無断欠勤により出社しなくなった従業員の給料の支払い方法

無断欠勤により出社しなくなった従業員の給料の支払い方法

無断欠勤により出社しなくなった従業員の給料の支払い方法

当社のある従業員ですが、無断欠勤が続いており、連絡も取ることができず行方不明の状況です。
いままで勤務した分の給料を支払いたいと思うのですが、どうのようにすればいいのでしょうか。

 

無断欠勤等により突然出社しなくなった従業員の給料の支払いについて

無断欠勤等により出社しなくなったとしても既に発生している勤務した分の給料は当然支払わなければなりません。

 

給料は、直接従業員に現金(通貨)で支払うのを原則とします。

 

ただし、個々の従業員との間で、本人名義の口座に振込む方法により給料を支払うことについて合意した場合は、口座振込みの方法により支払うことができます。

 

給料の支払場所については、従業員との間で特段の合意がなければ、事業所(会社)が支払場所となります。

 

会社に留保しておく方法
よって、会社としては、出社しなくなった従業員が事業所(会社)に給料の受け取りに来たときに、いつでも支払える準備をしておけば問題ありません。

 

また、このような取立債務(債権者(従業員)が債務者(会社)のところに出向いて支払いを受ける債務)は、支払日が過ぎたとしても従業員が給料を受け取りに来るまでは、履行遅滞にはならないと解されています。

 

給料等の賃金債権の時効は2年です。
従業員が給料支払日から2年が経過しても給料を受け取りに来なければ、時効により支払い義務は消滅します。

 

従業員の本人名義の口座に振込む方法
なお、給料の支払いを本人名義の口座振込みの方法により行っている場合は、その口座に振込むべきでしょう。

 

給料の支払いについて従業員との間で口座振込みの方法で支払うと合意している以上、決められた方法で支払うことが債務の本旨に従った履行(支払い)といえるからです。

 

給料を従業員名義の口座に振り込まず、会社に留保した場合、後日従業員との間でトラブルになることも考えられます。

 

従業員の配偶者が受け取りに来た場合
従業員の配偶者が未払いの給料を受け取りに来た場合に、そのまま支払っても問題はないのでしょうか。

 

通常の夫婦関係にあれば、配偶者は従業員の使者として、その支払いは有効であると解されていますが、今回のケースのように従業員とまったく連絡を取ることがでず、行方不明であれば、配偶者を使者とみなすことは困難ではないでしょうか。

 

配偶者が使者であるとみなされない場合、その者に従業員の給料を支払ったとしても有効な支払いにはなりません。

 

後日、従業員からその支払いを求められた場合、すでに配偶者に支払ったことを理由にして、その支払いを拒絶することはできません。

 

弁済供託する方法

口座振込による支払いの場合、会社は従業員が指定した本人名義の口座に給料全額を振込めば、支払い債務は消滅します。仮に、その口座が差し押さえられて、現実には給料を受け取ることができなかったとしても、それは従業員の問題であり、会社の関知することではありません。

 

現金で支払う場合は、従業員が受け取りに来るまでは、会社は給料支払い債務を負担し続けることになります。

 

この支払い債務を免れたい場合は、従業員の給料を供託所に供託する方法があります。
有効な供託をおこなうことにより、会社が従業員に対して負う給料支払い債務が消滅することになります。

 

弁済供託を行うためには供託原因があることが必要になります。

 

供託原因
債務者が債務の本旨に従って弁済の提供を行ったが、
@債権者が受領を拒否した場合(受領拒絶)
A債権者が不在、住所不明等で受領することができない場合(受領不能)
B債務者の過失なくして債権者が誰であるかを確知することができない場合(債権者不確知)
のいずれかの要件に該当する必要があります。

 

債務者は、弁済供託を行う前提として、債務の本旨に従った現実の提供を行うことを原則としますが、本ケースのように債務の履行(給料の支払い)について債権者(従業員)の行為(会社に赴いて給料を受け取る)を必要とするような場合には、債務者(会社)は、弁済(給料支払い)の準備をしたことを債権者(従業員)に通知してその受領を催告すればよいことになっています。

 

しかしながら、本ケースのように債権者(従業員)と連絡が取れず行方不明のような場合まで債権者に対して催告を行うことは要求されていませんので、従業員と連絡が取れない場合は、従業員に対して給料を受領するよう催告することなく、受領不能を原因として債務の履行地である会社所在地の供託所に従業員の給料を供託することができます。

 

 

ブログ執筆者

○司法書士 八木 隆
○名古屋市瑞穂区白砂町二丁目9番地 瑞穂ハイツ403
○TEL 052-848-8033

 

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