内縁関係解消時の財産分与請求

内縁関係の解消時に内縁配偶者の一方が他方に対して、財産分与の請求をすることは可能なのでしょうか。

 

法律上の夫婦(婚姻届を提出している夫婦)が離婚した場合の財産関係の清算及び離婚後の扶養については、離婚した者の一方からの他方に対する財産分与請求を認めることにより解決を図っています。(民法768条1項)

 

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を、その名義に関係なく、実質的な共有財産とみなして離婚時に、その貢献度に応じて清算することをいいます。

 

元配偶者の離婚後の生活扶養としての給付、または有責配偶者からの慰謝料の支払いを財産分与として行う場合もあります。

 

では、内縁関係を解消したときに、民法768条1項の財産分与の規定を適用することはできるのでしょうか。

 

これに関して最高裁判所が適用の是非について直接の判断を下した判例はありませんが、死亡による内縁関係の解消時に民法768条1項の規定を類推適用して死亡した内縁配偶者の財産を他方が承継することができるかどうか争われた裁判で、「内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得る」としてあくまでも傍論ではありますが、その類推適用を肯定しています。(最決平12・3・10)

 

結論は、内縁関係を解消した場合、婚姻届を提出している夫婦が離婚した場合と同様、内縁配偶者の一方は他方に対して財産分与を請求することができることになります。

 

次に財産分与を行ったときの税金について説明します。
法律的には、内縁関係の解消時に内縁配偶者の一方が他方に対して財産分与請求をすることが認められるとしても、財産分与に関する税務について、法律上の夫婦が離婚したときの財産分与と同様に考えてもいいのでしょうか。

 

財産分与を行った場合の課税ですが、財産分与として財産の給付を受けた者には原則贈与税は課税されません。
財産分与を行った側は、金銭を給付したときは、課税の問題は特に生じることはないのですが、不動産を給付したときは、譲渡所得税の課税対象になります。

 

つまり、内縁関係の解消時の財産給付が税務上財産分与であると認められるかどうかにより贈与税の課税されるかどうかが異なってきます。

 

これに関して税務署はどのような対応をしているのでしょうか。

 

内縁関係であっても、婚姻届を提出していないだけで、夫婦共同生活関係が認められれば、税務署は法律婚の解消の場合と同様に取り扱っているようです。

 

ただし、単なる愛人関係の解消や同棲解消は、同様の扱いは受けることはできないでしょう。

 

ただし、課税されるかどうかはあくまでも税務署の事実認定の問題なりますので、内縁関係解消時の財産分与として金銭等を給付したつもりでも、税務署から財産分与ではなく贈与であるとの指摘を受ければ贈与税を納めなければなりません。

 

内縁関係の解消による財産分与を行うときは、税務署からこのような指摘を受けた場合に備えて、財産の給付が贈与によるものではなく財産分与であることを立証できる資料を準備しておくことが重要になります。

 

ただし、法律上の夫婦であれば、婚姻関係にあった事実と離婚した事実は、戸籍により明らかになりますが、内縁関係にあった事実と内縁関係を解消した事実を証明することは大変になります。

 

内縁関係解消による財産分与であること立証を容易にする方法として、家庭裁判所の内縁関係調整調停を申し立てる方法を紹介します。

 

内縁関係調整調停とは、内縁関係の解消について当事者間の話合いがまとまらない場合や話合いができない場合、又は内縁関係を解消するかどうかで迷っている場合に利用できる家庭裁判所内で行われる手続です。

 

調停手続では、内縁関係の解消のみではなく、財産分与や慰謝料についてどうするかといった財産に関する問題も一緒に話し合うことができます。

 

調停で内縁関係の解消と同時に財産分与についても合意することができれば、その内容が記載された調停調書が作成されますので、この調書は、財産給付が贈与ではなく財産分与として行ったものであることを立証する有力な資料になります。

 

内縁関係の解消時に財産給付は税務上、財産分与ではなく贈与と認定されてしまうリスクがあることを注意して行うようにしてください。

 

 

ブログ執筆者

○司法書士 八木 隆
○名古屋市瑞穂区白砂町二丁目9番地 瑞穂ハイツ403
○TEL 052-848-8033

 

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