はじめての人のための不動産売買契約書|名古屋の司法書士ブログ

はじめての人のための不動産売買契約書|名古屋の司法書士ブログ

はじめての人のための不動産売買契約書

今回のテーマは『はじめての人のための不動産売買契約書』ということで、はじめて不動産を購入する人が売買契約書に書かれていることを理解できるようになるべくわかりやすく説明してみようと思います。

 

親族間で売買する場合などは別として、不動産売買契約を締結すると必ず不動産売買契約書を作成し、売主・買主双方が署名押印します。

 

「契約書に判子を押すとき緊張しました。」とおっしゃる方結構いますよね。
これは、不動産売買は大きな取引であることを認識していることに他ならないのですが、それにもかかわらず契約書に書かれていることは、よくわからないとおっしゃる方が多いのも事実です。

 

もっとも、売買契約書には難しい法律用語が多く、初めて不動産取引する方にとってはその内容を正しく理解することが難しいかもしれません。

 

契約書の重要性

しかしながら、後日不動産取引に関して紛争が生じたときは、売買契約書に記載された条項が重要な資料となります。その契約書に署名・押印している以上、「契約書にそんなことが書かれていることを知らなかった」とか、「契約内容を理解できなかった」等主張することは通常認められません。

 

それ故に、売買契約を締結するときは、契約内容を十分理解したうえで、契約書に署名・押印することが大事になります。

 

不動産業者(宅地建物取引業者)の仲介で不動産を購入する場合は、不動産業者は、宅地建物取引士をもって不動産取引に関する重要事項を説明させなければいけないことになっていますが、契約書については説明義務は課されていません。

 

もっと実際の取引において、売買契約書について説明をいっさいしない不動産業者はいないと思いますが、説明が不十分だったりすることはありえます。

 

不動産取引は高額な取引であり、後日紛争が生じたときは、その損害も大きなものになります。
後々、思いもよらないリスクに直面しないように、売買契約するにあたって疑問や不安を残さないように、わからないことがあれば、どんなことでも質問し説明を求めることが大切です。
自分の権利は自分で守る姿勢も必要だと思います。

 

 

不動産売買契約書の内容を理解しよう

以下では、不動産売買契約書の各条項をなるべくわかりやすく説明したいと思います。
最初に不動産売買契約書の条文を1条づつ掲げ、その後に条文の説明をさせもらいます。

 

売買の目的物及び売買代金

第1条 売主は、標記の物件(A)(以下本物件という)を標記の代金(B1)をもって買主に売渡し、買主はこれを買受けた。

 

民法では、売買契約は売主がその目的物の所有権を買主に移転することを約し、買主がその代金を売主に支払うことを約することによってその効力を生じると定めています。(民法555条)

 

本条により売主と買主とのあいだで、不動産売買契約が成立したことを明らかにしています。

 

売買の目的不動産は通常登記記録の表題部の内容を記載することにより特定します。
土地であれば、所在、地番、地目及び地積により、建物であれば、所在地、家屋番号、種類、構造及び床面積を記載することで特定します。

 

マンションであれば、一棟の建物の表示(所在地・建物の名称)、専有部分の建物の表示(家屋番号・建物の名称・種類・構造・床面積)及び敷地権の表示を記載することにより特定します。

 

手付

第2条 買主は、売主に手付として、この契約締結と同時に標記の金額(B2)を支払う。
2 手付金は、残代金支払いのときに、売買代金に一部に充当する。

 

手付金の額
不動産業者が売主になる場合の手付金の額は、売買代金の20%を超えることができない制限(宅建業法39条1項)はありますが、それ以外手付金の額に関しては特に決まりはありません。
一般的には売買代金の5%〜10%程度又は定額(数十万円)の手付金の授受が行われています。

 

手付金の分割払い・後払いの禁止
手付金は売買契約と同時に支払わなければなりません。
不動産業者が手付金の後払いや、分割払いを条件に売買契約を締結をさせることは、手付について信用を供与することにより契約の締結を誘引する行為として宅建業法で禁止されています(宅建業法47条3号)。

 

これは、手付金すら用意できない状況で不動産売買契約を締結し、後日トラブルになることを未然に防止する趣旨です。

 

測量図の引渡し及び境界の明示

第3条 売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、現地において隣地との境界を明示する。
2 売主は、その責任と負担において標記の土地(C)について実測図を引渡しのときまでに買主に交付する。

 

本条は、売主の責任で、売買物件の引き渡し時までに売買物件と隣接地との境界線を明らかにし、その境界線等を明らかにした測量図の作成及び買主への交付を義務づけたものです。

