遺産分割による相続登記 | 愛知県の司法書士八木事務所

遺産分割と遺産分割協議書の作成 | 名古屋の司法書士八木事務所

遺産分割と遺産分割協議書の作成

被相続人が、遺言を残さずに死亡した場合、被相続人が残した遺産は共同相続人が法定相続分に応じて共有することになります。これを遺産共有といいます。

 

遺言書がある場合の相続登記はこちらをクリックしてください。
遺言による相続登記

 

この遺産共有を解消し、個々の具体的な財産を相続人の誰が取得するのかを決める話し合いを、遺産分割協議といいます。

 

遺産分割協議ができないとき、遺産分割協議がまとまらないときは、各相続人は家庭裁判所に遺産分割を請求することができます。(遺産分割調停・遺産分割審判)

 

相続人が1人の場合は、遺産分割協議が必要ないので、何ら手続きを経ることなく、被相続人が死亡したときに被相続人の全ての財産を相続することとなります。

 

遺産である不動産を遺産分割により相続した者は、被相続人名義から自己名義に変更するために管轄法務局に相続登記を申請します。遺言書がない場合の相続登記は、遺産分割協議書の添付が必要となります。

 

以下では遺産分割の方法及び遺産分割協議書作成について説明します。
【関連記事】会話形式で学ぶ相続登記(遺産分割協議)

 

 

遺産分割の方法

遺産分割の方法には以下の方法があります。

@現物分割
個々の相続財産を細分化せずに又は細分化して、具体的相続分に応じて特定の相続人の単独所有とする分割方法

 

A代償分割
特定の相続人が相続財産を取得し、他の相続人に対して一定の金銭等(代償財産)を支払う方法

 

B換価分割
相続財産を未分割のまま売却して、その売却代金を相続分に応じて各相続人に分配する方法

 

C共有分割
相続財産を、確定的に相続人の共有状態とする方法

 

このうちCの共有分割は@からBまでの分割方法で分割することがどうしてもできないな場合の最終手段であると考えてください。

 

遺産分割とは、本来、相続開始と同時に相続人の共有状態となった個々の遺産を、特定の相続人の単独所有とするための手続きであり、共有状態を継続するということは問題を先送りをしたことにほかなりません。

 

後日、この共有状態を解消するためには再度話し合いをするか、話し合いができない、又は話し合いがまとまらないときは共有物分割訴訟を提起することになります。

 

現物分割

相続財産が不動産のみの場合、相続分に応じて公平に分けようとすると現物分割の方法と代償分割の方法の組み合わせによる分割が多いかと思います。

 

また、一筆の土地を細分化(分筆)して、各相続人が分筆後の土地を取得する方法もあります。
ただし一筆の土地を分筆する場合には以下の点を注意してください。

 

・分筆の仕方によっては経済的価値を損ねてしまうことがある。
建築基準法の接道義務や、都市計画法の最低面積の規定などクリアーしていないと、建築許可が下りないことがあるので注意が必要です。
・土地を細分化するには分筆登記が必要である。

 

分筆登記の手順
・境界確認 
分筆登記をするためには、隣接地との境界を明らかにする必要があるので、測量を行い、隣接人立会いのもと、境界を確定し境界確認書を作成します。 

 

・境界票の設置
分筆する土地の境界に境界票を設置します。

 

・分筆登記の申請
分筆登記を申請するには地積測量図を作成しなければなりません。
分筆は登記をすることによってその効果が生じることになります。

 

個人で測量を行ったり、地積測量図を作成することは、かなり難しいので土地家屋調査士や測量会社に依頼することが一般的ですが、それなりの費用が(数十万円)がかかります。

 

相続財産に現金や預貯金がない場合には、遺産分割をするために必要な諸費用はポケットマネーから出す必要があります。

 

遺産分割協議書条項例

分筆登記前の分筆後の土地を遺産分割の対象財産とする場合

相続人○○は、○○市△町1丁目1番の土地のうち、予定地番1番1の土地を取得する。
相続人△△は、○○市△町1丁目1番の土地のうち、予定地番1番2の土地を取得する。

地積測量図を遺産分割協議書に添付します。

 

代償分割

不動産の評価額

代償金の額を算定するためにも評価額を決定することは必須です。
評価額を相続人間で合意できればその額によります。

評価額を合意するための参考資料
1 公示価格(通常取引における時価に近い価格)
  国土交通省ホームページ

 

2 都道府県地価調査標準価格(通常取引における時価に近い価格)
  国土交通省ホームページ

 

3 固定資産税評価額(公示価格の70%程度に設定)
  ・固定資産税を算定するための基準価格
  ・市町村ごとに公表
  ・市町村役場の資産税課等で証明書を取得できる。
  ・また毎年4月以降に送付される固定資産税納税通知書でも評価額を知ることができる。

 

4 路線価(公示価格の80%程度に設定)
 ・相続税や贈与税を算定するための基準価格
  国税庁ホームページ 路線価図

これらの公的な資料を参考に又はそのままの価格で合意するのが一般的です。
建物の評価額は3の固定資産税評価額を用いることが多いといわれています。

 

