社会福祉法人等の公益法人への不動産の寄付|名古屋の司法書士ブログ

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社会福祉法人等の公益法人への不動産の寄付について

相続人がいない方がお亡くなりになると、残された遺産は、相続財産管理人による清算手続きを経て最終的には国庫に帰属することになります。

 

「国のものになってしまうぐらいなら、生前お世話になった社会福祉法人などの公益法人に寄付して、自己の財産を役立ててもらいたい」という相談を受けることがあります。

 

今回は社会福祉法人等の公益法人へ不動産を寄付する場合の留意点、特に課税関係の基本事項について、説明したいと思います。

 

 

不動産を寄付する方法

不動産を寄付するには、生前贈与契約を締結する方法と遺贈する方法があります。

 

贈与契約は、寄付する者と寄付を受ける者との合意により行うのに対し、遺贈は、寄付する者が寄付を受けさせたい者に自己の財産を無償で譲り渡す内容の遺言書を作成することにより行います。

 

遺贈は、相手方(遺贈を受けさせたい者)の承諾の有無を問わず、遺言者(寄付者)が死亡することによりその効力を生じますが、遺贈により寄付する場合は、生前に寄付を受け入れてもらえるかどうか確認をしておくべきでしょう。

 

特に不動産は、利用する予定がなければ、もらったとしてもありがた迷惑になることもありますし、遺贈は放棄することもできるので、放棄されることにより遺言者(寄付者)の思いが叶わないことになってしまいます。

 

不動産を寄付したときの登記手続

不動産の寄付を受けたときは、寄付者の名義から寄付を受けた者へ登記名義を変更する必要があります。

 

契約により寄付したときは、寄付者と社会福祉法人等寄付を受けた者が共同して、不動産の所在地を管轄する法務局に所有権移転登記を申請します。

 

遺贈により寄付したときは、寄付者の死亡後に、遺言執行者(遺言執行者がいないときは、遺言者の相続人全員)と社会福祉法人等寄付を受けた者が共同して、不動産の所在地を管轄する法務局に所有権移転登記を申請します。
遺贈による所有権移転登記を申請するには、家庭裁判所の検認済みの遺言書を提出しなければなりませんので、家庭裁判所の検認手続が不要な公正証書で遺言書を作成しておいた方が、迅速に登記手続を行うことができます。

 

登記を申請するには、登録免許税を納付する必要があります。
通常、寄付(贈与)または、遺贈を原因とする所有権移転登記の場合ですと、寄付する不動産の固定資産税評価額の2%に相当する額の登録免許税を納付する必要があります。

 

ただし、社会福祉法人等に対する寄付であり、一定の要件を満たす場合は、登録免許税を課税しない非課税の特例があります。
その要件は次の通りです。(登録免許税法4条2項 別表第3の10)

 

一 社会福祉法第二条第一項(定義)に規定する社会福祉事業の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該事業の用に供する土地の権利の取得登記(第三号に掲げる登記を除く。)

 

二 自己の設置運営する学校(学校教育法第一条(学校の範囲)に規定する幼稚園に限る。)の校舎等の所有権の取得登記又は当該校舎等の敷地、当該学校の運動場、実習用地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記

 

三 自己の設置運営する保育所若しくは家庭的保育事業等の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育の用に供する土地の権利の取得登記

 

四 自己の設置運営する認定こども園の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記

 

非課税特例の適用を受けるためには、上記いずれかの要件に該当することを証明した書類(非課税証明書)を提出する必要があります。

 

非課税証明書の申請に必要な書類は、所管する市町村により異なりますので、申請する際は事前に所管する市町村への確認が必要になります。

 

不動産を寄付したときの税金について

法人への寄付(贈与)または遺贈をおこなうときは、課税関係に留意する必要があります。

 

個人が社会福祉法人等へ不動産を贈与した場合について考えてみましょう。

 

まずは寄付を受けた社会福祉法人等の課税関係です。

 

社会福祉法人等が不動産の寄付を受けたとしても贈与税は課税されないのが原則です。
そもそも贈与税は個人間の贈与に対して課税されるものであり、法人を対象とはしていないのです。

 

ただし、社会福祉法人に対する寄付が、寄付者の親族やその他これらの者と特別の関係がある者の相続税又は贈与税を不当に減少する結果になると認められる場合には、その寄付を受けた社会福祉法人等を個人とみなして贈与税を課税するとされています。

 

一般の法人が不動産の寄付を受けると、寄付を受けたときの不動産の時価相当の利益があったとして、法人税が課税されますが、社会福祉法人等の場合、原則収益事業によって得た利益に対してのみ法人税が課税されますので、不動産の寄付を受けたことによる利益に対しては法人税は課税されないことになります。

 

次に寄付した者の課税関係を見ておきましょう。
社会福祉法人等の法人に不動産を寄付したときは、譲渡所得税が課税されることに注意を要します。

 

個人に贈与(寄付)した場合、贈与者(寄付者)に対して何らかの税金が課せられることはありません。
ただし、贈与者は贈与税の連帯納付義務を負いますので、受贈者が贈与税を納めないときは、贈与した財産の額を限度に贈与税の納付しなければならいの場合があります。

 

日本の税法は、個人と法人では異なった税体系を採用しているので、個人から法人への財産の移転があった時を契機としてその値上がり益を確定させ、所得税を課税することにしています。

 

これをみなし譲渡所得税といいます。

 

みなし譲渡所得税が課税されるときの注意点は、納税資金です。

 

不動産を売却した場合は、売ったお金で譲渡所得税を支払うことができますが、法人に不動産を寄付した場合は、手元にお金が残らないにもかかわらず、譲渡所得税を支払わなければならいのです。

 

預貯金・現金が手元にないと、納税資金を工面する必要があります。

 

公益法人に不動産を遺贈したときの税務関係は、不動産を寄付した場合の税務関係とほぼ同様です。
不動産の遺贈の効果が生じたときには、遺贈者は亡くなっているので、譲渡所得税はその相続人が相続債務として負担することになります。

 

このように、法人に不動産を寄付すると、寄付した者に対して譲渡所得税が課税されるのを原則とするのですが、譲渡所得税が課税されない特例があります。

 

公益法人等に対する贈与で、それが公益の増進に著しく寄与すること等の要件を満たしていることについて国税庁長官の承認を受けたものについては、みなし譲渡所得税を課税しないとされています。

 

ただし、実務においては、この要件をクリアーするのは相当難しいと言われています。

 

社会福祉法人等の公益法人に不動産を寄付又は遺贈をお考えの方は、不動産登記と税務の問題が絡んできますので、登記の専門家である司法書士と税務の専門家である税理士の助言を得たうえでおこなったほうが良いでしょう。

 

ブログ執筆者

○司法書士 八木 隆
○名古屋市瑞穂区白砂町二丁目9番地 瑞穂ハイツ403
○TEL 052-848-8033

 

不動産登記手続、相続手続、会社法人登記手続、裁判所提出書類の作成業務等を行っています。
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