 

隣接地との境界が不明な土地は、その利用上、トラブルが発生することが十分に予想されます。
特に、隣接地の境界等で争いになっている土地の購入には注意を要します。このような土地は確実にトラブルが解消した後でなければ手を出すことはできません。

 

地積更正登記

第 4条 第3条第2項の実測の結果、実測の面積と登記簿記載の面積との間に相違が生じても、売主は、地積更正登記の責を負わないものとする。

 

地積更正登記とは、土地の実測面積と登記簿面積とが一致しないときに、表題部所有者又は所有権登記名義人の申請により、登記簿面積を実測面積に改める登記のことをいいます。

 

登記面積(地積)の記載方法
1 宅地又は鉱泉地の場合
1平方メートルの100分の1未満を切り捨てて小数点以下2位まで記録する
例)実測面積300.1234u→登記面積(地積)300.12u

 

2 宅地又は鉱泉地以外の土地の場合
2-1 土地の面積が10平方メートルを超える場合
1平方メートル未満の端数を切り捨てて記録
例) 実測面積300.1234u→登記面積(地積)300u

 

2-2 土地の面積が10平方メートル以下の場合
1平方メートルの100分の1未満を切り捨てて小数点以下2位まで記録する
例) 実測面積9.1234平方メートル→登記面積(地積)9.12u

 

本条では、実測面積と登記簿面積が一致しなくても、売主には地積更正登記をする義務はないので、登記簿面積を実測面積に改めたいときは、買主名義の所有権移転登記を行った後に、買主が地積更正登記を申請することになります。

 

売買代金の支払時期及びその方法

第5条 買主は、売主に売買代金を標記の期日(B2)、(B4)までに支払う。

 

手付金は契約締結時に、売買代金は物件引き渡し時に全額支払うのが一般的です。
買主の手付金返還請求権は、売主の売買代金支払請求権とのあいだで相殺され、売買代金の一部として充当されます。
支払い方法は、残代金の決済が金融機関の応接室で行われるときは、振り込みの方法で行うのが一般的です。

 

売買代金の清算

第6条 売買代金について実測清算を行う場合において、土地については、第3条第2項の実測図の面積と標記の面積(C)が異なる場合には、その異なる面積に1uあたり標記の単価(D)を乗じた額を残代金支払時に清算する。
2 売買代金について実測清算を行う場合においても、建物については実測による売買代金の清算は行わないものとする。

 

土地売買の取引方法
1 土地の登記簿面積で売買する方法

 

登記簿に記載されている面積をもとにして売買する方法で、後日測量の結果、実測面積と登記簿面積に差異が生じたとしても、売買代金の清算を行わない取引方法です。
この方法は、登記簿面積が十分に信用できる場合(即分譲地、区画整理地等)または、取引価格に比して測量費用が高額になる場合などの土地売買でおこなわれます。

 

2 契約成立の時点では、登記簿面積を基準として売買代金を定め、その後の測量結果により誤差が生じた場合には、決済時に売買代金を清算する取引方法

 

本条は、この取引方法を採用しています。
登記簿面積と実測面積に大きな差異が生じると、登記簿面積で売買する方法では、当事者間の負担に不均衡が生じるので一般的にはこの方法により不動産売買取引が行われます。

 

所有権の移転時期

第7条 本物件の所有権は、買主が売買代金の全額を支払い、売主がこれを受領したときに、売主から買主に移転する。

 

所有権の移転時期は原則売買契約締結時となりますが、取引の実情に応じて所有権移転時期に関する特約を設けるのが一般的です。

 

本条では買主が売買代金を全額支払ったときに所有権が買主に移転することになっています。買主はこれ以後、売買物件の所有者として当該物件を自由に利用・処分することができるようになります。

 

売買物件の引き渡し

第 8条 売主は、買主に本物件を売買代金全額の受領と同時に引渡す。

 

本条項は、民法の原則である、買主の売買代金の支払いと売主の売買物件の引き渡しを同時に行う同時履行を確認的に定めています。

 

所有権移転登記の申請

第9条 売主は、売買代金全額の受領と同時に、買主または買主が指定する者の名義にするために、本物件の所有権移転登記申請手続きをしなければならない。
2 所有権移転登記の申請手続きに要する費用は、買主の負担とする。

 

登記の効力
不動産取引の優劣は登記の先後によって決定されます。
売買により不動産を取得した者は、登記をしなければ当事者(売主及びその相続人)以外の第三者に対して所有権を取得したことを主張できませんので、決済終了後当日中に法務局に登記申請し登記名義を売主から買主へ変更します。
売主は、所有権移転登記手続に協力する義務があるので、登記済権利証(又は登記識別情報の提供)、印鑑証明書など所有権移転登記手続に必要は書類を買主に交付しなければなりません。

