相続の単純承認

相続の単純承認とは
被相続人の財産に属した権利義務を全面的に承継することを承認することである。
単純承認をすると被相続人が残した借金などの債務の全てを相続人において弁済しなければならず、相続債権者は、相続人の固有財産に対しても強制執行することができます。

 

単純承認の方式
戸籍上の届出や家庭裁判所への申述等は要求されておらず、作為・不作為などの何らかの形で単純承認するという意思が表示されれば足りるとされています。

 

単純承認の効果
単純承認をすると以後、当該相続に関して熟慮期間(自己のために相続が開始したことを知った時から3ヶ月)経過前であったとしても、相続放棄又は限定承認をすることができなくなります。

 

単純承認の擬制

以下に該当する場合には、相続人は単純承認をしたものとみなされます。

 

@相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき

単純承認したものとみなされる処分

・相続不動産の売買
・経済的価値の高い動産(美術品・着物など)の売却
・相続債権を取り立てて、収受領得する行為
・遺産分割協議
・相続した株式に係る株主権の行使

 

相続財産の処分には事実行為も含まれます。
・相続財産を故意に破壊・毀損した場合など

 

単純承認をしたとみなされない処分

・保存行為および短期賃貸借契約

保存行為

相続家屋の修繕(大修繕は除く)
相続債権の時効中断行為等

 

短期賃貸借

山林      10年を超えない賃貸借
山林以外の土地 5年を超えない賃貸借
建物      3年を超えない賃貸借
動産      6ヶ月を超えない賃貸借

 

・軽微な慣習上の形見分け、葬儀費用の支出

 

単純承認とみなされる相続財産の処分は、被相続人の死亡の事実を知った後か、死亡を確実に予想しながら行った処分に限られます。(最高裁昭和42・4・27判決)

 

共同相続人が単純承認をしたものとみなされる処分をした場合の限定承認の可否
相続人の1人が単純承認をしたものとみなされる処分をしたため、限定承認をすることができなくなった場合、他の相続人が限定承認をすることができるかどうかですが、限定承認は相続人全員でしなければならないとされているので、相続人の中に、限定承認をすることができない者がいる場合は、もはや相続人全員で限定承認をすることができないので、他の相続人も限定承認をすることができないというのが通説的見解となっています。

 

 

A熟慮期間の徒過

熟慮期間(自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月)内に相続放棄又は限定承認の申述をしなかった場合、熟慮期間の経過によって単純承認をしたものとみなされます。

 

B背信行為による単純承認

相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときは、単純承認をしたものとみなされます。

「隠匿」とは
相続財産の存在を容易には分からなくしてしまう行為
「私に消費する」とは
相続債権者が不利益になることを認識しながら相続財産を消費する行為
「悪意の不記載」とは
相続債権者を詐害しようとする財産隠匿の意思をもって財産目録に記載しないこと

 

ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、単純承認は擬制されません。

 

 

 

 

 

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