真正な登記名義の回復|不動産登記|名古屋の司法書士

真正な登記名義の回復による所有権移転登記がなされている不動産登記簿を読む

真正な登記名義の回復による所有権移転登記がなされている不動産登記簿を読む

甲区

順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
所有権移転

平成○年○月○日
第○○号

原因 平成15年4月1日売買
所有者 名古屋市中村区○町1番2号
 甲 野 太 郎

所有権移転

平成28年12月25日
第○○号

原因 平成28年12月25日贈与
所有者 名古屋市南区△町1丁目20番地
 乙 山 次 郎

所有権移転

平成29年7月20日
第○○号

原因 真正な登記名義の回復
所有者 名古屋市中村区○町1番2号
 甲 野 太 郎

 

乙区

順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
抵当権設定

平成29年1月10日
第○○号

原因 平成29年1月10日金銭消費貸借同日設定
債権額 金500万円
     (省略)
債務者 名古屋市南区△町1丁目20番地
 乙 山 次 郎
抵当権者 名古屋市南区○町8番地の1
 丙 川 三 郎

 

登記簿を読み解く

甲区3番の登記
本件不動産は平成28年12月25日に甲野太郎から乙山次郎に贈与されていることがわかります。

 

 

甲区4番の登記
真正な登記名義の回復を登記原因として登記名義が受贈者である乙山次郎から贈与者である甲野太郎に戻されています。

 

真正な登記名義の回復による所有権移転登記とは、現在の登記名義人が真実の権利者でない場合に、真実の権利者と登記名義人を一致させるために移転登記の形式を利用したテクニカルな登記といえます。

 

つまり、前所有者(甲野太郎)に登記名義が戻っている(甲区4番)ことから、甲野太郎から乙山次郎に贈与による所有権移転登記をした(甲区3番)ものの、何らかの理由により贈与が無効になった、または合意解除したことにより所有権が甲野太郎に戻ったので、乙山次郎から真実の所有者である甲野太郎へ所有権移転登記をおこなったであろうことが推測することができますが、正確の理由までは登記簿上からは読み解くことはできません。

 

前所有者に登記名義を戻す方法としては所有権抹消登記によるのが一般的です。

 

理由としては、権利変動の経過を正確に登記簿に記録するという登記法の要請からすれば、本来は所有権抹消登記をすべきなのです。

 

また、登録免許税の納付額が大きく異なります。

 

所有権抹消登記の場合ですと、不動産1個につき1,000円であるのに対し、移転登記の形式をとる真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記の場合ですと固定資産税評価額に1000分の20に乗じた額になります。(不動産の固定資産税評価額が1000万円の場合、登録免許税は20万円になります。)

 

一般的には、抹消登記を選択せずに真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記を選択する合理的な理由はありませんが、抹消登記をしたくてもできないケースがあります。

 

例えば、乙山次郎が贈与により本件不動産を取得し、所有権移転登記をしたのちに抵当権を設定しているような場合です。

 

本件でも乙山次郎は、甲区2番の登記後に丙川三郎のために抵当権設定登記しています(乙区1番の登記)。

 

乙山次郎は平成29年1月10日に丙川三郎から500万円を借り入れ、その担保として甲野太郎から贈与された不動産に抵当権を設定しています。

 

甲区3番の所有権の登記を抹消するには、抵当権者である丙川三郎の承諾が必要になります。
(ちなみに、抵当権者である丙川三郎が所有権抹消登記の申請にあたり承諾書を提出すると1番抵当権は登記官の職権により抹消されます。)

 

本件では3番所有権登記の抹消につき抵当権者の丙川三郎の承諾を得ることができなかったので、やむを得ず真正な登記名義の回復による所有権移転登記をおこなったであろうことを推測することができます。

 

 

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