地役権の登記

地役権とは
地役権とは、民法で認められた土地に関する権利の一つで、設定契約で定めた目的に従って、自分の土地(要役地)の便益のために他人の土地(承役地)を利用することができる権利です。

 

要役地
自分の土地で、他人の土地を利用することによりその価値が増大する土地のことをいいます。

 

承役地
要役地所有者の利用に供される他人の土地のことをいいます。

地役権の目的

地役権の目的は、要役地の利用価値が客観的に増大するのであれば、特に制限はありません。
実際に多く見られるのが、通行することを目的とした通行地役権です。

 

例えば、他人の土地(承役地)を通行させてもらわないと公道にでることができない、または公道に出ることはできるが、より利便性の高い道路に出たい場合など、通行したい土地(承役地)の所有者と地役権設定契約を締結することにより通行目的の範囲内で、他人の土地を利用することができます。

 

そのほかに、他人の土地の地下に下水道を敷設することを目的とするもの、他人の土地の上空に送電線を敷くことを目的とするもの、眺望を妨げないようにある高さ以上の工作物等を建てないことを目的とするもの等があります。

 

要役地と承役地の関係

要役地と承役地は必ずしも隣接している必要はありません。

 

地役権は一筆の土地の一部を要役地とすることはできず、一筆(又は数筆)の土地全体を要役地とする必要があります。一筆の土地の一部を要役地としたいときは、分筆する必要があります。

 

それに対して、承役地は、一筆の土地の一部であっても差し支えありません。
一筆の土地の一部に地役権を設定したときは、その範囲が登記され、その範囲を明らかにした地役権図面が登記所に備え付けられます。

 

地役権設定契約で定めること

目的
要役地の利用価値が増大するのであれば、便益の種類に制限がありません。
通行、観望、日照確保、下水道の設置、送電線路の架設等

 

範囲
地役権は設定契約の定めるところにより、承役地の全部を目的とすることもその一部を目的とすることも出来ます。
地役権の範囲は登記事項であり、承役地の全部を目的とするときは、「全部」と登記され、その一部を目的とするときは、「東側何平方メートル」等と登記されます。

 

地代の定め
地代に関しては無償でも有償でもどちらでもよいとされています。
ただし、地代の定めは登記することができないので、あくまで契約当事者間でのみ有効であり、第三者に対しては地代の定めについて主張することができません。

 

存続期間の定め
設定契約で存続期間を定めることは可能とされていますが、存続期間は登記することができないので、存続期間を第三者に主張することはできません。

 

特約
地役権は要役地の所有権が移転すればそれに伴って当然移転しますし、要役地に抵当権等が設定されると抵当権の効力は地役権にも当然及ぶのを原則とします。

 

ただし、「設定契約で要役地の所有権が移転すれば地役権は消滅する。要役地に抵当権が設定されてもその効力は地役権には及ばない旨」の特約をすることができます。

 

この特約は登記することができますので、登記することにより第三者に特約を主張することができます。

 

 

地役権と登記

通行を目的とする地役権を設定している承役地の所有者が、承役地を第三者に譲渡した場合、地役権者は承役地の譲受人(新所有者)に対して今まで通り、承役地を通行させてもらうことはできるのでしょうか。

 

民法の規定によれば、地役権等の物権は、当事者およびその一般承継人(相続人)以外の第三者に対しては、登記をしなければ、権利を主張することができないとされています。

 

つまり、地役権の登記をしておけば、承役地の所有者が代わったとしても、今まで通り通行することができるが、地役権の登記をしていないと今まで通り通行することができないことになります。

 

以上が民法の原則ですが、地役権の登記がなくても承役地の新所有者に対して通行地役権を主張することができる場合があることを認めた最高裁判所の判例があることには注意を要します。

 

最高裁の判例を引用しておきます。

通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。(最判平10・2・13)

 

これには、現地確認により、誰が見ても要役地の所有者が承役地を通路として利用していることが明らかであれば、登記により地役権が公示されていなくても、承役地を取得しようとする者は、他人がその一部を通路として利用している土地であることがわかり、取得するに当り不測の損害を及ぼすことはないであろうということが前提にあります。

 

では、第三者に対して登記なくして地役権を主張することができる場合、その第三者に対して地役権設定登記を請求することができるのでしょうか。

 

承役地の譲受人に地役権設定登記義務があるかが争点となった事案で、最高裁判所は次のような判断を下しました。

通行地役権の承役地の譲受人が地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない場合には、地役権者は、譲受人に対し、同権利に基づいて地役権設定登記手続を請求することができる。
(最判平10・12・18)

地役権の負担を否定できないのであれば、地役権設定登記の義務を認めたとしても不当な不利益にはならないし、逆に地役権の設定登記請求を認めないと地役権者がその権利を保全することができなくなることをその理由としています。

 

地役権設定登記手続

地役権設定登記は、要役地の所有者(地役権者)と承役地の所有者(地役権設定者)とが共同して、承役地の所在地を管轄する法務局に申請することにより行います。

 

なお、地役権の設定登記手続を認める判決があれば、地役権者は単独で地役権設定登記の申請をすることができます。

 

登記必要書類

共同申請の場合

登記原因証明情報(地役権設定契約書など)

 

登記識別情報又は登記済権利証

 

承役地所有者の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)

 

地役権図面
(承役地の一部を地役権の目的とする場合に必要)

 

地役権者の単独申請の場合(判決による登記)

地役権設定登記手続を命ずる給付判決書の正本及び確定証明書

 

地役権図面
(承役地の一部を地役権の目的とする場合に必要)

 

お問い合わせ

司法書士八木隆事務所は愛知県名古屋市で登記業務を中心に行っている司法書士事務所です。

 

登記手続に関するご相談、ご依頼は、下記の電話番号(052-848-8033)におかけいただくか、メールフォームによりお問い合わせください。

 

登記のご相談、登記費用のお見積りを無料でおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

地役権の設定登記手続サービスのご案内

地役権の設定登記手続のご案内
@司法書士にお支払していただく報酬 30,000円(税別)

 

Aサービス内容
・登記申請書の作成及び法務局への申請代理
・地役権設定契約書等の登記原因証明情報の作成
・登記完了後の不動産登記事項証明書の取得代行

 

B登記費用(実費)
・登録免許税=承役地の不動産1個につき1500円

 

・登記情報提供サービス利用料(不動産1個につき335円)
 ※不動産の権利関係を事前調査するために利用します。

 

・印鑑証明書等請求手数料

 

・郵送代(切手、レターパック等)

 

・登記事項証明書(登記簿謄本)請求手数料(不動産1個につき500円)
 ※登記完了後の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得してお渡しします。

 

登記名義人の登記簿上の住所と現在の住所が異なる場合は、登記名義人住所変更登記の申請が必要になります。この場合司法書士報酬を6,000円(税別)加算させていただきます。また、登記名義人住所変更登記の登録免許税は、不動産1個につき1000円です

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