仮登記担保契約法が適用される仮登記がなされている不動産登記簿を読む
甲区
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
2 | 所有権移転 |
平成10年8月8日 |
原因 平成8年5月10日相続 |
3 | 条件付所有権移転仮登記 |
平成28年9月1日 |
原因 平成28年6月3日代物弁済 |
登記簿を読み解く
甲野太郎が相続により取得した本件不動産を、平成28年5月6日に締結した金銭消費貸借契約について債務不履行があった場合には、債権者である乙野次郎に対して、その借入金の支払いに代えて給付することを内容とする停止条件付代物弁済契約を締結し、その旨の仮登記をおこなったことを読み解くことができます。
債務者は甲野太郎であると推測することができますが、物上保証人となっている場合もあるので登記簿からだけでは断定することができません。
なお、甲区3番で仮登記された権利は『仮登記担保契約に関する法律』が適用されますので注意が必要です。
仮登記担保契約とは
金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記又は仮登録のできるものをいいます。
仮登記担保契約に関する法律ができた背景
この法律ができる以前は、債務者の窮状につけ込んで債権者が貸付額を遙かに上回る不動産を給付の目的とする代物弁済予約や停止条件付代物弁済契約を結ばせ、不履行があれば不動産を丸取りするといった暴利行為に近いことがおこなわれていました。
この法律の制定により、この代物弁済予約等の実態は担保権の設定であり、債権者は未返済額の弁済を受けることができれば十分なので、当該不動産を取得するには債務者等に清算金(不動産の価額と未返済債務の差額相当額)を支払うべきことを義務づけることにしました。
これにより債権者は債務不履行があった場合に不動産を丸取りすることができるうまみがなくなったといわれています。
仮登記担保契約の特徴
1・予約完結権を行使後又は停止条件成就後、直ちに所有権移転の効果は生じない
本件では、債務者が約定の期限までに返済しなかった(停止条件の成就)としても、仮登記された不動産の所有権は直ちには債権者(仮登記権利者乙野次郎)に移転しないということです。
不動産所有権の移転時期
予約を完結する意思を表示した日、停止条件が成就した日その他のその契約において所有権を移転するものとされている日以後に、債権者が清算金の見積額をその契約の相手方である債務者又は第三者に通知し、その通知が債務者等に到達した日から2月を経過した日に所有権移転の効果が生じるとされています。
本件において弁済期限が平成29年5月6日で、清算金の見積額の通知が平成29年7月7日に甲野太郎に到達した場合、債権者乙野次郎に許雄兼不動産の所有権が移転する日は、甲野太郎に通知書が到達した日から2ヶ月が経過した日である平成29年9月8日になります。
2・優先弁済権(担保仮登記が抵当権設定登記とみなされる場合)
担保仮登記がされている不動産に対して強制競売等が実行された場合は、その担保仮登記の権利者は、他の債権者に優先して、その債権の弁済を受けることができます。
この場合における順位に関しては、その担保仮登記に係る権利を抵当権とみなし、その担保仮登記のされた時にその抵当権の設定の登記がされたものとみなされます。
3・受戻権が認められている
債務者等は、清算金の支払いを受けるまでは、債権等の額(債権が消滅しなかつたものとすれば、債務者が支払うべき債権等の額)に相当する金銭を債権者に提供して、不動産の所有権の受戻しを請求することができます。
受戻権が行使できない場合
・清算期間が経過した時から五年が経過したとき
・第三者が所有権を取得したとき
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