なお、相続人間で合意に至らない場合は、最終的には不動産鑑定士に鑑定してもらうことになるかと思われますが、それなりの鑑定費用がかかります。

 

代償金の支払い

通常、代償金の支払いと同時に遺産分割を成立させます。

 

代償金の支払いを猶予したり、分割払いにする内容で遺産分割を成立させる場合には、不払いというリスクを意識しなければなりません。

 

相手方の代償金を支払う資力に不安があれば支払猶予、分割払いを内容とする遺産分割の成立は避けるべきですが、これら支払い方法を内容とする遺産分割を成立させる場合には、後々トラブルになることを想定して、支払いを確保するための措置を講ずる必要があります。

 

遺産分割協議は親族間の話し合ということもあって、そういったことをあやふやにしてしまうことも多いかと思われますが、身内といえどもお金の問題はきちんとしておくこと(合意の書面化、リスク回避、軽減措置を講ずるなど)が重要です。

 

代償金不払いリスクを軽減するための措置

代償金支払い請求権を被担保債権とする抵当権を設定する方法
代償分割によって相続した不動産に抵当権を設定しておけば、代償金の支払いを怠った場合に優先的に代償金の弁済を受けることができます。抵当権を設定した不動産の価値が代償金額を上回れば代償金相当額を受け取れないリスクはかなり軽減されます。

 

ただし、抵当権の登記をするには登録免許税(債権額の0.4%)が、司法書士に依頼すれば、司法書士への支払い報酬が発生します。

 

遺産分割協議書を公正証書で作成する。
遺産分割協議書を公正証書で作成し、強制執行認諾条項を入れることによって、代償金の不払いがあった場合、代償金支払いの訴えを提起することなく、直ちに強制執行することができます。

 

ただし、相手方が強制執行の時点で差し押さえるべき財産をもっていなければ強制執行は功を奏しませんので代償金の支払いを受けることができないリスクはあります。

 

また、公正証書を作成するには目的物の価格に応じて公証人手数料がかかります。

 

代償金に利息をつける
直接、不払いのリスクを軽減できるわけではありませんが、分割払いの方法など選択する場合、代償金に利息をつけることも可能です。

 

 

代償分割の税金

代償金を支払う側
・相続税
取得した相続財産から支払った代償金相当額を控除した額が課税対象となる。

 

・登録免許税
相続登記をするには、固定資産税評価額の0.4%の登録免許税が課税される。

 

・譲渡所得税
取得した不動産を売却した場合、譲渡所得税が課税される。支払った代償金相当額を取得費として控除できないので注意

代償金を受け取った側
・相続税
受け取った代償金相当額が課税対象となる。
なお、代償金として受け取った金銭は贈与税は課税されない。

 

遺産分割協議書条項例

第○条
1 相続人○○は別紙遺産目録記載の不動産を取得する。
2 相続人○○は、相続人△△に対して前項の遺産取得の代償として金○○円を支払う。

 

 

換価分割

換価分割の流れ

 

相続開始遺産分割協議相続登記売買契約締結決済売買登記売却代金分配 

 

 

遺産分割協議書条項例その1

第○条
1 相続人○○および△△は別紙遺産目録記載の土地を各2分の1の割合で共有取得する。
2 相続人○○および△△は共同して、前項の土地を売却し、売却代金から不動産売買仲介手数料、所得税および住民税等、その他売却に要する一切の費用を控除した後の金員を、その共有持分の割合に応じて取得する。

 

換価分割による売却代金の分配は、相続登記の持分の割合に応じて分配します。

 

仮に登記した持分と異なる割合で売却代金を分配すると相続人間で贈与があったものとみなされ、贈与税が課税されるおそれがあります。

 

たとえば、売却代金をA3分の2、B3分の1の割合で分配するなら、相続登記の持分もA3分の2、B3分の1の割合で登記すべきです。

 

法定相続分で共同相続登記をする場合は、遺産分割協議書の添付は必要ありませんが、法定相続分と異なる持分で相続登記する場合には、遺産分割協議書が必要となります。

 

共同相続登記

不動産の換価分割を行う前提として,共同相続人名義の共同相続登記をする必要があります。

 

被相続人から買受人に直接、売買による所有権移転登記をすることはできません。相続開始後、売買が成立するまでの間の所有者は共同相続人ですので登記上も実体関係を反映影させることが求められているからです。

 

共同相続登記の注意点

共同相続登記は相続人の1人から相続人全員のために登記申請することができるのですが、この場合後日、売買による登記申請をする際に必要となる登記識別情報通知(以前の権利証と同じ役割を果たすもの)が、申請人となった相続人のみに通知され、申請人とならなかった相続人に対しては通知されないことになっています。

 

売買の登記をするには登記名義人となっている相続人全員の登記識別情報を提供する必要があり、これを提供できない場合には、申請代理人である司法書士等が作成する本人確認情報を提供する方法で代替するのが一般的です。

