性同一性障害者の方の名の変更手続(家庭裁判所の許可)

性同一性障害者の方の名の変更手続(家庭裁判所の許可)

性同一性障害者の方の名の変更手続き

性同一性障害者の方の中には、自己が認識している性別とは異なる性別を示す名前を使用することに精神的苦痛を感じたり、社会生活において不便を感じることがあるといいます。
このような場合、家庭裁判所の許可を得ることにより、戸籍上の名を自己が認識している性別を示す名に変更することができます。

 

ここでは、実際に司法書士である当職が受託した性同一性障害者の方の名の変更申立てについて、紹介させていただきます。

 

性同一性障害者の方の名の変更申立て手続き

戸籍上の名を変更するには、申立人の住所地の家庭裁判所に名の変更許可の申立てを行います。
申立て費用ですが、印紙800円(申立書に貼付)と各家庭裁判所所定の予納郵券(郵便切手)です。

 

名を変更することにつき、「正当事由」があるかどうかが審理されます。

 

性同一性障害者の方が、自己が認識している性別を示す名への変更の場合、自己が認識している性別とは異なる性別を示す名前(戸籍上の名)を使用することに精神的苦痛を感じており、その名の使用を強制することが社会生活上不当であると認められ、且つその変更によって職場や社会生活に混乱が生じるような事情が見当たらない場合等は、名の変更につき正当事由有りとされます。

 

また、未成年子がいる場合、名の変更により未成年子の福祉に具体的な悪影響を及ぼすおそれがないかどうかも審理されることになります。

 

また、通称名(自己が日常生活において使用している名)の使用実績も考慮されます。
通常の永年使用の場合では、成年者では7年前後、未成年者では5年前後、幼児では3年前後の使用が名の変更許可の目安とされているそうですが、性同一性障害者の方の場合の通称名使用実績はかなり緩和されており1年未満の通称名の使用であっても許可された審判例があります。

 

変更後の名の相当性についても審理されます。
変更後の名は、常用平易な文字(常用漢字・人名漢字・平仮名・片仮名)を使用し、難解・難読な名は避けるべきでしょう。

 

性同一性障害者の方の名の変更許可申立ての実例

私が受託した依頼者(申立人)様は、
未婚であり、2つの医療機関において医師による性同一性障害である旨の診断を受けており、性適合手術は行っていないものの、ホルモン療法を受けており将来的には性適合手術を受けることを考えているとのことでした。
通称名使用実績は、1年ほどでした。

 

家庭裁判所に提出した書類
戸籍謄本の他に、名の変更の理由を裏付ける資料として
・性同一障害である旨の医師の診断書
・医療機関発行のホルモン療法の領収書
・通称名の使用を裏付ける資料
 ・LINEのトーク履歴を印刷した書面
 ・美容院のメンバーズカード
 ・ネット通販からの送り状
 ・宅配便からの送り状

 

通称名の使用を裏付ける資料ですが、今回は裏付け資料としては若干弱いと思われましたが、追加の資料提出を求められることなく申立てが許可されました。

 

ただし、通称名使用を裏付ける資料として十分かどうかは、担当裁判官が判断することになるので、できるだけ多くの資料を提出するに越したことはありません。

 

通称名の使用を裏付ける資料としては、次のものがあります。

通称名の記載がある
公共料金の明細書、領収書、年賀状等のハガキ、手紙、ネット通販等の注文書、会員証、名刺、契約書
メール、LINE、Facebook 等

 

今後、名の変更申立てを行う場合、これらの資料をできだけ多く保管しておくことを推奨致します。
また、通称名の使用期間を明らかにするために、すなくとも1年くらい前の日付のある資料を用意しておくことも重要になります。

 

申立てから許可までの期間
申立書を提出してから1週間ほどで、依頼者様のご自宅に許可審判書の謄本が郵送されました。

 

名の変更届
戸籍上の名を変更するには、家庭裁判所の許可後に申立人の住所地又は本籍地の役場で名の変更の届出を行います。
届出に当たり、審判書謄本と戸籍謄本(住所地の役場に届け出る場合で、住所地の役場内に本籍地がない場合に必要)を提出します。

 

司法書士がお手伝いできること

司法書士は、裁判所に提出する書類を作成することができます。
司法書士が、ご依頼者様(申立人)からヒアリングを行い、申立書を作成し、添付資料とともに家庭裁判所に提出いたします。

 

司法書士報酬
名の変更許可が下りた場合、報酬として44,000円頂戴致します。
なお、許可が降りなかった場合は、申立書作成費として22,000円頂戴致します。

トップへ戻る