有限責任事業組合と合同会社の比較

中小企業同士が共同出資して、共同事業、共同研究、共同開発等を行う際の組織・法人形態として株式会社、合同会社、有限責任事業組合等が考えられます。

 

ここでは、合同会社と有限責任事業組合の特徴について比較検討します。

設立の方法

合同会社は社員となろうとする者が定款を作成し、会社成立前に出資金の全額を払い込みます。
合同会社は設立登記をすることにより成立します。

 

有限責任事業組合は有限責任事業組合契約に関する法律で定められた組合契約を作成し、組合員になろうとする者が出資金の全額を払い込むことにより成立します。

 

登記は善意の第三者に対する対抗要件であり、登記をしない場合には、組合員が有限責任であること等を善意の債権者に主張することができません。

 

設立の費用

合同会社の定款及び有限責任事業組合契約書のいずれも、公証人の認証を受ける必要はないので、いずれも公証人手数料の負担はありません。

 

紙定款の場合、4万円の収入印紙を貼付する必要があります。

 

合同会社の設立登記の登録免許税は、6万円(資本金の額がおよそ860万円を超えない場合)、有限責任事業組合契約の効力の発生の登記の登録免許税は6万円です。

 

合同会社の設立費用は10万円(紙定款を作成した場合)、有限責任事業組合の設立費用は6万円で、合同会社の方が高くなっています。(電子定款を作成すれば設立費用に差はありません。)

 

出資及び責任

合同会社の社員有限責任事業組合の組合員いずれも、その出資額を限度とする有限責任を負担します。

 

合同会社は、社員1名でも設立することが可能ですが、有限責任事業組合は、共同事業を行う旨の契約ですので、組合員2名以上が必要になります。

 

出資の目的はいずれも、金銭その他の財産に限定されており、労務出資及び信用出資は認められません。

 

金銭以外の財産を出資の目的とする現物出資を行う場合、現物出資に係る財産の評価額にかかわらず、裁判所が選任した検査役の調査を受ける必要はありません。

 

権利義務の帰属主体

合同会社は法人ですので、事業活動により生じた権利義務は会社に帰属することになりますが、有限責任事業組合は法人格が認められていないので、権利義務は組合員全員に帰属することになります。

 

合同会社が不動産を取得したときは、合同会社名義で登記することができますが、有限責任事業組合の場合は、組合は法人格を有しないので有限責任事業組合名義での登記はすることはできません。

 

有限責任事業組合が不動産を取得したときは、組合員全員名義で登記することになります。

 

業務執行者

合同会社は、社員全員が業務執行者になるのを原則としますが、定款で定めることにより特定の社員のみに業務執行権を付与することもできます。
定款としては、『当社の業務執行社員はA及びBとする』等、直接業務執行社員の氏名を記載する例が多いと思われます

 

有限責任事業組合は、組合員全員が業務執行者になります。合同会社のように契約により特定の組合員のみに業務執行権を付与することはできません。

 

業務執行の決定

合同会社は、業務執行者社員の過半数により決定しますが、定款で別段の定めをした場合は定款の定めに従います。

 

有限責任事業組合は、総組合員の同意により業務執行の決定をします。
ただし、重要な財産の処分及び譲受け並びに多額の借財に関する決定以外の事項の決定は、組合契約書において総組合員の同意を要しない旨の定めをすることが可能です。
たとえば、組合契約書において、『重要な財産の処分及び譲受け及び多額の借財以外の事項の決定については組合員の過半数により決定する』等定めることが可能です。

 

職務執行者の選任

合同会社の業務執行社員が法人であるときは、当該社員の職務をおこなうべき者(職務執行者)を選任し、その者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければなりません。

 

業務執行社員が取締役会設置会社の場合は、取締役会の決議により、業務執行社員が取締役会非設置会社の場合は、取締役の過半数の決定により職務執行者を選任します。

 

代表社員が法人である場合には、その職務執行者の氏名及び住所が登記事項になります。

 

有限責任事業組合も同様に、その組合員が法人であるときは、当該組合員の職務をおこなうべき者(職務執行者)を選任し、その者の氏名及び住所を他の組合員に通知しなければなりません。

 

職務執行者の選任について、経済産業省の『LLPのQ&A』で次のような記載があります。
職務執行者は原則、会社法第 362 条第 4 項第 3 号の「重要な使用人」に該当する。つまりその選任は取締役会で行う必要がある。ただし、会社が内部的な決裁規程を設けている場合などにおいては、重要な使用人に当たらない場合がある。この場合は、取締役会で決議することなく代表取締役等が選任することも可能。

 

職務執行者の氏名及び住所は登記事項になります。

 

代表者

合同会社は、社員全員(定款で業務執行社員を定めたときは業務執行社員全員)が代表権を有しますが、定款で特定の業務執行社員に代表権を付与することができます。
代表社員の定め方としては、定款に代表社員の氏名を直接記載する方法、定款に業務執行社員の互選により代表者を定める旨の互選規定を定めたうえで、業務執行社員の互選により代表社員を定める方法があります。

 

有限責任事業組合には、代表者は存在ません。
有限責任事業組合が対外的な行為(契約等)をする場合、組合員全員が行うことになります。

 

加入

合同会社は、新たに社員を加入させることができます。
新たに社員となろうとする者と加入契約を締結し、総社員の同意により(定款で別段の定めをしている場合は、それに従います。)定款を変更することにより加入の効力が生じ、合同会社の社員になります。
なお、定款変更後に出資の履行した場合は、出資の履行が完了したときに加入の効力が生じ社員になります。

 

有限責任事業組合は、新たに組合員を加入させることができます。
総組合員の同意により、組合契約を変更したときに加入の効力が生じ、組合員となります。
組合契約変更後に出資の履行をした場合は、出資の履行が完了したときに加入の効力が生じ組合員になります。

 

任意退社

合同会社の社員は、定款で存続期間の定めをしていない場合は、6ヶ月前に退社の予告をすることにより事業年度の終了時に退社することができます。(定款で別段の定めをすることも可能です。)
また、やむを得ない事由があるときは、社員はいつでも退社することができます。

 

有限責任事業組合の組合員はやむを得ない事由がある場合を除き、退社することができません。
ただし、組合契約で別段の定めをすることは可能です。

 

損益分配の割合

合同会社の社員の損益分配の割合は、社員の出資の価額に応じて定めます。
定款で定めることにより、出資比率と異なる割合を損益分配の割合とすることができます。

 

有限責任事業組合の組合員の損益分配の割合は、会計帳簿に記載された各組合員が履行した出資の価額に応じて定めるのを原則とします。
出資比率と異なる割合を損益分配の割合とする場合には

@有限責任事業組合に関する法律施行規則で定める様式により書面を作成する。
当該書面には組合員全員が、署名又は記名押印しなければなりません。

 

A組合契約書に以下の事項を記載する。
・組合員の出資の割合
・組合員の損益分配の割合及びその理由
・損益分配の割合の適用開始の年月日が組合契約の効力が発生する年月日と異なる場合には、当該適用開始の年月日

組合員の出資の割合と異なる損益分配の割合を定める場合、そのような割合にする合理的な理由が求められます。

 

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