 

本人確認情報を作成してもらうためには別途司法書士報酬が発生することが通常ですので、余計に費用がかかってしまいます。

 

相続人全員が申請人になることができない特別の理由がない限り、相続人全員が申請人となって(代理人によって申請する場合は相続人全員が代理人に申請を委任する)相続登記を申請するのが良いと思います。

 

遺産分割協議書例その2

第○条 共同相続人全員は、別紙遺産目録記載の不動産を、以下の要領でこれを売却換価し、売却代金から相続登記登録免許税及び司法書士報酬、不動産仲介手数料、測量費用、建物解体が必要となる場合の解体費用、建物内に存する動産類の処分費用、印紙税、譲渡所得税、住民税、税務申告のための税理士報酬等、当該不動産の売却に関連して必要となる一切の費用を控除した金員を法定相続分に応じて分割することに合意する。

1 売却に関する一切の行為は相続人○○が代表しておこなう。
2 相続人○○は自己の単独名義で相続による所有権移転登記をおこなう。

 

上記の遺産分割協議書例は相続人の数が非常に多いときなど、相続人代表者を定めて、その者に売却権限の一切を委任する場合の協議例です。

 

単独名義の相続登記

上記、遺産分割協議書に基づいて、相続人代表者名義の相続登記の申請した場合、その登記は受理されます。(ただし、管轄法務局により対応が異なることがありますので、管轄法務局に事前確認してください。)

 

上記相続登記を経由した後に、売却代金をその他の相続人に分配したことが税務上の贈与に該当し、贈与税が課税されるのではないかという疑問があります。

 

この点に関して国税庁のホームページで以下の通り回答しています。

国税庁ホームページ 質疑応答事例より
【照会要旨】
遺産分割の調停により換価分割をすることになりました。ところで、換価の都合上、共同相続人のうち1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、その後において、換価代金を分配することとしました。この場合、贈与税の課税が問題になりますか。
【回答要旨】
共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません

上記回答は、遺産分割調停に関する事例ではありますが、遺産分割協議の場合も同様の取扱であると考えられます。

 

贈与税が課税されないための注意点

・相続人のうちの1人が相続不動産を単独名義にするのはあくまでも換価分割のための便宜上のたのものであることを遺産分割協議書に明記すること

 

・遺産分割協議で定めた分配割合に基づいて実際に売却代金を分配することです。

これらの要件を満たさないと贈与税を課税されるリスクがあるので注意が必要です。

 

ただし、国税庁の質疑応答事例はあくまでも一般的なケースを想定して回答したものであり、個別の案件によっては、課税される可能性はありますので、課税される可能性がある場合には、税務署に事前に相談したほうが良いでしょう。

 

換価分割の税金

相続税
各相続人が取得した共有持分の価格(相続税評価額)が課税対象となります。

 

登録免許税
相続登記をするには、固定資産税評価額の0.4%の登録免許税が課税されます。

 

譲渡所得税
売却によって譲渡益が生じた場合、各相続人に課税されます。

 

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書の作成に関して特に決まった方式があるわけではないが、一般的には次のような事項を記載します。

遺産分割協議書

 

被相続人法務一郎(本籍地 名古屋市東区○○一丁目2番地3)は、平成28年10月10日に死亡したので、共同相続人である法務桃子、法務太郎、法務梅子は被相続人の遺産について、以下のとおり遺産分割協議をした。(被相続人の氏名・本籍地・死亡年月日を戸籍の記載どおり記載します。)

 

1、相続人法務太郎は次の不動産を取得する。
         記
名古屋市東区○○一丁目2番3
宅地 165.43平方メートル

 

名古屋市東区○○一丁目2番地3
家屋番号2番3 居宅                  
木造瓦葺2階建 1階 83.21平方メートル  2階 75.43平方メートル    

 

(取得する不動産の記載は登記事項証明書の記載のとおり記載します。)

 

2、相続人法務桃子および法務梅子は次の預金を各2分の1の割合で取得する。
            記
四菱銀行尾張支店 口座番号123456789

 

3、1及び2に記載した遺産以外のその他の遺産は、相続人法務太郎が取得する。
4、本協議成立日に判明していない被相続人の遺産が発見されたときは、その財産の分配は相続人全員の協議によりこれを定める。

 

以上の協議を証するため、この協議書を3通作成し、各自1通ずつ所持する。

 

平成○○年○月○日

 

名古屋市東区○○一丁目2番地3
法務桃子 印          
名古屋市東区○○一丁目2番地3
法務太郎 印               
名古屋市東区○○一丁目2番地3        
法務梅子 印
相続人の氏名・住所は印鑑証明書の記載とおり記載します。氏名・住所は記名でもかまいませんが、署名するほうが望ましいです。押印は実印で押印します。

 

 

相続登記のご依頼をお考えの方

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又、ご自身で相続登記の申請をお考えの方は
相続登記を自分でやってみるページを参考にしてみてください。

 

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