譲渡制限株式について承認請求がなされた場合の手続

譲渡制限株式について承認請求がなされた場合の手続

譲渡制限株式について承認請求がなされた場合の手続

株式会社が譲渡制限株式の譲渡人又は譲受人から譲渡等承認請求を受けた場合の手続について解説します。

譲渡制限株式の譲渡等承認請求

譲渡制限株式を譲り渡そうとする株主又は譲渡制限株式を取得した株式取得者(以下「譲渡等承認請求者」)は、株式会社に対して譲渡制限株式の譲渡による取得について承認するか否かの決定をすることを請求することができます。

 

付帯請求として、株式会社が譲渡制限株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした場合には、当該株式会社又は指定買取人が当該譲渡制限株式を買い取ることを請求することができます。

 

譲渡制限株式の譲渡等の承認機関

・取締役会設置会社の場合
 取締役会の決議

 

・取締役会非設置会社の場合
 株主総会の決議(普通決議)

 

・定款で別段の定めをしている場合は、定款の定めに従い決定する。
例)株主に対する譲渡の場合には、承認を要しない。
  代表取締役が承認するか否かを決定する。
  取締役会設置会社だが株主総会で決定する。

 

譲渡制限株式の譲渡等を承認する場合の手続

株式会社は承認する否かの決定をしたときは、譲渡等承認請求者に対して決定した内容を通知しなければなりません。

 

なお、譲渡承認請求日から2週間以内に決定内容の通知をしなかったときは、別段の合意がない限り、当該譲渡制限株式の譲渡による取得について承認したものとみなされます。

 

株式会社が上記通知を怠ったり、不正な通知をした場合には、100万円以下の過料に処されます。

 

株式会社が譲渡等請求を承認しない場合の手続

譲渡等承認請求者が当該株式会社又は指定買取人による買い取り請求がなされている場合は、株式会社は、当該譲渡制限株式を自ら買い取るか、買取人を指定するかを決定し、その内容を譲渡等承認請求者に通知しなければなりません。

 

株式会社が買い取る場合の手続

株主総会の特別決議で次の事項を定める必要があります。
@請求に係る譲渡制限株式を買い取る旨
A株式の数(種類株式発行会社の場合は、種類及び種類ごとの数)

 

なお、株式会社が買い取る場合は、財源規制に服することになります。
(分配可能額を超えて株式を取得することはできません。)

 

譲渡等承認請求者への通知

株式会社は、株式を買い取る旨及び買い取る株式の数(種類株式発行会社の場合は、種類及び種類ごとの数)を譲渡等承認請求者に通知しなければなりません。

 

この通知により、譲渡等承認請求者は株式会社の承諾がなければ、承認請求を撤回することができなくなります。

 

供託手続

株式会社は、一株当たり純資産額に買い取る株式の数を乗じて得た額を、会社の本店の所在地の供託所に供託し、供託を証する書面を、譲渡等承認請求者に交付しなければなりません。

 

不承認通知が譲渡等承認請求者に到達してから40日以内に会社が買い取る旨の通知をしない場合、又は供託を証する書面を交付しない場合には、当該譲渡制限株式の譲渡による取得を承認したものとみなされます。

 

指定買取人を指定する場合の手続

・取締役会設置会社の場合
 取締役会の決議

 

・取締役会非設置会社の場合
 株主総会の決議(特別決議)

 

・定款で別段の定めをしている場合は、その定めに従います。
 あらかじめ、定款で指定買取人を定めておくことも可能です。

 

譲渡等承認請求者への通知

指定買取人は、指定買取人として指定された旨及び買い取る株式の数(種類株式発行会社の場合は、種類及び種類ごとの数)を譲渡等承認請求者に通知しなければなりません。

 

供託手続

指定買取人は、一株当たり純資産額に買い取る株式の数を乗じて得た額を、会社の本店の所在地の供託所に供託し、供託を証する書面を、譲渡等承認請求者に交付しなければなりません。

 

不承認通知が譲渡等承認請求者に到達してから10日以内に指定買取人に指定された旨の通知をしなかった場合、又は供託を証する書面を交付しなかった場合には、当該譲渡制限株式の譲渡による取得を承認したものとみなされます。

 

対象株式が株券発行会社の株式の場合の株券の供託

対象株式が株券発行会社の株式の場合、譲渡等承認請求者は、供託を証する書面の交付を受けた日から1週間以内に、当該株券を会社の本店の所在地の供託所に供託し、会社に供託した旨を通知しなければなりません。

 

供託者は、供託官に対して、被供託者に供託通知書を発送することを請求することができます。

 

譲渡等承認請求者が、所定の期間内に株券の供託をしなかったときは、株式会社は当該株式に係る売買契約を解除することができます。

 

譲渡制限株式の価格の決定

@当事者の協議による決定
譲渡等承認請求者と会社又は指定買取人との間で協議し、合意した価格が売買価格になります。

 

A裁判所による決定
譲渡制限株式を買い取る旨の通知があった日から20日以内に、会社の所在地を管轄する地方裁判所に売買価格決定の申し立てがなされたときは、裁判所が決定した価格が売買価格となります。

 

B供託金額が売買価格となる場合
協議がなされない又は協議が整わなかったが、裁判所に価格決定の申し立てがなされなかったときは、供託した金額が売買価格となります。

 

売買価格が決定されたときは、供託された金額に相当する額を限度として、会社又は指定買取人は売買代金支払い義務を履行したものとみなされます。

 

決定した売買価格が供託した金額を超えるときは、会社又は指定買取人がその差額を支払わないときは、譲渡等承認請求者は売買契約を解除することができ、譲渡等承認請求が承認されたものとみなされます。

 

供託物の払渡し手続

売買価格が確定すると、譲渡等承認請求者は供託金の還付を、株券が供託されている場合は、会社又は指定買取人は供託された株券の還付を供託所に請求することができます。

 

供託金還付請求権

譲渡等承認請求者は売買価格が確定した後に、供託金の払い戻しを受けることができます。
@売買価格と供託金額が同額の場合
供託金額全額について還付請求権を取得します。

 

A売買価格が供託金額を超える場合
供託金額全額について還付請求権を取得し、差額については、会社又は指定買取人に対して支払い請求することができます。

 

B売買価格が供託金額より少ない場合
供託金額のうち、売買価格に相当する部分についての還付請求権を取得します。

 

供託金還付請求に必要な書類

・印鑑証明書
・還付請求者が法人の場合は、代表者の資格証明書
・還付を受ける権利を証する書面(売買価格の確定を証する書面)

 

株券の還付請求権

売買価格が確定すると、会社又は指定買取人は譲渡等承認請求者が供託した株券についての還付請求権を取得します。

 

株券の還付請求に必要な書類

・印鑑証明書
・還付請求者の代表者の資格証明書
・還付を受ける権利を証する書面(売買価格の確定を証する書面)
・売買価格が供託金額を超える場合は、その差額を支払ったことを証する書面

 

売買価格の確定を証する書面

@当事者間の協議により決定した場合
当事者間の協議書

 

A裁判所が決定した場合
裁判所の決定書謄本及び確定証明書

 

B協議をしなかった又は整わなかった場合で且つ裁判所に価格決定の申立てをしていない場合
その旨を証する相手方の証明書

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