空き家の相続

今回のテーマは『空き家の相続』です。

 

空き家の相続は、実家で一人暮らしをしていた親が亡くなれば、誰もが直面する問題です。

 

本来なら、生前中に実家をどうするかを親を含めて相続人全員で話し合っておくことが望ましいのですが、実家をどうするか何ら話し合うことなく相続が開始してしまうケースは非常に多いです。

 

今回は空き家となった実家を相続した場合、相続人はどのような責任を負うのかについて説明させていただきます。

相続した空き家を放置するとどうなるのか

親が死亡したことにより、住んでいた建物が空き家となった場合でも、相続人が定期的に換気をおこなったり、除草したりするなど空き家を適切に管理していれば大きな問題は生じません。(最終的に、空き家をどうするのかについては、相続人全員で話し合う必要がありますが)

 

問題が生じるのは、空き家となった建物を放置してしまう場合です。

 

平成26年11月17日に成立した『空家等対策の推進に関する特別措置法』(以下「特措法」)においては、建築物又はこれに付属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが状態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する者を含む。)を「空家等」と定義しています。

 

概ね一年以上に渡って使用されていない建物は特措法上の「空家等」に該当するとされています。

 

また、自治体は「空家等」の実態調査を行い、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる場合には、「空家等」を「特定空家等」に認定します。

 

「空家等」が「特定空家等」に認定されると、自治体は当該空家の立ち入り調査を行ったり、所有者(その相続人)に対して適切な管理・改善を行うように助言や指導を行うことができます。

 

自治体の助言・指導に従わず、一向に改善されない場合は、勧告がなされます。
猶予期限を過ぎても勧告に従わないと、一定の措置を講じるように命令がなされます。この命令は最後通告です。
この命令にも従わないと、自治体が強制的に「特定空家等」の危険な部分を除却したり、修繕を行ったりします。
これを代執行と呼んでいます。除却、解体等に要した費用は、後から徴収されます。

 

このように、空き家が特措法上の「特定家等」に認定されると、空き家問題改善のために法律に基づく自治体の積極的な介入があることを知っておいてください。

 

固定資産税が6倍に跳ね上がるのは本当?

『空き家を放置すると敷地の固定資産税が6倍に!』

 

これは、わりと報道で取り上げられていたのでご存じの方も多いのではないでしょうか。
ただ、空き家が立っている敷地の固定資産税がすべて跳ね上がるわけではなく、空き家が特措法上の特定空家等に認定され且つ先ほど述べた自治体の勧告を受けた場合に、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり固定資産税が上がることになります。

 

空き家であっても、適切に管理を行っておれば、固定資産税が跳ね上がることはありません。

 

ここでは、固定資産税の住宅用地特例を簡単に説明しておきます。
固定資産税は不動産等の所在地の自治体が課税する市町村税でその額は、課税標準額に自治体が定めた税率(1.4%としている自治体が多いです。)を乗じて計算します。

 

住宅を所有することによる負担を軽減するために、住宅が建っている敷地のうち200uまではその課税標準額を6分の1に、200uを超える部分(建物の床面積の10倍に相当する面積が上限)の課税標準額は3分の1とする特例があります。
これが固定資産税の住宅用地特例です。

 

たとえば、住宅の敷地が250uで1uあたりの評価額が9万円の場合、その敷地の固定資産税は

 

((200u×9万円)×1/6+(50u×9万円)×1/3)×1.4%=6万3千円

 

住宅用地特例が適用されない場合の固定資産税は31万5千円です。

 

この特例により、住宅用地の固定資産税は、非住宅地と比べておよそ6分の1になっています。

 

「特定空家等」の認定を受け、自治体から勧告を受けると、住宅用地特例の適用対象外となり非住宅地扱いとなることで固定資産税が今までより高くなるという訳です。

 

6倍に上がるというのは、およそ6倍に上がるということで、実際は、固定資産税の計算には複雑で単純に6倍に増加するわけではありません。

 

相続開始後の固定資産税は相続人が連帯して納付する義務を負います。
相続した空き家を放置して、それが「特定空家等」に該当してしまうと、固定資産税の負担が大変重くなってしまいますので、空き家を相続したときは、早めに対策を講じる必要があります。

 

相続放棄で空き家の放棄

空き家と言っても十分な資産価値があれば、売却することも比較的容易でしょうが、相当老朽化しており、立地も良くない空き家ですと売りたくても買い手がつかず管理を継続しなければなりません。

 

今まで述べたように、空き家の管理を継続するにはそれなりの費用がかかり大きな負担となります。

 

「だったら相続放棄したらいいじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

 

しかし、そう簡単にはいかないのです。

 

民法にこんな条文があります。
「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」(940条1項)

 

つまり、相続放棄したとしても、新たに相続人になった者に引き継ぐまでは空き家の管理を継続しなければならないと言うことです。

 

放棄したいような空き家であれば、他の相続人も引き継ぎたくはないでしょうから、相続放棄したとしても空き家に関して親族間でトラブルになる可能性は十分あります。

 

相続人全員が放棄すると最終的には裁判所が選任した相続財産管理人が管理することになるのですが、選任の申し立てをするには、案件にもよりますが、通常50万円から100万円ほど予納金の納付が求められます。

 

この予納金の負担がネックになって、相続財産管理人の選任を申し立てずにそのまま空き家を放置するケースも見られます。

 

ちなみに、相続放棄はすべての相続財産の権利を放棄すると言うことで、空き家のみを放棄することはできないのであしからず

 

空き家は相続人にとってはとても厄介な存在であると同時に大変思い入れのある存在でもあります。
それ故に、処分することに躊躇してしまい、そのまま放置していることもあります。

 

空き家問題は、子や孫の代まで先延ばしにすることなく、自分たちの代で決着をつけるとが大事ではないでしょうか。

 

ご覧いただきましてありがとうございました。

 

ブログ執筆者

○司法書士 八木 隆
○名古屋市瑞穂区白砂町二丁目9番地 瑞穂ハイツ403
○TEL 052-848-8033

 

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