相続対策としての収益不動産の贈与を考える
親が所有する賃貸マンション、賃貸アパート等の収益不動産を子に生前贈与すれば、相続財産を減らすことができるので将来の相続税を減少させることができます。

 

また、収益不動産の贈与は、不動産からあがる収益(賃貸料)を親から子へ移転することもできます。
収益不動産を親が所有し続ければその収益は親の財産として蓄積され相続財産を増加させることになるので、収益不動産の生前贈与はこの点でも相続財産を減らす効果があります。

 

贈与税対策をどうするか
生前に親から子へ贈与した場合、相続財産を減らす効果があっても贈与税が課税されます。

 

課税評価額3000万円の敷地、その上に建っている課税評価額350万円の賃貸アパートを贈与した場合、贈与税はどのくらいかかるのでしょうか。

 

賃貸アパートが建っている敷地は貸家建付地として評価額が減額されます。
この敷地が借地権割合70%の地域にあり、賃貸アパートの入居率(賃貸割合)が80%、借家権割合が30%と場合、この敷地の贈与税の課税評価額は2685万円になります。

 

貸家建付地の評価額の計算式は次のとおりになります。
敷地の評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

 

賃貸アパートは貸家として評価されますので、この建物の贈与税の課税評価額は210万円になります。
貸家の評価額の計算式は次のとおりです。
建物の相続税評価額×借家権割合(全国一律30%)

 

親から20歳以上の子等への贈与の場合に適用される贈与税の特例税率によると、この場合の贈与税はおよそ894万円になります。
かなり重い税負担となり、生前贈与する上でのネックになります。

 

相続時精算課税制度を利用した場合の贈与税
相続時精算課税制度とは、累積で2000万円まで無税で生前贈与することでき、2000万円を超える贈与があった場合、一律20%の贈与税を課す制度です。なお、相続時精算課税制度を利用した贈与した財産は、相続時に相続財産に算入されるので、原則相続税対策にはなりません。

 

では、相続時課税制度を利用した場合、どのくらいの贈与税がかかるのでしょうか。
計算式は次のとおりになります。
(贈与財産の課税評価額−2000万円)×20%

 

計算式に先ほどの賃貸マンションの評価額をあてはめてみると
(2685万円+210万円−2000万円)×20%=179万円

 

相続時精算課税制度を利用しない贈与(暦年贈与)と比較するとかなり贈与税を抑えることができます。

 

ただし、相続税精算課税制度を一度選択すると、取り消すことができないので、相続時精算課税制度を利用する場合には、資産税に詳しい税理士等に相談の上、慎重に検討する必要があります。

 

敷地は贈与せずに、建物のみを贈与する
築年数の経過した建物は経年劣化により評価額が低くなっているのが通常です。
敷地は贈与せずに建物のみ贈与すれば贈与税負担を抑えることができます。
課税評価額210万円の貸家を贈与した場合の贈与税は、10万円です。

 

また、不動産を贈与したときに行う名義変更の登記の登録免許税、不動産を取得したときに課税される不動産取得税も敷地と建物双方の贈与を受けた場合より、建物のみの贈与のほうが税負担を抑えることができます。

 

賃貸マンション等からの収益は建物の所有者に帰属しますので、建物の贈与のみで収益を親から子へ移転することができます。

 

なお、建物を所有するには建物が建っている敷地を利用する権利が必要になります。
賃貸マンション等の贈与を受けた子はその敷地を利用する権利を親から取得することになります。
敷地を利用する権利としては所有権の外、他人の敷地を利用する賃借権、使用貸借権があります。
賃貸借と使用貸借の違いは、使用の対価を敷地の所有者に支払うかどうかです。

 

敷地の所有者である親と賃貸借契約を締結すれば、子は、親に敷地利用権として賃貸料を支払うことになります、使用貸借契約を締結すれば、子は敷地を無償で使用することができます。

 

将来、賃貸マンション等が建っている敷地を賃貸マンション等を贈与した子に相続させたいときは、当該子に相続させる旨の遺言をしておく必要があります。

 

 

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