株式発行(第三者割当増資)の登記手続

本記事の内容
株式会社が新株を発行して増資する手続き、特に募集株式を第三者に割当てる方法により増資手続き及び募集株式発行の登記手続きについて、会社法人登記の専門家である司法書士が解説します。

 

株式発行(第三者割当増資)の手続

以下では、非公開会社による第三者割当による株式発行の方法について解説します。
※非公開会社とは、会社法上の分類で、発行する株式のすべてに譲渡制限が付されている会社のことを言います。

第三者割当増資とは
株主割当の方法による増資以外の方法による株式の発行等のことを意味します。

 

株主割当増資とは、既存株主の持ち株比率に応じて新たに発行する株式の引受けを受ける権利を与える発行方法のことをいいます。

 

よって、既存株主以外の者に株式を割り当てる場合だけでなく、既存の株主に対して、新たに発行する株式を割り当てる場合でも、持ち株比率に応じて割り当てるのでなければ、それは第三者割当増資となります。

 

株主割当増資に関してはこちら

募集株式発行手続きの流れ

第三者割当による募集株式の発行手続の流れ

 

@取締役会による株主総会議案(募集株式発行の件)および株主総会召集の決定

A株主総会による募集事項の決定

B株式の申込み予定者に対する通知

C株式の申込み

D取締役会による割当決議

E割当通知

F出資金の払込

G登記

 

以下で各項目について詳しく説明します。

 

@取締役会による株主総会議案(募集株式発行の件)および株主総会招集の決定

取締役会設置会社が募集株式の発行(増資)を行うには、取締役会で株主総会に提出する議案を決定し、株主総会の招集を決定します。

 

取締役会を置かない会社(取締役会非設置会社)の場合、取締役の過半数の一致により決定します。

 

A株主総会による募集事項の決定

募集事項の決定
株主総会の特別決議により以下の事項を決定します。

募集事項
(1)募集株式の数(種類株式にあっては、その種類及び数)
(2)現物出資の旨及び現物出資財産の内容及び価額
(3)募集株式の払込金額又はその算定方法
(4)払込期日または払込期間
(5)新株を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項

 

【株主総会議事録サンプル】

(略)
第○号議案 募集株式発行の件
議長は、当会社の業務拡大に伴う資金調達のため、募集株式を発行する必要がある旨を詳細に説明したうえ、下記1の募集事項によりこれを行い、下記2(1)の申込人から下記2(2)の数の株式に係る引受けの申込みがあることを条件に当該申込人に当該数の株式を割り当てることを提案し、審議を求めた。慎重審議の後、議長は本議案の賛否を議場に諮ったところ、満場一致をもってこれを原案どおり承認した。

 

1 募集事項
(1)募集株式の数 1000株
(2)募集株式の払込金額 1株につき金1万円
(3)払込期日       平成○年○月○日
(4)増加する資本金及び資本準備金に関する事項
   増加する資本金   金1000万円
   増加する資本準備金     金0円
※資本金は実際に払い込まれた金額の2分の1以上計上しなければなりません。
資本金に計上しなかった部分は、資本準備金として計上します。

 

2 割当てに関する事項
(1) 割当先(申込人) 名古屋市○○区○○町一丁目2番3号
                △△
(2) 割当株式数1000株
(以下省略)

上記は、取締役会を置かない会社の株式発行に関する議事録の記載例です。
割当に関する条件決議をしています。(取締役会を置く会社は定款に別段の定めがなければ割当決議は取締役会で決議しなければなりません。)

 

取締役会への委任
株主総会で募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定め、(1)から(5)の決定を取締役会に委任することもできます。

有利発行(時価よりも低い発行価額での株式発行)
特に有利な払込金額で株式を発行するには、取締役は特に有利な払込金額で発行することが必要な理由を説明しなければなりません。

発行可能株式総数
会社は定款で定めた発行可能株式総数を超えて株式を発行することはできません。

 

株式を発行することによって、発行済の株式総数が発行可能株式総数を超えてしまう場合は、株主総会の決議によって、定款を変更する必要があります。

 

発行可能株式総数は登記事項でもありますので、発行可能株式総数を増加させたときは、発行可能株式総数変更の登記が必要になります。

課税関係
増資(株式発行)は資本取引等に当たるので、原則、発行会社に課税関係は発生しません。
適切な時価でない価額での発行の場合、株主間においては課税関係が生じることがありますので、増資をおこなう場合は、税務署もしくは税理士に相談した上で増資を行ってください。

 

B株式の申込み予定者に対する通知

株式の申込み予定者へ募集事項及び株式に関する事項を通知しなければなりません。

 

【通知書サンプル】

ご通知

 

拝啓 ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、本日開催の当社臨時株主総会において発行することが決議されました募集株式について、下記のとおりご通知申し上げます。

 

敬具

1・商号 株式会社○○
2・募集事項
(1)募集株式の数                     1000株
(2)募集株式の払込金額               1株につき金1万円
(3)募集株式の払込期日               平成○年○月○日
(4)募集株式の交付に係る費用の額のうち、資本金等増加限度額から減ずるべき額 金0円
(5)増加する資本金                     金1000万円
(6)増加する資本準備金                      金0円
3・会社法施行規則第41条で定める事項
(1)発行可能株式総数  2000株
(2)株式の譲渡制限に関する規定
当会社の株式を譲渡により取得するには、代表取締役の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合は、承認をしたものとみなす。
(3)上記(1)(2)のほか、当社の定款規定事項で、会社法施行規則第41条に定める事項はありません。

