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生命保険金と相続

生命保険金と相続

CASE1
保険契約者兼被保険者 夫A
保険金受取人 妻B

夫Aの死亡によって妻Bが取得した保険金支払請求権は、相続財産には該当しません。
被保険者が死亡の時は被保険者の相続人を保険金受取人にする旨を特にその氏名を表示して契約した場合には、被保険者が死亡すると同時に保険金請求権は相続人の固有財産に属する。
(大審院昭和11・5・13判決)

 

CASE2
保険契約者兼被保険者 夫A
保険金受取人 相続人
Aの相続人 妻B、子C及びD

保険事故発生時の被保険者の相続人が保険金請求権を取得することになります。
上記のケースではB、C、およびDが保険金請求権を取得します。

 

1 養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されたときは、特段の事情のないかぎり、右契約は、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したいわゆる「他人のための保険契約」と解するのが相当である。
2 前項の場合には、当該保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に、右相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産より離脱しているものと解すべきである。

 

保険金請求権の取得割合
1法定相続分割合説
法定相続分に応じて相続人が分割取得する。
上記ケースでは、妻Bが4分の2、子CおよびDが各4分の1の割合で取得する。

 

2均等割合説
相続人の頭数で均等に分割取得する。
上記ケースでは、妻B、子CおよびDが各3分の1の割合で取得する。
下級審の判断も@法定相続分割合説と均等割合説に分かれていましたが、最高裁は法定相続分割合説を採用しました。

 

保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は、特段の事情のない限り、右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ、各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になる。
(最高裁平成6・7・18判決)

 

CASE3

保険契約者兼被保険者 夫A
保険金受取人 妻B
Bの相続人 子C及びD
夫Aより先に保険金受取人妻Bが死亡したが、保険契約者である夫Aは保険受取人を変更することなく死亡した。

1 商法六七六条二項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」とは、保険契約者によって保険金受取人として指定された者の法定相続人又は順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に生存する者をいう。

 

2 生命保険の指定受取人の法定相続人と順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合には、各保険金受取人の権利の割合は、民法四二七条の規定の適用により、平等の割合になる。
(最高裁平成5・9・7判決)

 

保険金受取人の相続人は夫A、子CおよびDですが、被保険者Aの死亡時に生存するBの法定相続人は、子CおよびDですので、子CおよびDが平等の割合(各2分の1)で分割取得することになります。

 

相続放棄をした場合、保険金請求権はどうなるのか

相続人は自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすることによって、相続を放棄することができます。

 

相続放棄の申述が受理されると、その相続に関してはじめから相続人でなかったものとみなされます。

 

相続放棄によって、一切の相続財産(積極財産および消極財産)を取得できないことになります。では、被保険者である被相続人の死亡によって取得した生命保険金請求権はどうなるのでしょうか。

 

生命保険金請求権は保険金受取人の固有財産であって、相続財産を構成するものではないとされていますので、相続放棄をしたとしても生命保険金請求権を失うことはありません。

 

特別受益と保険金請求権

共同相続人中に、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、これを特別受益として、相続開始時の相続財産の価額に特別受益に当たる贈与の価額を加えたものを相続財産のみなして、具体的な相続分の計算をすることをいいます。

 

死亡保険金の支払いを受けたことが、特別受益にあたるとすると、死亡保険金を加えたものを相続財産として遺産分割することになります。

 

最高裁判所の見解
被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。(最高裁平成16・10・29決定)

 

原則 死亡保険金の支払いを受けたことは、特別受益にはあたらない。 

 

例外 死亡保険金を特別受益として相続財産に加えないと、保険金を受け取った相続人とその他の相続人との間に著しい不公平が生じる特段の事情があるときは、死亡保険金の支払いを受けたことは、特別受益にあたる。

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