 

所有権移転登記手続は、買主側の不動産業者が指定する司法書士が担当することが一般的です。

 

登記費用の負担
法律の定めはないので、登記費用の負担に関しては、当事者の合意により決定することができますが、本条のように、買主が負担することが一般的です。
売主の住所変更登記や抵当権抹消登記が必要な場合は、その費用は売主が負担するのが一般的です。

 

第10条 売主は、付帯設備を、本物件引渡しと同時に買主に引渡す。
2 前項の付帯設備については、第19条(瑕疵担保責任)の規定は適用されないものとする。

 

負担の消除

第11条 売主は、本物件の所有権移転の時期までに、抵当権等の担保権および賃借権等の用益権その他買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を消除する。

 

抵当権等の登記がなされたままの不動産を購入すると、買主がその利用を制限されたり、所有権を失うことがあります。抵当権が実行されると裁判所により強制的に売却されてしまいその買受人に当該不動産を明け渡さなければなりません。このようなリスクのある不動産では買い手がつかないので、安心して購入してもらうために本条は、売主に一切の負担のない、きれいな状態で買主に売買物件を引き渡す義務を課しています。

 

売主へ住宅ローン等融資を行った金融機関の抵当権が設定されている場合は、その抵当権の登記を抹消した上で、買主に所有権移転登記することになります。売主は受領した売買代金を住宅ローン等融資の返済に充てます。金融機関は返済金の着金を確認すると、抵当権抹消登記に必要な書類を売主(又は代理人司法書士)に引き渡します。

 

その他買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担としては、差押(仮差押)の登記があります。
差押(仮差押)の登記がある場合は、売主は、差押(仮差押)債権者に被差し押え債権額全額を弁済し、差押(仮差押)を取下げてもらいます。

 

売主に税金の未納がある場合、国又は市町村の差押登記がなされていることもあります。

 

印紙代の負担

第12条 この契約書に貼付する収入印紙は、売主・買主が平等に負担するものとする。

 

印紙税とは
印紙税は、印紙税法で定められた課税文書を作成したときに課税される税金で、不動産の売買契約書は課税文書に該当します。
不動産売買契約書を作成したときは、当該文書に所定の収入印紙を貼付し、消印を行い納税をします。
同一内容の契約書を複数作成した場合(売主分と買主分)、作成した契約書すべてに所定の収入印紙を貼付する必要があります。

 

課税文書に所定額の印紙を貼付しないと、本来納付すべき印紙税額の3倍に相当する額の税金を支払うことになります。(本来の納付すべき印紙税と本来の印紙税額の2倍の過怠税の合計額)

 

公租・公課の負担

第13条 本物件に対して賦課される公租・公課は、引渡日の前日までの分を売主が、引渡日以降の分を買主が、それぞれ負担する。
2 公租・公課納付分担の起算日は1月1日(F)とする。
3 公租・公課の分担金の清算は、残代金支払時に行う。

固定資産税とは
固定資産税及び都市計画税は1月1日現在固定資産税課税台帳に登録されている所有者(名義人)に課税される地方税です。

 

固定資産税は、所有する不動産の所在地の市町村から毎年4月以降、納税通知書が郵送されてきます。
納税は納付書により年4回に分けて納付します。

 

固定資産税の日割り清算
例えば、平成30年5月1日売主Aから買主Bへの不動産の引き渡しがあったとします。平成30年度の固定資産税等の納税義務者は平成30年1月1日現在所有者であった売主Aであり、Bは納税義務を負いません。(Bは、平成31年度以降の固定資産税等を負担納付することになります。)

 

ただし、不動産取引の実務では、5月1日から12月31日までの固定資産税等の日割り分を買主Bが負担することとし、売買決済時に清算することにより、費用負担の公平を図っています。

 

起算日に関して「1月1日」とする例と、「4月1日」とする例とに分かれています。

 

第14条 本物件から生ずる収益の帰属および各種負担金の分担については、前条第1項および第3項を準用する。

 

手付解除

第15条 売主は、買主に受領済みの手付金の倍額を支払い、また買主は、売主に支払済みの手付金を放棄して、それぞれこの契約を解除することができる。
2  前項による解除は、相手方がこの契約の履行に着手したとき、または標記の期日(G)を経過したとき以降は、できないものとする。

 

