特別代理人選任申立 | 名古屋の司法書士八木隆事務所

遺産分割協議や相続放棄で必要となる特別代理人とは

利益相反行為と特別代理人

親権者及び親権に服する未成年の子が、いずれも相続人の場合、親権者が未成年の子のために行う遺産分割協議や相続放棄が利益相反行為に該当することがあります。

 

ある行為が利益相反行為に該当すると、親権者は、未成年の子を代理することができず、親権者は、自己に代わる未成年の子の代理人の選任を家庭裁判所に申し立てなければなりません。

 

なぜ特別代理人の選任が必要なのか

利益相反行為と特別代理人制度

親権者はその親権に服する未成年者である子の財産を管理する権限を有します。
親権者は財産管理の一環として、未成年者である子のために、契約の締結等をおこなうことができます。

 

しかしながら、売主が親権者で、買主が未成年者である子である売買契約を、親権者が未成年者である子を代理して締結することになると、親権者は売主兼買主代理人となり、親権者の意思のみで自由に売買契約の内容を決定することができます。

 

売買の目的物を時価より高い価格で売買することに決定すれば、未成年者は時価より高い価格で購入することになり経済的不利益を蒙ることになります。

 

逆に売主が未成年者である子で、買主が親権者である場合なら、親権者が時価より安い価格で売買することに決定すれば、売主である未成年者である子は時価より安い価格で売却することになりやはり、経済的不利益を蒙ることになります。

 

このように、親権者にとっては利益となるが、その反面、未成年者である子にとっては、不利益となる蓋然性のある行為のことを利益相反行為と呼んでいます。

 

親権者に利益相反行為の代理を認めると本来親権者は未成年者である子の利益にかなうようにその財産を管理すべきであるのに、未成年者である子の利益を犠牲にして、自己の利益を図ることができてしまいます。

 

このような弊害を防止するために、親権者に利益相反行為に該当する契約等の代理権を認めず、未成年者である子のために家庭裁判所に特別代理人の選任をしてもらい、その特別代理人が親権者に代わって未成年者である子のために利益相反行為に該当する契約等を締結し、もって未成年者である子の利益の保護を図っています。

 

後見人と被後見人の利益が相反する場合

後見人は被後見人の財産を管理する権限を有し、被後見人のために契約を締結することができます。

 

後見人と被後見人の利益が相反する行為を後見人が被後見人を代理する場合にも、被後見人のために特別代理人の選任を家庭裁判所に申立る必要があります。

 

ただし、後見監督人が選任されているときは、利益相反行為につき後見監督人が被後見人の代理人となりますので特別代理人の選任は不要です。

 

利益相反行為とは

利益相反行為とは客観的にみて、親権者(後見人)にとっては利益となり、未成年者である子(被後見人)にとっては不利益となる行為を言います。

 

判例・通説は利益相反行為に該当するか否かの判断基準として形式説を採用しています。実質的にみて未成年者である子にとって不利益でなかったとしても、形式的にみて、その行為が、親権者が利益を得て、未成年者である子が不利益を受ける客観的性質を有するものであれば、利益相反行為に該当するとしています。

 

遺産分割協議

親権者と未成年者である子が共同相続人として、遺産分割協議をするには未成年者である子のために特別代理人を選任しなければならない。遺産分割協議の結果全ての相続財産を未成年者である子に取得させる意図であったとしても、特別代理人を選任する必要があります。

未成年者である子2人が共同相続人の場合、その親権者(相続人ではない)は、未成年者である子の一方を代理することはできるが、両方の子を代理することは利益相反行為に当たるので、他方の子のために特別代理人を選任する必要があります。遺産分割協議は親権者と特別代理人で行うことになります。

 

相続放棄

共同相続人である親権者と未成年者である子が相続放棄をする場合、親権者が自らの相続放棄の申述をした後、又は同時に未成年者である子のために相続放棄の申述をすることは利益相反行為には当たらないとされています。

 

抵当権設定

親権者の借入れ債務を担保するために、未成年者である子の不動産に抵当権を設定する行為は利益相反行為に当たるとされています。たとえ、借入れが、未成年者である子の養育費や教育費に当てるためのものであったとしても、特別代理人の選任が必要とされています。

 

特別代理人選任申立手続

(1)管轄裁判所
未成年者(被後見人)の住所地を管轄する家庭裁判所

 

(2)申立権者
親権者(後見人)、利害関係人

 

(3)申立費用
@子1人につき収入印紙800円
A各家庭裁判所所定の郵便切手

 

(4)提出書類
・申立書
・添付資料
  未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  親権者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  特別代理人候補者の住民票の写し等、承諾書
  利益相反に関する書類(契約書案、遺産分割協議書案など)

 

(5)審理
利益相反性の有無および特別代理人としての適格性が審理の対象となります。

 

特別代理人の資格
法律上の欠格事由はありませんが、特別代理人候補者が未成年者である子の利益を保護するのに適任であるかどうか調査されます。

 

(6)審判
申立を認める場合には、特別代理人に選任された者に告知することによって、その効力を生じます。
申立を却下する場合には、その旨を申立人に告知することによりその効力を生じます。
選任、却下審判いずれも不服申し立ては認められていません。

 

特別代理人の権限
特別代理人は審判書の主文に記載された行為についてのみ代理権を有します。
選任審判書が特別代理人の権限を証する書面となります。

 

 

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