以上

 

C株式の申込み

株式の引受けの申込みをしようとする者は、株式引受申込書を会社に交付しなければなりません。

 

【株式引受申込書サンプル】

株式引受申込書

 

平成○年○月○日開催の貴社株主総会の決議に係る募集事項その他諸事項を承認のうえ、下記の貴社募集株式を引き受けたく、申し込みます。

 

引き受けようとする募集株式の数  1000株

以上

 

 

D取締役会による割当決議

割当決議とは
株式の引受けの申込みした者に株式を割り当てるかどうか、割り当てる場合には何株を割り当てるのかを決定することをいいます。

割当に関する決議機関
取締役会設置会社⇒取締役会の決議
取締役会非非設置会社⇒株主総会の決議

 

【取締役会議事録サンプル】

取締役会議事録

(略)
決議事項
第○号議案 募集株式の発行における割当先決定の件
議長は、平成○年○月○日開催の臨時株主総会において決議した募集株式の発行の件につき、会社法第204条第1項に基づき募集株式の割当を受ける者及びその者に割り当てる募集株式の数を下記のとおり決定したい旨を述べて審議を求めたところ、全員一致異議なく原案とおり承認可決した。

割当を受ける者
名古屋市○○区○○町一丁目2番3号  △△△
割当を受ける募集株式の数 
1000株
(以下省略)

 

 

E割当通知

割当通知を株式引受人に対して、払込期日の前日(払込期間を定めた場合は、期間の初日の前日)までに通知する必要があります。

 

【割当通知書サンプル】

ご通知

 

拝啓 ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、先般貴殿がお申込みくださいました当社の募集株式につきまして、下記のとおり割当をいたしましたので、ご通知申し上げます。

敬具

 

割当株式数 1000株
以上

 

 

F出資金の払込

株式引受人は、払込期日が払込期日が定められているときはその期日に、払込期間がさだめられているときは、その期間内に、会社が定める金融期間に払込金(出資金)の全額を払い込まなければなりません。

 

G登記の申請

募集株式を発行すると登記事項である発行済株式総数及び資本金の額が増加しますので、これらの変更登記が必要になります。

募集株式の総数引受契約

総数引受契約とは
特定人が会社との契約によって募集株式の総数を包括的に引き受ける方式とされています。
総数引受契約方式によると、通常の募集株式発行手続きで必要となる申込みから割当までの手続きを省略することができます。

 

総数引受契約の流れ

@取締役会(取締役会を置かない会社は取締役の過半数の決定)の決議
 株主総会議案および株主総会召集決定

 

A株主総会の決議
 募集事項の決定

 

B総数引受契約の締結

 

C取締役会の承認決議
(取締役会を置かない会社の場合は、株主総会の承認決議(特別決議)が必要)

 

D出資金の払込

 

E登記

 

総数引受契約のメリット
通常の募集株式の発行方式ですと、払込期日の前日までに割当通知をしなければならない関係上、最短でも2日を要するのに対し、総数引受契約方式ですと同日にすべての手続きを終えることができますので1日で増資することが可能となります。

 

※上記@の取締役会で総数引受契約が締結されることを条件とする承認決議を同時におこなえば、上記Cの取締役会を省略することができます。

募集株式発行(第三者割当増資)の登記手続

発行済株式総数及び資本金の額は登記事項ですので、募集株式を発行により、発行済株式総数及び資本金の額が増加したときは、これらの変更登記の申請が必要になります。
また、発行可能株式総数を超えて株式を発行するときは、発行可能株式総数の変更登記の申請も必要になります。

 

登記申請期間
払込期日が定められている場合
払込期日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局に発行済株式総数及び資本金の額の変更登記を申請しなければなりません。

 

※払込期間を定めた場合で、出資者が複数人であるときは、出資分を一括して払込期間の末日から2週間以内に申請することもできます。

 

登記すべき事項
資本金の額および変更年月日
発行済株式総数および変更年月日

募集株式発行の登記にかかる主な費用

株式会社が募集株式の発行を行う場合にかかる主な費用は次のとおりです。

 

登録免許税
募集株式発行の登記の申請の際、登録免許税を納付しなければなりません。
募集株式発行の登記の登録免許税は、増加する資本金の額に1000分の7を乗じた額です。
(※上記の金額が3万円に満たないときは3万円)
資本金の額を1,000万円増額した場合の登録免許税の額は7万円です。

 

司法書士手数料
登記申請を司法書士に依頼する場合の手数料
司法書士に支払う手数料の額は、各司法書士により異なります

 

当事務所の手数料(報酬)の目安を料金表に記載していますのでご確認ください。
当事務所の料金表

 

募集株式発行の登記のご相談・ご依頼

愛知県名古屋市を中心に業務を行っていますが、愛知県以外からもご相談・ご依頼を承りますので、お気軽にお問合せください。(会社登記は全国対応いたします。)

 

御社が遠方の場合、必ずしもご来所いただかなくても、お電話、メール、郵送等でお取引が可能です。

 

司法書士は会社・法人登記の専門家です。
募集株式発行の登記のご依頼をお考えの方は、名古屋の司法書士八木事務所までお問合せください。

 

登記のご相談、登記費用のお見積りを無料でおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

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