。

 

@平成24年7月9日以前に住所変更した場合

所有権登記名義人(売主)が平成24年7月9日以前に住所変更したときは、新設の外国住民票だけでは登記簿上の住所から現住所へ移転したことが証明できない。
(最初の外国人住民票は現住所のみ記載され、従前の住所及び移転日等の遍歴は記載されない。)

 

この場合は、法務省に対して外国人登録原票記載事項の開示請求をおこない外国人登録原票の写しの交付を受ける必要がある。
住所変更登記の添付書類として外国人住民票及び外国人登録原票の写しを提出する。

 

A平成24年7月9日以後に住所変更した場合

所有権登記名義人(売主)が平成24年7月9日以後に住所変更したときは、通常、外国人住民票、除の外国人住民票により登記簿上の住所から現住所へ移転したことが証明できるのでこれらの書類を住所変更登記の添付書類として提出する。

 

 

 

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・不動産売買契約書
・登記事項証明書
・固定資産税評価証明書

 

登記費用の内訳
・登録免許税
所有権移転登記を申請する際に納付する税金です。
(申請手続を司法書士に依頼せずにご自身で申請しても必ず負担しなければならない費用です。)

 

・司法書士報酬
登記申請手続を司法書士に依頼する場合に負担する費用です。

 

・その他実費
郵送代、登記情報提供サービス利用料など登記手続を行うのに必要な諸費用です。

 

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