本条項は解約手付けについて定めたものです。
売主は受け取った手付金を倍返しすることにより、買主は支払い済みの手付金の返還を受けることを放棄することにより、相手方が売買契約の履行に着手するまでは一方的に売買契約を解除することができます。(相手方の過失の有無を問いません。)

 

引き渡し前の滅失・毀損(危険負担)

第16条 本物件が引渡し以前に天災、地変等の不可抗力または当事者の責に帰すべからざる事由により、滅失または毀損したときは、別に定めのない場合には、その損害は売主の負担とする。この場合、買主が契約を締結した目的を達することができないときは、この契約を解除することができる。買主が、この契約を解除したときは、売主は、受領済みの金員を無利息で即時買主に返還しなければならない。

 

民法の規定では、物件の引渡し以前に天災、地変等の不可抗力によって、滅失または毀損したときは、その損害は買主の負担とされています。(民法534条1項)

 

これは、引き渡し前に放火されて建物が焼失したとしても、買主は建物の引き渡しを受けることができないにもかかわらず売買代金を全額支払う必要があると言うことです。

 

民法の原則では、買主は安心して不動産取引をすることができませんので、本条記載のように不可抗力によって物件を引き渡すことができなくなったときは、その損害は売主が負担することとし、買主は売買契約を解除することができる旨の民法とは異なる定めをしていることが一般的です。

 

契約違反による解除

第17条 売主または買主がこの契約に定める債務を履行しないとき、その相手方は、自己の債務の履行を提供し、かつ、相当の期間を定めて催告したうえ、この契約を解除することができる。

2 前項の契約解除に伴う損害賠償は、標記の違約金(H)によるものとする。
3 違約金の支払いは、次のとおり、遅滞なくこれを行う。
@売主の債務不履行により買主が解除したときは、売主は、受領済みの金員に違約金を付加して買主に支払う。
A買主の債務不履行により売主が解除したときは、売主は、受領済みの金員から違約金を控除した残額を無利息で買主に返還する。この場合において、違約金の額が支払済みの金員を上回るときは、買主は、売主にそ  の差額を支払うものとする。
4 買主が本物件の所有権移転登記を受け、または本物件の引渡しを受けているときは、前項の支払いを受けると引換えに、その登記の抹消登記手続き、または本物件の返還をしなければならない。

 

本条第1項は債務不履行による契約解除について定めた規定です。
たとえば、履行期限が到来したにもかかわらず、売主が物件を引き渡してくれない場合、買主は売買代金を準備して現実にその提供を行ったうえで、売主に相当期間を定めて物件を引き渡すように催告します。相当期間が経過しても売主が物件を引き渡してくれないときは、売買契約を解除することができます。

 

第2項は、損害賠償額の予定について定めた規定です。
たとえば売主が物件を引き渡してくれないので契約を解除した場合の損害賠償請求は、債務不履行の事実、損害発生の事実及び損害額を損害賠償を請求する側が立証しなければなりません。これは、損害賠償を請求する側に大きな負担となります。そこで民法はあらかじめ債務不履行があった場合に備えて、損害賠償額を予定することを認めています。これにより損害賠償を請求する側は、債務不履行の事実さえ証明すれば、損害の発生及びその額の立証を要せず、あらかじめ定めた額の賠償金を請求することができます。
本条項のように違約金の額を定めているときは、それは賠償額の予定と推定されますので、反証のない限り損害賠償額の予定を定めた規定と言うことになります。

 

第3項は違約金の支払い方法について、第4項は買主が所有権移転登記を受けている又は売買物件の引き渡しを受けている場合に、損害金の支払いと所有権抹消登記手続又は売買物件の返還が同時履行の関係にあることを定めています。

 

融資利用の場合(ローン特約)

第18条 買主は、この契約締結後速やかに、標記の融資(I)-1のために必要な書類を揃え、その申込手続きをしなければならない。
2  標記の融資解除期日(I)-1までに、前項の融資の全部または一部について承認を得られないとき、また、金融機関の審査中に標記の契約解除期日(I)-1が経過した場合には、本売買契約は自動的に解除となる。
3  前項によってこの契約が解除された場合、売主は、受領済みの金員を無利息で遅滞なく買主に返還しなければならない。同時に本物件の売買に媒介した宅地建物取引業者(以下媒介業者という)も受領済みの報酬をそれぞれ売主・買主に無利息にて返還しなければならない。 
4  買主自主ローンの場合、買主は、融資利用に必要な書類を標記(I)-2までに金融機関等に提出し、その提出書類の写しを売主に提出しなければならない。買主が必要な手続きをせず提出期限が経過し、売主が必要な催告をしたのち標記の契約解除期日(I)-1が過ぎた場合あるいは、故意に虚偽の証明書等を提出した結果融資の全部または一部について承認を得られなかった場合には、2項の規定は適用されないものとする。

