相続登記未了の不動産に対する競売申立と代位よる相続登記

相続登記未了の不動産に対して競売を申立てる方法

相続登記未了の死亡者名義のままになっている不動産に設定されている抵当権を実行するためには、死亡者(被相続人)を当事者とすることはできないので、その相続人を当事者とする担保不動産競売を申立てます。

 

ただし、登記名義が死亡者(被相続人)のままでは、差押登記をすることができないので、その前提として対象不動産につき相続登記を行う必要があります。

 

相続登記は相続人の単独申請を原則としますが、相続登記について相続人の協力を得ることができない、又は担保不動産競売申立の事実を知られたくない場合などは、抵当権者が相続人に代位して相続登記を申請することができます。

 

代位の登記とは、自己の債権を保全するために債務者の登記申請権を債務者に代って債権者が行使することにより行われる登記のことをいいます。

 

相続登記未了の死亡者名義のままの不動産を強制競売の目的にする場合にも債権者が相続人に代位して相続登記を申請することができます。

 

代位による相続登記の流れ

相続登記を申請するためには、戸籍謄本等により相続人を確定させる必要があります。
また、相続人を明らかにした戸籍謄本等は相続登記の添付書類の一部となります。

 

@相続人調査(相続人の有無の確認)

死亡した登記名義人(被相続人)の相続人を明らかにするために戸籍謄本等を取り寄せ相続人を確定させます。
また、相続人の住所を調査・確認するために、相続人の戸籍の附票等を取り寄せます。

 

戸籍を取り寄せるには、戸籍の筆頭者と本籍地を特定して請求する必要があります。
強制競売の申し立てをおこなう者は戸籍法第10条の2の1号の規定により戸籍謄本等の交付を請求することができます。

戸籍法第10条の2 
前条第1項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
@ 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由

 

1・配偶者及び子(第一順位の相続人)の有無の確認
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本及び改製原戸籍を取り寄せ、配偶者及び子の有無を確認します。被相続人の死亡以前に子が死亡している場合には、その子の出生から死亡までの戸籍謄本等を取り寄せ、代襲相続人の有無を確認します。

 

2・直系尊属(第二順位の相続人)の有無の確認
子(その代襲相続人を含む)がいない又は相続放棄をしていることにより第一順位の相続人が存在しない場合は、直系尊属の有無を確認します。
直系尊属には、実父母だけではなく養父母も含みます。

 

3・兄弟姉妹(第三順位の相続人)の有無の確認
直系尊属が死亡している又は相続放棄をしていることにより、第二順位の相続人が存在しない場合には、被相続人の父及び母の出生から死亡までの戸籍謄本等を取り寄せ、被相続人の兄弟姉妹の有無を確認します。

 

被相続人の死亡以前に兄弟姉妹が死亡している場合には、その兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍謄本等を取り寄せ、代襲相続人(甥・姪)の有無を確認します。

 

4・相続人不存在の場合
兄弟姉妹(その代襲相続人を含む)がいない又は相続放棄をしていることにより第三順位の相続人が存在しない場合は、相続人不存在により当該不動産は法人とみなされます。

 

抵当権者は利害関係人として家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申立てることができます。

 

相続人不存在の場合の被相続人名義の不動産については、相続財産管理人が登記名義人表示変更登記を申請します。(被相続人名義から「亡○○相続財産名義」にその表示が変更されます。)
相続人不存在の場合の競売の申し立ては原則、登記名義人表示変更登記が経由された後に行うことになります。

 

A相続放棄・限定承認の有無の確認

また、競売申立の際には添付書類の一部として相続放棄又は限定承認の申述がなかったことの家庭裁判所の証明書(申述があった場合には、申述受理証明書)を提出する必要があります。

 

実務では熟慮期間経過前の競売申立は受理しないとされていますので注意を要します。

 

家庭裁判所の証明書は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄等の申述の有無を照会し、発行してもらいます。

 

相続放棄、限定承認の申述は相続人が自己のために相続があったことを知った日から3ヶ月以内に行わなければならない(熟慮期間)とされていますので、申述の有無の照会をする場合には、相続開始の日から3ヶ月を経過した日以後をめどに行うのがよいでしょう。

 

B担保不動産競売申立(強制競売申立)

相続人を当事者とする担保不動産競売(強制競売)を執行裁判所に申立てます。
この競売申立に併せて「競売申立受理証明申請」を行います。
この申請の際に「速やかに代位による相続登記を行い、登記完了後は、その登記事項証明書を提出する」旨の上申書を提出する必要があります。

 

申立てが受理されると「競売申立受理証明書」が交付されます。

 

C代位による相続登記の申請

抵当権者(債権者)は、相続人に代って相続登記を不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。

 

相続登記に必要な一般的な添付書類の他に、代位原因を証する情報として執行裁判所から交付を受けた「競売受理証明書」を提出します。

 

登記申請書には代位者の住所及び氏名又は名称並びに代位原因を記載する必要があります。
代位原因の表示は、『年月日設定の抵当権の実行による競売』の振り合いによるとされています。

 

強制競売の場合の代位原因の表示は債務名義の内容により『年月日消費貸借による強制執行』等の振り合いによります。

 

登記識別情報は、登記名義人となる申請人が自ら申請した場合に通知されますので、代位により相続登記を申請した場合には、登記識別情報は通知されません。

 

D競売開始決定

相続登記完了後に対象不動産の登記事項証明書を取得し執行裁判所に提出します。

 

執行裁判所は提出された登記事項証明書により相続登記が経由されたことを確認した後、担保不動産競売(強制競売)の開始を決定します。

 

開始決定がなされると裁判所書記官により差押登記の嘱託がなされます。

 

 

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