遺産分割による所有権移転の登記がなされている不動産登記簿を読む
甲区
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 所有権移転 |
昭和58年10月1日 |
原因 昭和58年10月1日売買 |
2 | 所有権移転 |
平成18年11月12日 |
原因 平成18年5月5日相続 |
3 | 乙山花子持分全部移転 |
平成20年4月20日 |
原因 平成20年3月25日遺産分割 |
登記簿を読み解く
上記登記簿から、昭和58年10月1日に甲野太郎が購入した不動産を、平成18年5月5日に甲野太郎が死亡したことにより開始した相続により法定相続人である甲野一郎が、法定相続人乙山花子との間で平成20年3月25日に成立した遺産分割により単独相続したことを読み解くことができます。
ただし、この登記簿は遺産分割により不動産を相続した場合に、通常行われる登記の方法とは異なる方法により登記がなされています。
それは、共同相続登記(甲区2番の登記)と遺産分割による所有権移転登記に二段階で登記がなされているところです
共同相続登記
相続財産(遺産)は、遺産分割が成立するまでは、法定相続人が法定相続分に応じて共有することになります。この権利関係を公示したのが甲区2番でなされた登記です。(遺産共有状態)
※共同相続登記の詳細は共同相続登記をご覧ください。
遺産分割による持分移転登記
平成20年3月25日遺産分割の成立により本件不動産は甲野一郎が単独相続することになったので、相続人全員の共有名義になっている登記を甲野一郎の単独名義の登記にする必要があります。
登記実務では単独相続した相続人に、相続しなかった他の相続人の持分を移転する登記の方法により行います。
登記原因は遺産分割で、登記原因日付は遺産分割協議等が成立した日になります。
※遺産分割協議等
遺産分割は、相続人全員による協議(遺産分割協議)、家庭裁判所でおこなわれる遺産分割調停又は遺産分割審判により成立します。
甲野一郎がこの不動産を売却する場合には、甲区2番で作成された登記識別情報及び甲区3番で作成された登記識別情報が必要になります。
一般的な相続登記の方法
共同相続登記を入れると余分な登録免許税がかかりますし、登記の申請も2回しなければならず、面倒ですので、共同相続登記を経ることなく、被相続人名義から遺産分割協議等により不動産を取得した相続人名義に直接相続を原因とする所有権移転登記(相続登記)をおこなうのが一般的です。
登記実務においても、共同相続登記を申請する必要はないとされています。
共同相続登記をすることなく遺産分割協議等が成立した後に、相続登記を行った場合の登記簿は以下のようになります。
甲区
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 所有権移転 |
昭和58年10月1日 |
原因 昭和58年10月1日売買 |
2 | 所有権移転 |
平成18年11月12日 |
原因 平成18年5月5日相続 |
このように、相続人が相続した不動産を所有し続ける場合は、共同相続登記をおこなうことはあまりありませんが、遺産分割をおこなわず未分割のまま不動産を第三者に売却しその代金を相続人で分配する場合(換価分割といいます。)には、売買による所有権移転登記の前提として共同相続登記がおこなわれます。
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