 

買主が誠実に融資申請手続きを進めており、特段の落ち度がないにもかかわらず、金融機関から不動産購入資金の融資の承認を得られなかった場合に、売買契約を白紙に戻すことができる『融資特約条項』です。
不動産の購入資金の融資が下りなかった場合に、売買契約を履行しなければならないとすると、買主にとっては大変な負担となることが考えられるので、売買契約の解除を認めたものです。

 

本条項は、融資の承認が得られない場合に売買契約は当然解除となる解除条件型を規定していますが、買主に解除権の行使を認める解除権留保型の規定もあります。

 

瑕疵担保責任

第19条 買主は、標記(J)において瑕疵担保責任を負担する場合は、本物件に隠れた瑕疵があり、この契約を締結した目的が達せられない場合は契約の解除を、その他の場合は損害賠償の請求を、売主に対してすることができる。
2 建物については、買主は、売主に対して、前記の損害賠償に代え、またはこれとともに修補の請求をすることができる。
3 本条による解除または請求は、本物件の引渡後標記(J)の期間を経過したときはできないものとする。

 

『瑕疵』とは売買物件である土地や建物の欠陥のことであり、土地であれば、地盤沈下、有害物質による土壌汚染など、建物であれば、雨漏りやシロアリ被害などが考えられます。

 

行政上の制限が存在することを知らずに購入したため、当初の契約目的を達成することができない場合も隠れた瑕疵に該当することがあります。

 

『隠れたと瑕疵』とは、売買契約当時、買主が欠陥を認識しておらず、通常の注意をもってしても発見できなかったような欠陥のことを言います。

 

瑕疵担保責任の追及
売買契約後に隠れた瑕疵が見つかったときは、買主は契約目的を達成できないときに限り、売買契約を解除することができます。それ以外の場合は、損害賠償を請求することができます。
瑕疵担保責任は無過失責任とされていますので、売主に何ら落ち度がなかったとして、責任を追及することができます。

 

民法では、瑕疵担保責任の追及は、売買物件の欠陥を見つけたときから1年以内に行使しなければならない旨定めていますが、特約により、その期間を伸長することも短縮することも可能であり、瑕疵担保責任を全く負わない特約も有効です。本条は瑕疵担保責任の行使期間の起算点を売買物件の引き渡し時としており、民法の原則規定より売主に有利な特約となっています。(民法の規定ではその起算点は発見時とされており、瑕疵が発見されない限り、売主はいつまで経っても瑕疵担保責任の負担から免れることができません。)

 

売主が不動産業者(宅建業者)である場合の特約
その行使期間を売買物件の引き渡しの日から2年以上とする特約の場合を除き、買主にとって民法の規定より不利となる特約は無効とされています。特約が無効となった場合は民法の規定が適用されることになりますので、瑕疵を発見したときから1年以内であれば、瑕疵担保責任を追及することができます。

 

 

(諸規約の承継)
第20条 売主は、買主に対し、環境の維持または管理の必要上定められた規約等に基づく売主の権利義務を承継させ、買主はこれを承継する。

 

 (協議事項)
第21条 この契約に定めがない事項、またはこの契約条項に解釈上疑義を生じた事項については、民法その他関係法規および不動産取引の慣行に従い、売主および買主が、誠意をもって協議し、定めるものとする。

 

(訴訟管轄)
第22条 この契約に関する訴訟の管轄裁判所を本物件所在地の管轄裁判所と定めるものとする。

 

(特約条項)
第23条 下記特約条項のとおりとする。

どうでしたか。不動産売買契約書に書かれていることを多少なりともご理解いただけたでしょうか。
不動産業者を介して不動産売買を行うときの不動産売買契約書は、宅建協会が提供する標型書式を利用することがほとんどですので、契約内容は定型的なものになりますが、それは紛れもなく契約書であり、そこに書かれていることは、契約当事者を拘束します。自分はどんな権利を有し、どんな義務を負担するのか確認し、納得した上で、契約書にサインするようにしてくだい。

 

ご覧いただきましてありがとうございました。

 

ブログ執筆者

○司法書士 八木 隆
○名古屋市瑞穂区白砂町二丁目9番地 瑞穂ハイツ403
○TEL 052-848-8033

 

不動産登記手続、相続手続、会社法人登記手続、裁判所提出書類の作成業務等を行っています。
ご相談は無料ですので、安心してお問い合わせください。

 

このページの上に戻る

トップへ戻る